【愛の◯◯】スポーツ新聞部の会話ははてしなく脱線する

どうもこんにちは、椛島澄(かばしま すみ)と申します。

 

とある高校の国語教諭でして…って、こういう自己紹介、前にもしましたっけ、たぶんしてたでしょうね。

 

年齢?

 

ーー20代です。

 

……「女性に歳を訊(き)くのは失礼」って、習いませんでしたか!? 

 

言う必要ないかもしれませんが、実家暮らしなんです。

 

で、親が新聞をとっていて、朝わたしもその新聞を読むわけなんですが、

以前はスポーツ欄なんて見向きもしなかったのに、

最近では真っ先にスポーツ欄から読み始めるようになりました。

 

なぜか。

その理由は、顧問をしている部活と、密接に関わりがあるわけでして……。

 

 

『スポーツ新聞部』活動教室

 

わたし「あすかさん、ずいぶん一生懸命原稿をチェックしてるわね。

 校正、ってやつ?」

 

あすかさん「校正というより、自分が書いた原稿に自分で赤を入れてるので、推敲(すいこう)だと思います」

 

わたし「あすかさん1年生なのによく『推敲』なんてことば知ってたね」

 

あすかさん「え~~~~っ、もうすぐ2年生ですよぉ、知ってますよぉ~~」

 

一宮(いちみや)さん「先生」

わたし「なぁに」

一宮さん「ホワイトボードに、漢字で『推敲』と書いてみてください」

わたし「はい。(書く)」

一宮さん「よくできました」

わたし「……」

 

瀬戸くん「ここに部長がいたら、『まるで『平成教育委員会』だな』って言ってるところだなあ」

 

わたし「……あなたたち、2000年代生まれよね!?」

 

・全員、うなずく

 

わたし「わたしでもリアルタイムで観たことのない番組のこと、どうして中村くんが知ってるの」

 

岡崎くん「部長は雑学に強いんです、異様に」

 

瀬戸くん「さすがにテレビ欄を担当していただけある」

 

わたし「Σ(@_@;)え、中村くん、テレビ欄担当だったの」

 

瀬戸くん「はい」

 

わたし「スポーツ新聞部、なのに?」

 

瀬戸くん「はい」

 

 

 

一宮さん「部長が卒業しちゃったら、テレビ欄と芸能担当がいなくなっちゃうね」

瀬戸くん「それなー、死活問題だわな」

 

わたし「死活…問題って。

 スポーツには、直接関係ないじゃないの」

 

岡崎くん「いや、テレビ欄があるから読んでくれる、っていうヤツがけっこういるもんで」

一宮さん「読者数に関わってくるのよね」

岡崎くん「そうそう、桜子ならわかってくれるよな」

一宮さん「先生、テレビ欄は読者をつなぎとめるのに結構な役割を果たしてくれてるんですよ。縁の下の力持ちなんです」

岡崎くん「桜子…相づちぐらい、打とうな?」

 

テレビ欄必要説は、よくわからないが、

岡崎くんと一宮さん、きょうもチグハグだ。

 

…微笑ましい。

 

× × ×

 

あすかさんが推敲した原稿が、

どんどん積まれていく。

 

内容は、いったいーー? 

 

あすかさん「『キャンプ』です、先生」

わたし「キャンプってスポーツなのかしら」

あすかさん「先生っ! 山梨県じゃないんですよ、ここ」

わたし「? そりゃそうよ、ここは東京都よ」

あすかさん「ごめんなさい、てっきり某作品を想像してるのかと…」

わたし「え、某作品てなに、わたしわからない」

あすかさん「いつかわかる日が来るかもしれません」

わたし「気になるじゃない、そう言われたら」

あすかさん「……某作品、漫画でもありアニメでもありドラマでもあるわけなんですが」

 

一宮さん「ゆる~くキャンプするのよね、あすかちゃん」

 

あすかさん「……いっそのこと舞台化したら面白いのに」

一宮さん「お芝居好きですよね? 先生」

わたし「もちろん…でも、モノによるよ」

 

岡崎くん「アレを舞台化するのかよw や、おれもよく知らないけどさ」

一宮さん「よく知らないなら岡崎くんは黙ってて」

岡崎くん「だって……」

一宮さん「だって……何?」

 

わたし「(手を合わせて)ストップストップ!! 話が大きく脱線しちゃってるから」

 

バツが悪くなったような岡崎くんと、意に介さない様子の一宮さん

 

あすかさん「わたしが『山梨県~』とか言い出したのがまずかったですねw

 

 『キャンプ』っていうのは、プロ野球の『キャンプ』です、先生」

 

わたし「プロ野球の……『キャンプ』?」

 

 

・あすかさんにプロ野球キャンプについて説明してもらう

 

 

わたし「そういうことだったの。

 テントとか焚き火とか、あんま関係ないんだねw」

 

あすかさん「なんでこんなに脱線しちゃったんだろ。

 たしかにわたしのせいでもあるけど、

 そんなに時間稼ぎしたかったのかなあ」

 

わたし「(@_@;)だれが…時間稼ぎするの??」

 

あすかさん「こっちの都合です」

 

 

わたし「そうだ! わたし、プロ野球について、ひとつかしこくなったの。

 あのさ、阪急電鉄っていう私鉄があるじゃない、関西に。

 阪急って、むかしプロ野球チームをもってたんだね。」

 

あすかさん「いまのオリックスですね」

わたし「さすがねあすかさん、阪急ブレーブス、っていう球団だったのよね」

あすかさん「阪急電車にあこがれでもお持ちだったんですか?」

わたし「阪急じゃないの、『宝塚』」

あすかさん「『宝塚』?」

 

岡崎くん「宝塚歌劇団だよ、あすかさん」

わたし「(テンションが上がって)岡崎くんよく知ってるね!! しょうじき意外だけど!!

 

 あのね、どういうことかっていうと、宝塚歌劇団は、実は阪急電鉄が運営しているの。

 だから『阪急』ブレーブスって球団があったことを知って、すぐに宝塚を連想しちゃって、わたし舞い上がっちゃって」

あすかさん「先生、学生時代、演劇部でしたもんね」

わたし「ウチはおばあちゃんから3代で宝塚のファンなの。宝塚大劇場にも、いつか行ってみたいんだけど」

 

岡崎くん「(頭をポリポリかいて)…じつは、ウチの祖母と母も、宝塚のファンなんです……」

わたし「(テンションMAXで)ホントに!?

岡崎くん「(眼を丸くして)……急に歌い出しそうなテンションですね、先生。

 ミュージカル女優みたいだ」

わたし「(テンションMAXのまま)ホントに!?