【愛の◯◯】それでも、アカ子はイメチェンがしたい

放課後

戸部邸

愛がピアノを弾くのを聴いている、アツマとアカ子

 

これまで、ずっとロングヘアーで通してきた。

中等部時代はずっと、愛ちゃんより、髪が長かった。

でも、

高等部になって、愛ちゃんの髪が伸びて、わたしを長さで追い越した。

 

地毛なのよね、愛ちゃんの栗色の髪。

栗色の髪が、背中のほうまで伸びてきてる。

 

うらやましいことこの上ない・・・!

嫉妬?

違う、違う。

純粋に、ステキだと思って、

でも、愛ちゃんの伸びた栗色の髪と、どんどん「美少女」から「美女」に成長していく愛ちゃんのルックスが、

眩しすぎてーー。

 

わたし、この髪、切ろうかな。 

 

愛ちゃん「アカちゃん、その髪、切っちゃうのーー!?

わたし「エッ」

愛ちゃん「さっき呟いてた、『わたしこの髪切ろうかな』って」

わたし「アッ」

 

ついに、「イメージチェンジしたい」 っていう意思が、言葉になって、知らず知らず、口に出てしまうところまで来た。

 

愛ちゃん「アカちゃん。よく考えよう?

 わたし、アカちゃんの黒髪ロングストレート、憧れだったのに!

わたし「えっ!?」

 

わたし「愛ちゃんのほうが憧れだよ……」

愛ちゃん「えっ、どゆこと?」

わたし「えっと、愛ちゃんの髪、キラキラしてて、ずっと憧れてて…、(モゾモゾ)

 それに、愛ちゃん、すごい美人だし

愛ちゃん「(絶句)

 

 

アツマさん「おまえが美人じゃなかったら、だれが美人なんだ

愛ちゃん「(目を輝かせて)ほんと!? アツマくん

 

……どっからどう見ても、夫婦(^^;)

 

愛ちゃん「でも、アカちゃん、あなたが美人じゃなかったら、だれが美人なの? これ、全然お世辞じゃないからね」

わたし「あ、ありがとうっ」

 

アツマさん「アカ子さん、どうしても切りたいなら、切っちゃえばいいじゃないか」

愛ちゃん「アツマくんあんたバカじゃないの!?

アツマさん「ばかって言ったやつがばかだって、それ一番言われてるから」

愛ちゃん「アツマくんも『ばか』ってもう2回言ってるじゃん」

 

愛ちゃん「それはともかく、女の子が髪を切っちゃうって、すごく重大なことなのよ。

 男の子が思ってるより、ずっと」

 

愛ちゃん「アツマくん、前に、アツマくんから、『ま1/2』っていう漫画借りて、読んだことあったじゃない?」

 

 

らんま1/2 (1) (少年サンデーコミックス)

らんま1/2 (1) (少年サンデーコミックス)

 

 

アツマさん「あったあった、最初のほうの巻だけ読ませたっけ」

愛ちゃん「高橋留美子さん、だっけ? ほんとうに女性の漫画家が描いてるのコレ? って思ったけど」

アツマさん「い、いや、それはわかれよ(;゚Д゚)」

愛ちゃん「天童あかねちゃんっていう、乱馬くんの許婚(いいなずけ)が、長い髪をバッサリ切られちゃったじゃない。

 たしか、良牙くんっていう、水かけられると『Pちゃん』っていうかわいいブタさんになっちゃう男の子と、乱馬くんが対決していて、その対決のあおりを受けて、あかねちゃんの髪がバッサリ切られちゃうーーそんな流れだった

アツマさん「おまえ、漫画ほとんど読まないのに、どういう理解力の高さだよ、それ!?

 

愛ちゃん「(つっこみをスルーして)言ってなかった? あかねちゃんのクラスメイトの女の子が。

 『女の子が髪を切るってことが、どういう意味かわからないの!?』みたいな趣旨のことを言ってたでしょ」

 

アツマさん「たしかにそうだったな。

 でも、そんなに漫画が読みこなせるなら、愛にはこんど、ぜひ『めぞん一刻』を読ませたいな」

愛ちゃん「なんか小さな声でぼそぼそ言ってない?」

アツマさん「ん、なんでもnothing」

 

愛ちゃん「で、アカちゃんがイメチェン計画を立ててるのはわかるけど、もう少し考えてみよう? わたしとさやかとあすかちゃんと藤村さんが相談に乗ってあげる」

わたし「藤村さんってだれなの」

愛ちゃん「すごく頼りがいのあるおねえさんよ」

わたし「え(;^ω^)」

 

 

愛ちゃん「えーっとじゃあ、さいきん聴いて好きになった曲を1曲弾きます。

 

 THE BACK HORNっていう邦楽ロックバンドの、

コバルトブルー』って曲。」

 

 

 

 

 

♫『コバルトブルー』♫

 

わたし「すごく情熱的で執念を感じる曲ね。パッションといえばいいのかしら、パトスといえばいいのかしら」

アツマさん「うん、すっげえアツい! そんな曲だな」

 

愛ちゃん「そうね。曲も熱いけど、歌詞も熱いよね。詩的な比喩も使われているし」

 

わたし「わたしの髪も、コバルトブルーに染めようかな

 

愛ちゃん「それはやめなさい。