「はいはいこんにちは!! 『ランチタイムメガミックス』を早速始めていきたいと思うんですが、今日はなんとスペシャルゲストが!!」
「……本田(ほんだ)、おまえのテンション、高過ぎじゃね?」
「なにいってんのコレぐらいがちょーどいーんだよっ」
「ぬ……」
「みなさーーん!! 不甲斐無い喋り方をしているこの男の子は、わたくし本田くるみと同じく3年生の星(ほし)くんでーーす!!」
「大声過ぎるんじゃないのか!? 鼓膜やぶれる」
「やぶれないよ、スペシャルゲストの星くんっ♫」
「あのさ。おれ、この放送で何をやったらいいの」
「オープニングナンバー」
「おいコラ!! 質問スルーすんな、音楽流して逃げるってか」
「曲は、どうぶつビスケッツ×PPPの『ようこそジャパリパークへ』」
「まさかの『けものフレンズ』!?」
× × ×
「星くん星くん。懐かしいよね、『けものフレンズ』」
「……」
「アニメ主題歌だけど、相当売れたらしいよ、『ようこそジャパリパークへ』」
「……いや、アニメ主題歌『だから』売れる時代になってるだろ、今は」
「おおっと予想外の鋭い指摘」
「本田ぁ、何するんだよ、オープニングナンバーの後は」
「決まってるでしょー。スペシャルゲストであらせられる星くんのプロフィール紹介よ」
「不穏な顔だな……」
「そんなコト金輪際言わないで。
えー、星くんは、星くんです。敢えて、この場で下の名前は言いません。
先ほど言った通り、わたくしと同じく第3学年の男子。最高学年ですけど、わたしより2段階は頼りないと思います。
――ちょっとっ、ソッポ向かないでよ。
彼ね、中学時代は野球部だったんですよ。それなのに、高校に入ってから野球部に入部するコトは無かったんですよ。心境の変化か、はたまた、ボールを打ったり投げたりするのが面倒くさくなっただけなのか。
ねぇねぇ、星くん? 星くんは中学時代、ピッチャーだったの、バッターだったの? わたしに教えてちょーだいな」
「あのな、本田。『ピッチャーとバッター』で区別するってのはおかしいんだよ。なんでかと言うと、ピッチャーにしたって打席に立ってバッターになるからだ」
「kwsk(けーだぶりゅーえすけー)」
「……なんだそれ」
「知らないの? ネットスラングだよ。『kwsk』のアルファベット4文字で、『くわしく』を表すの」
「もしや、本田って……野球ぜんぜん知らないってか」
「『女子だから仕方が無い面もあるか』って表情してるねえ。そういう認識、今のご時世だと『スリーアウト』だよ」
「アウトカウントが3つになったら攻守交代なのは知ってるのな」
「ストライク3つでアウトなのは有名だし、ボール4つで一塁に行けるのも有名だよね」
「そりゃーなぁ。一般常識的というか」
「どうなったらホームランになるの?」
「それも一般常識的だと思うんだが。フェンスを超えてスタンドに入ったら、だ」
「直接スタンドに入れるってコト? もし、スタンドに入る前にボールがワンバウンドしてたりしたら、ホームランにはならないの?」
「す、するどいな、本田。えーっと、えーっとな、『エンタイトルツーベース』ってのが、あったりするんだが」
「歯切れ悪過ぎない? くわしく教えてよ、その『エンタテイメントなんとか』ってゆーのについて」
「……『エンタイトルツーベース』、だよ」
「やっぱり星くん不甲斐無いんだね。3年になる前から薄々気がついてたんだけど」
「うるさいな」
「うるさくないよ。グズグズしてないで、わたしに野球の規則を教えてよ」
「それは、『公認野球規則』っつーのがあるから」
「へ??」
「『公認野球規則』! 要するにルールブックだよルールブック。それなりの規模の図書館だったら読むコトできると思うし、それなりにデカい書店だったらたぶん置いてある」
「……なにそれ」
「なんだよおまえ、一気に下向き目線になりやがって。これだから、本田の気難しさは――」
「星くんの大(おお)バカ」
「はぁ!?」
「星くんは、『丸投げ』ってコトバ、永遠に知らないで生きていくんだね!! わたし、もう怒った!! おたよりコーナーでおたより読み上げるの、星くんに『丸投げ』するっ!!!」
× × ×
「……もはや、どっちがパーソナリティでどっちがスペシャルゲストか分からんくなっちまったな」
「バカじゃないの早く3つ目のおたより読んでよ。星くんの音読スキルが絶望的なのは許してあげるから」
「さりげなくディスりやがったな。放送部部長のクセして」
「放送部部長は関係無い!!!」
「優秀な放送部部長は、机をバンバン殴打しない。
……しょうがねぇな、このおたよりで、読んでやるのは最後だからな。
んっと、ラジオネーム、『よみがえれ東京ヤクルトスワローズ』さんから。
ずいぶん切実なラジオネームだが……。おれは、過剰な危機感持たなくてもいいと思うぞ?
『暗黒期』ってのは、今のヤクルトなんかより、遥かに底知れないダメージをファンに与えるんだから。
他球団の例を具体的に挙げるならば――」