【愛の◯◯】天ぷらにしたら美味しいお魚の名前

外に出かける時、本をかならず3冊以上持って出ないと気がすまなかった。

 

でも、きょうは、本を1冊も持たずに外出する。

理由は……察して……。 

 

アツマくんは、

 

『おまえが本をカバンに入れずに外出するなんてヘンじゃねーか?』

 

というふうなことを、

今回は、出かけぎわに、一切言わなかった。

言わないでくれた。

優しい……。 

 

都内某駅前

 

蜜柑ちゃーーーーーーーーーーーーーん!!

 こっちこっち!!!」

「(;´Д`)こ、こらぁ! 失礼だろ愛、年上の蜜柑さんに向かってーー」

 

「あら~、わたし愛さんが『蜜柑ちゃん』って呼んでくれるの、すっごく嬉しいんですよw」

「(;´Д`)ど、どうも蜜柑さん、うちの居候がご迷惑をーー」

 

ドガッ

 

「(# ゚Д゚)愛、て、てめぇ!! おれのヒザ裏キックしやがったな!!」

「♪~(´ε` ) (知らんぷり)」

 

「(*ノ∀`*)ウフフ♪ ほんとう、ケンカするほど仲がいいんですね❤」

(゚∀゚)そうでしょ!? そうでしょ蜜柑ちゃん

「orz どういうノリなんだ……」

 

 

× × ×

 

「でもいいんですか? わたしみたいな邪魔モノがいて。

 おふたり水入らずの買い物に割って入るみたいで」

「そこは『三人寄れば文殊の知恵』っていうでしょ」

「(-_-;)ちょっち、意味わかんねーぞ、愛よ……。

 (^_^;)まぁ、おとといよりは、だいぶ元気だし、それがなによりだ」

 

「おととい!? おとといなにかあったんですか」

「こいつがおれに抱きついて泣きついてきたんですよ」

(*'д';c彡☆))Д´) こ、こらアツマ、ここは公共の場所でしょ!?

「ヒザの裏蹴ってきた仕返しだ、ざまーみろ」

 

「…うらやましい」

 

「(´Д`;)え!?!? 蜜柑ちゃん、『うらやましい』って!?」

「おらおら、とっとと目的地行くぞ、置いてくぞ」

ま、まてアツマ!!

「あと3回呼び捨てしたら来週毎日掃除当番な!」

 

 

 

 

 

某モール

 

男性向けも、

いろいろなブランドの服がある。

あたりまえだけど。

 

それぞれのブランドについて、

わたしはぜんぜん詳しくないけど、

しらみつぶしに、

アツマくんに似合うような夏物を、物色するのだった。 

 

「(;;´Д`)おい! おまえはしゃぎすぎだぞ!

 売り物の服を持って踊り回るんじゃねえよ?!

「まぁまぁアツマさん、よっぽどストレスが溜まっていたんでは」

「(;;;Д;)蜜柑さん……愛をとめてくれ……」

「いいじゃないですかw

 ほかのお客さん見とれてますよww」

「(´;ω;`)……美人だったらなんでも許されるのかよ」

 

あ!

「(´;ω;`)出し抜けになんだコラっ」

「アツマくん!! いまアツマくん『美人』って言ってくれた!?」

「決してポジティブな意味で言ったわけじゃねーからな」

『キレイ』って言われて嬉しくない女の子なんていないよ

「(;_;;)こ、こいつ……」

 

「なんで涙ぐんでんのよっ」

 

なぜか陰気な顔のアツマくんをまっすぐ見据えて、

持っていたシャツを、

彼の身体に合わせてみた。

 

「(*ノ∀`*)うん、ピッタリww」

 

「愛さん、よく一発でアツマさんのサイズがわかりましたね」

 

「だっていっしょに住んでるもん」

「たしかに。

 わたしもお嬢さま*1のスリーサイズ、はかってあげたことないかもしれない」

「あははは♫」

 

× × ×

お目当てを購入後、カフェへ

 

「愛、コーヒーおかわりするんじゃねーぞ」

「なんで」

「これ以上おまえのテンションが上昇するとだなあ、周りに迷惑がだなあ」

「わたし、そんなハイテンション?」

「一目瞭然」

どうしてわかるの

 

(頭を抱えるアツマくん)

 

どうして頭抱えるの?

 

 

 

 

「(耳元で)愛さん愛さん」

「なあに蜜柑ちゃん」

「このあとこっそりカフェイン入れませんか」

「えっもしかして蜜柑ちゃん紅茶淹れてくれる!?」

 

「あ、

 でも……、

 (^_^;)アツマくん取り残してアカちゃんち行っちゃうのは、ちょっと。

 アツマくんに悪すぎるよ」

「( ;゚д゚)アッほんとうだ、

 さすが愛さんですね!」

 

 

 

「ごめんねアツマくん」

「申し訳ありませんアツマさん」

 

「(゚Д゚;;)はい!?」

 

「わたしたちちょっと有頂天になってたみたいで」

「有頂天とは思わんかったが……、

 愛に理性がなくなってなくてよかった

「ど、どゆこと」

「ちゃんと反省できてるから」

「(・_・;)」

 

 

 

夕暮れの帰り道

 

駅で蜜柑ちゃんと別れ、

ふたりきりの帰り道。

 

「ねえ」

「なんだあ」

「きょうのわたし、おかしかった?」

「ああ」

「えーーーっ!」

「でも」

「?」

「落ち込んでるよりは、100倍マシだったから」

どうしてアツマくんはそんなにフォローがうまいの

「おまえなあ!w」

 

 

荷物があったので、途中の公園で一休みすることにした。

 

ほかに誰もいない。

 

ベンチに隣り合って腰を下ろす。 

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

15分経過

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

さらに15分経過

「アツマくんにクイズ」

「(ゴクン)」

天ぷらにしたら美味しいお魚の名前はなんでしょう

 

「ば、ば、ばかじゃねえのかおまえはぁ!?

 いくら暗くなって周りに人の気配がしなくなったからからって!?

 そんな欲求不満なのか!?

 きょうのおまえ、やっぱおかしぃ…!!!

 

 

 

 

 

 

 

 …口紅とか、するわけないか。

 大学生じゃねーし」

「ひっどーい、感想、それ?」

 

「ひっどーい」と言いながらも、

わたしは笑っていた。

たしかにきょうのわたしは、どこか、おかしい。

でも、それとひきかえに、

おおきなおおきな前進があった。

 

 

ただ、困ったことに、

残りの帰り道、

アツマくんのほっぺを、

絶対に見られなくなっちゃったけど。 

 

 

 

*1:アカちゃんのこと。蜜柑ちゃんはアカちゃんと同居しているの