戸部邸
やぁ、居候大学生の流(ながる) です。
土曜だから、というわけではないのですが、講義もなく、ゆったりとしています。
今年度で卒業だもんねーー。
そのはず。
朝から、
アツマは大学のサークルに、
愛ちゃんは都立図書館に行くのだと、
出かけてしまい、
明日美子さんは、ブランチを自分で作って食べたら即座に眠りに行ってしまったので、
――昼ごはんを、あすかちゃんといっしょに作っているところ。
× × ×
あすかちゃん「(笑顏で)ふー、おいしかった」
ぼく「あすかちゃん、高校で何部に入ったんだっけ」
あすかちゃん「スポーツ新聞部です」
ぼく「…す、すごい部活だね」
あすかちゃん「流さん、本の話なんですけど」
ぼく「本か。なにか読んでるんだ、あすかちゃん」
あすかちゃん「織田作之助って作家がいるじゃないですか」
名前だけ知ってるなんて言えない。
ぼく「(;・∀・)い、いるねー」
あすかちゃん「『夫婦善哉(めおとぜんざい)』っていう小説を、読み終えたんです! 今年は兄貴より絶対1冊でも多く本を読んでやるぞ、って、やる気出してるんですよ。
流さんは、『夫婦善哉』、読んだことありますか?」
――うぐぅ。
正直なぼく「ない」
あすかちゃん「ウッソー、意外」
ぼく「ちょ、長編小説だっけ?」
あすかちゃん「やだなー短編ですよw」
うぐぐぐっ
あすかちゃん「でも……」
ぼく「でも?」
あすかちゃん「『夫婦善哉』にはですね、続編の『続 夫婦善哉』が、なんと存在したんですよ……!!」
ぼく「エッ知らない」
× × ×
あすかちゃん「流さんは、知らない時はキッパリ『知らない』ってホントのこと言うから、ステキだと思います」
ぼく「(髪をポリポリしながら)そうかなあ? アツマのほうが、知ったかぶりをしないよ?」
あすかちゃん「謙遜しなくても~」
ぼく「ハハハ…それほどでも。ありがとうあすかちゃん、そう言ってくれるとうれしいよ」
よ、よし、たまには家族サービスだ。
家族じゃないけど、戸部邸のみんなは家族なんだっ。
ぼく「あすかちゃん、夫婦善哉(ぜんざい)を読んだ記念に、ぜんざいを食べさせてあげるよ。ほら、近所に、人気の甘味処が――」
あすかちゃん「スマブラやりましょう」