戸部邸
昼
葉山むつみ18歳。
まだ18歳。
…戸部くんの邸(いえ) の玄関のインターホンを押す。
『ピンポーン』
『がちゃり』
「よぉ」
「こんにちは、戸部くん」
「疲れただろ」
「そんなことないわよ~ww」
「( ゚д゚)」
× × ×
リビング
「昼飯食ったか?」
「起きるのが遅かったからーー」
「そっか。
どうりで、
アホ毛が1本伸びてるわけだ」
「(・_・;)」
しまったあああああ。
戸部くん、
先制攻撃?
「ごめんなさい(カバンからブラシを取り出す)」
「ゆっくりやれよw」
× × ×
「と、戸部くんは、大学が休みの日でも、朝が早そうね」
「おっ鋭いな、きょうは朝5時半に起きてランニングしてた」
「充実してるね」
「なにが」
「いろいろ」
「おいおい」
「(カバンをスカートの上に置いて)
さて、
本題」
「うん……」
「えーっと、戸部くんには、もうちょっとがんばってもらいたい」
「……愛のことか。」
「そ。
羽田さん乱調ぎみだよ。着地点をなくしたグライダーみたい」
「きみがなぐさめてくれてよかったと、おれは思ってるけどーー」
「本来はあなたのほうが率先してなぐさめるべきだったはずよ」
「う」
「あの子ね、自分の本を、全部捨てるつもりだったのよ。
どうしてあなた、彼女の異変にわたしより先に気づいてあげなかったの!?」
「気づいては……いた」
「ウソよ。気づいたとあなたが思ってても、実際は浅い理解」
「……、
(苦々しい表情で)愛がここに来てから、もう丸3年なんだ。
ずっといっしょにいたから、あいつのことはかなり理解(わか)ってる、はずなんだ」
「わたしの母校に羽田さんが入学したのは4年前よ」
「(幾分早口になって)だ、だからなんなんだよ、それで愛との付き合いがじぶんのほうが1年早いってか、無理筋じゃねーかそれは」
「わたしのほうが戸部くんより彼女を知っている部分がある。
女同士だからーーとかあんまし言いたくないけど、言わざるをえないよね」
「性別の問題なのかよ」
「なのよ」
「ーーだからなんなんだよ」
「ちょっと! 逆ギレしないでよ」
「おれはなぁ!! おれは、愛の…」
「羽田さんの、なんなの!?
口ごもってないでハッキリ言ってよ!?」
「おれは、おれは……、
ち、ちくしょう、
ちくしょぉ、どうしておれはこうなんだ、どうして……」
「戸部くん、
(゜o゜; 泣いてるの?」
「おれをなぐってくれぇはやま」
「(゜o゜; ……」
「おれは走らなかったメロスだ、人間失格だぁ」
「(・_・;)そこまで極端になる必要ないでしょう。
きっと、わたしの泣き虫がうつったのね」
「葉山…、
きみは知らんかもしれんが、
おれはむかし、いじめられっ子だったんだ、
泣き虫だったんだ、
いじめられて、いっつも泣きベソかいてたんだ」
「(・_・;)ほ、ほんと? それ」
「愛には話したよ。
だから愛は、知ってるよ。
愛のまえで泣いたことだって、ある」
戸部くんが、
羽田さんのまえで、
こんなふうにーー。
信じられない。
「(土下座の格好で)葉山!!
言い訳はしない! おれが悪かった!」
「(Д`;)わ、わたしも、感情的になりすぎたから」
「おれが悪い!!」
ど、どうしよう、
面倒なことに、なっちゃったかもしれない、
「顔、あげて。ふつうに座って、戸部くん」
(土下座の姿勢のまま微動だにしない)
「と、戸部くん、そうだ、
戸部くんはお昼食べたの?」
「実はたべてない」
「じゃあ、わたしもあなたも、おなかすいてるじゃない、
お昼ごはんにしましょう。
戸部くん…あなたの邸(いえ)の…冷蔵庫、見せて……」
「どうぞ」
「(^_^;)す、素直ね」
「葉山は料理得意だったよな」
「(^_^;)うん」
「教えてくれないか」
「(^_^;;)そ、それはちょっとーー恥ずかしいかな、って」