「はいはいはいはいはい!! 『ランチタイムメガミックス』、始めていきましょー!!」
「ちょっと待ったタカムラ」
「なんなのトヨサキくん!? せっかくわたしが喋りかけてたのに」
「喋るのはいいが、テンションが高過ぎる」
「……もしや、『昼休みの校内の人たちをハイテンションで邪魔しないように』とか注意したいわけ」
「だいたいあってる。おまえは『2年生に進級した』という自覚を持つべきだ。コドモっぽいテンションは抑えるべきだ」
「ねえ、『ブーメラン発言』って分かる」
「舐めるな。『そのコトバ、そっくりそのままキミにお返しするよ』っておまえは言いたいんだろ?」
「そーだよっ。入学したての1年生の中には、まだ学校に慣れてない子もいっぱい居るんだと思う。そういった子をリラックスさせてあげるのに、この校内放送番組は一役(ひとやく)買うべき。わたしたち、上級生の2年生になったんだからね」
「だったらなおさら、ハイなテンションは抑えるべきだよな。新入生をリラックスさせるのが目的の1つならば。おまえの論理(ロジック)は矛盾してるんでは?」
「――今日の1曲目にさっさと行きましょう。トヨサキくんを反面教師として」
「おれの指摘を無視するな!! しかも、『反面教師』ってなんだよ!?」
× × ×
「Every Little Thingの『For the moment』でした。わたしたちが産まれるはるか昔の曲でした。お察しの通り、とある先生からのリクエスト曲でした」
「……ゆとり世代か」
「バカじゃないのトヨサキくん。たしかにゆとり世代なのかもしれないけど、リクエストしてくれた先生に失礼過ぎるよ」
「そうかもしれない。以後気をつける。ところで――」
「なっなにっ、そんなに顔を近付けてこないで」
「この放送をお聴きの皆さま。やはり、『ランチタイムメガミックス』っていう番組タイトル、『長過ぎなんでは?』と感じていたりするんじゃないでしょーか??」
「顔を近付けてきながらリスナーへの呼び掛け!? キミという男子のコトがますます分かんなくなっちゃうよ」
「黙れタカムラ」
「だまらないっ」
「そーですか……。ただ、おまえだって、『ランチタイムメガミックス』っていう現行タイトルが長過ぎると感じてるんじゃないのか? 12文字だぞ、12文字」
「もしかして、キミはこう思ってるんじゃないの」
「『こう』って『どう』だよ?」
「競馬のお馬さんの名前の文字数制限みたいに、9文字以内に縮めたいとか」
「放送コード抵触」
「なにそれっ!?」
「おれもおまえも未成年なんだ。今後一切『競馬』というワードは出すな」
「……。おたより、おたよりコーナー、行ってみよ?? 放送時間も限られてるし」
× × ×
「おたよりは、わたしが読み上げます。
ラジオネーム『理屈じゃ計(はか)れない伊藤美来(いとうみく)の魅力』さんから。
この学校……声優好きなヒト、割りと多いよね。
おたよりの文面は、
『タカムラさんもトヨサキくんも、きょうだいは居るけれども、『妹さん』はいないんですよね? 『妹がいたら楽しかったのに』とか思ったりするんじゃないですか? そして、仮に妹さんがいたとしたならば、どんな妹さんであってほしいんでしょうか?』
というモノでした」
「確かに、妹がいたんなら、ココロがもうちょい安(やす)らぐんだろーな。おれには姉が2人いるけど、やかましくて面倒(めんど)くさい姉2人だから、ココロは少しも休まらないし」
「お姉さんのコトがそんなに鬱陶しいの? 家族なのに」
「鬱陶しいとは言ってないっ!」
「事実上言ってるでしょ。……キミと違って、わたしは自分のきょうだいがとっても可愛い。しばしば、弟を抱き締めたくなる。歳が離れていて、あどけない仕草をしょっちゅう見せてくれるから。――妹かぁ。ちょっと想像つかないな。性別が同じだから、学武(マナム)に対しての接し方とは少し違った接し方になるのかも」
「リスナーの皆さん、『学武(マナム)くん』というのは、タカムラが溺愛している弟さんの名前です」
「あっあのねえっ!? それ、説明する必要あった!? マナムが弟なのは話の文脈で分かるし、それにしかも、『溺愛』だなんてキモいコトバまで……!!」
「おれも、おたより一通(いっつう)読むとするか。ラジオネームは――」
「おたより投げるよ!?!?」