「利比古くん、これ見てくれる?」
「なんですかこれは」
「わたしたちの部活で作った新聞」
「ああ、これが噂に聞く、『校内新聞』ですか」
「そうだよー。でも、ただの校内新聞には、興味ないんだなー」
「?」
あ、あれーー、
通 じ な い
「あー、これは要するに、スポーツ新聞なんですね」
「そうだよ、わたし高校で、『スポーツ新聞部』に入ったんだよ」
「すごい部活ですね…」
「でしょ? でしょ?」
「(わたしが書いたサッカー部の記事のあたりをじーっと眺めて)
あすかさん。」
「えっ、なにかな」
「これは、あすかさんが書いた文章ですよね?」
「(。>∀<。)うん、うん」
「誤字が少なくとも5つあります」
戸部あすか15歳高校1年生ーー、
天国から地獄に、
突き落とされた気分になる。
「あ・・・ここも助詞が間違ってる」
「しゃ、写真は、うまく撮れてるでしょ?! 写真を撮ったのもわたしなんだよ」
「はい。すてきな写真だと思います」
「だよね? だよね?」
「ただ……」
「?????」
「どの写真にも、おなじユニフォームの人が写り込んでいます。
『HARU(ハル)』っていう名前の選手の人が、ほら、この写真にも、こっちの写真の、ここにも」
戸部あすか15歳高校1年生ーー、
地獄の底まで突き落とされたみたいに、
恥ずかしい気持ちになって、
利比古くんから、新聞を強奪して、
自分の部屋まで逃げこんだ。