なんとかなった。
わたしにもピアノコンテストの悪夢が一瞬よみがえってきたけど、葉山先輩のメンタルヘルスのほうが遥かに深刻だった。
けど、全身で、葉山先輩をつつみこんであげて、ようやく先輩のこころを、解きほぐすことができた。
タメ口の応酬で、ね… (´ヮ`; )
「葉山先輩。タメ口ききまくって、すみませんでした」
「謝らなくてもいいよ。
羽田さん、わたしを泣かせた甲斐があったね」
「はい。
先輩、もう少し休んでください。
で、そのあとでピアノと歌、再開しましょう」
「はーい」
じつは。
ピアノ対決もといピアノセッションに関しては、やる前から、葉山先輩と、
『芝居仕立てにしよう』
と裏で決めていたの。
ふたりで短い台本書いて、葉山先輩が「体調不良でわざと倒れたふりをする」という演出なんかを盛り込んだんだけど。
先輩、体調不良以前にメンタル不良になってしまったので、もう芝居路線は出来なくなった。
さっきの葉山先輩は、茶番でなく、葉山先輩の「ほんとう」が露出してしまったのだけれど、それがかえってプラスのほうに作用したわね。
ところで──
わたし「せんぱ~い(´へωへ`*)」
葉山先輩「なに?」
わたし「葉山先輩、知り合いの異性とか、イナインデスカw」
葉山先輩「Σ(OωO ;;)」
葉山先輩「……知り合いというか、
よく遊んでいた男の子というか……、
が、いた」
わたし「幼なじみですね。」
葉山先輩「('﹏*๑)ウッ…」
葉山先輩「キョウくん。
あ、えーーっと、フルネームは、『カマクラキョウ』くんっていうんだけど。
鎌倉幕府の鎌倉に、強いの強(キョウ)」
葉山先輩「引っ越しちゃったんだ。連絡先知らないの。
ま、また会いたいっていうのが、嘘だったら、また会いたいっていうのが嘘なことが嘘になるけど」
わたし「先輩、複雑な日本語使いますね」
葉山先輩「悪かったね!ww」
葉山先輩「引っ越したっていっても関東地方だから、会えない可能性は──」
わたし「低くないじゃないですか!」
葉山先輩「神奈川県。」
わたし「鎌倉とか藤沢とかですか?」
葉山先輩「わからない。
富士山の近くでは、ないと思う」
わたし「センパイ、キョウくんさんに、もし会えたら、もっと元気になれそう!」
葉山先輩「……そうね(´ー`///)」
わたし「特定してみますか?」
葉山先輩「やめなさい。」