……センター試験まで1週間になってしまったことはあまり重要でないにしても、戸部くんの大学受験はまさに差し迫っており、剰(あまつさ)え妹のあすかちゃんも高校入試を控えているのだ。
三連休のしょっぱな、昼間は青島さんがこのお邸(やしき)に来て、あすかちゃんの家庭教師、羽田さんは、手伝ってあげられるところは戸部くんの勉強をサポート、手伝ってあげられないぶんは、家事・炊事etc...でカバーしていた、らしい。
で、青島さんが帰って、入れ替わるように、夕方、厚かましくも、わたしが、戸部邸に泊まりに来たんである。
戸部兄妹のお母さん・明日美子さんと羽田さんとわたし、3人がかりで、受験生ふたりの身体に優しい夕食を作り、羽田さんは戸部くんの部屋に、わたしはあすかちゃんの部屋に、ごはんを運んだ。
(わたしはそのときあすかちゃんと少し話をした)
ーーで、いまは兄妹のじゃまをしないように、階下の広間でくつろいでる。
わたしはオクタビオ・パスの詩を読んでいた。

- 作者: オクタビオパス,阿波弓夫,伊藤昌輝,三好勝,田村徳章,松山彦蔵,後藤丞希
- 出版社/メーカー: 文化科学高等研究院出版局
- 発売日: 2014/04/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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羽田さんはなにやら岩波新書を読んでいる。
カバーが新しくなってからのやつ。
といっても、新しくなってから10年以上だけど。
「山川静夫だ。」
「知ってるんですか?」
「NHKのアナウンサーだったんだよ」
「奥付に書いてありましたっけ、そういえば」
「紅白歌合戦ってあるじゃん」
「ありますね」
「小泉は、かならず『NHK紅白歌合戦』って言うけど」
「すごいですねw」
「その著者(ひと)ね、山川静夫さん、紅白歌合戦で、白組の司会を9年連続やったひとなの」
「9年連続!?」
「70年代から80年代にかけてーー」
「昭和じゃないですかぁ」
「小泉は暗記してるのよ」
「すごいですねww」
「変でしょ? 小泉」
「たしかにw」
「でも、だから、面白いんだけどね」
わたしはーー、
小泉の、ファンだ。
羽田さんに、小泉の下の名前を教えてあげた。
ーーこはる。