【愛の◯◯】アロマオイルのいじわる

ハルくんにサイズの合ったTシャツを買ってあげたかった。

ハルくんと2人でTシャツを買いに行くのは死ぬほど恥ずかしくてできるわけがなかった。

だから蜜柑に同行してもらいたかったが、男女比が1:2だとフェアじゃないし、蜜柑のせいでハルくんが萎縮してしまわないとも限らない。

もうひとり男の人がついて来てほしい。

そこでーー。 

 

某ショッピングモール

 

わたし「アツマさんすみません、無理を言って」

アツマさん「いいのいいの。

 おれの役割はいまいちわからんけどw」

わたし「(アツマさんに耳打ちして)それは……ハルくんとわたしと蜜柑だけだったら、ハルくん、来てくれなかったと思ってて

アツマさん「(わたしにだけ聴こえるように)なーるほどww

 

同じ家に住んでるのに、蜜柑よりも早い電車に乗って、

アツマさんに実際より早い集合時刻を伝えたのは、

早めにアツマさんに会って、

残りの2人が来るまでに事情を説明したかったからだ。 

 

× × ×

 

蜜柑「お嬢さま~ひどいですよ~わたしを置いていくなんて~、

 ひとつ屋根の下の間柄じゃないですか~」

 

アツマさん「あ、どうもこんにちは、戸部アツマです」

蜜柑「こんにちは~、かねがねお話は聞いております~、

 お嬢さまのご学友とひとつ屋根の下の間柄だとか」

わたし「蜜柑! 嫌らしいことアツマさんに喋ったらブッ飛ばすわよ」

アツマさん「(; ゚д゚)ポカーン」

蜜柑「あーら早速アツマさんが困惑されたご様子ですね~w」

 

そこにハルくんが来た。 

 

アツマさん「ハル、おまえちょっと髪伸びたか?」

ハルくん「バレちゃいましたか」

アツマさん「日焼けしてるのは相変わらずだけど」

 

ちがう、相変わらずじゃない、

近ごろのハルくん、以前よりもっと日焼けしてて、

精悍な顔つきになってる。

印象が前と違う。

アツマさんに近づいてきてる。

 

「アカ子さん」

 

「アカ子さん? おーい」

 

わたし「Σ(゜o゜; ハッ!!」

ハルくん「(さっぱりとした笑顏で)服、どこで買うの」

わたし「(-_-;)ご、ごめんね、案内します」

 

× × ×

お店

 

今度こそ、ちゃんとハルくんにハルくんの服のサイズを訊かなきゃ。

 

わたし「ハルくん!」

ハルくん「ん」

わたし「あの…あの…」

ハルくん「ん?」

わたし「ハルくんの、さ、さ、さ」

ハルくん「さ?」

わたし「……さ、財布を見せて

ハルくん「(財布を出して)はい。でもどうして?」

 

蜜柑「ハwwハルくんwwお、お嬢さまはwwwwwサ、サイズをwwwwwハルくんのサイズをwww服のサイズをきききききき訊きたかったんだとww思いますwww」

 

わたし「( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン

 

アツマさんうげぇ!!

 

わたし「あっ、あっ、すすすすすすすすっすすみませんすみませんすみませんアツマさん!! 蜜柑を打(ぶ)とうとしたらそのっっそのそのその動揺しててつい!!!!!!!!!!!!!なんとお詫びしていいかc]m,3:2うtxcvj3c

 

× × ×

 

さて、

深呼吸して、

ハルくんの正面に立つ。

 

選んだTシャツを、

ほんとうにハルくんのサイズに合っているかどうか、

ハルくんにほんとうに似合っているかどうか、

ハルくんの上半身で確かめる。

 

蜜柑がわたしのうしろに、アツマさんがハルくんのそばにいてくれなかったら、

こんなこと、死んでもできなかった。 

 

わたし「あ…あてるよ? シャツ。いい? ハルくん……あててみても

ハルくん「慎重すぎるよ~w」

 

腕を伸ばして、

ハルくんのからだにシャツを突き当てる。

 

わたしの身長が、158センチしかないから、

少しだけハルくんの顔を見上げた。 

 

 

 

 

 

わたし「(肩が震え始めるのを感じながら)・・・・・・」

ハルくん「・・・・・・」

 

 

 

 

わたし「・・・・・・・・・・・・・・・どう?

ハルくん「うん、サイズはぴったりなんだが」

わたし「なんだが、?」

ハルくん「蜜柑さんとアツマさんが消えた

 

 

 

 

× × ×

『どういうつもりなの!?』

『アロマオイル!?』

『愛ちゃんにアツマさんが、選んでやりたいって!?』

『それホントなの!?』

『口実じゃないわよね!?』

『ウソだったら、今月、クチきかないからね、わかった? 蜜柑』

 

× × ×

「あっ、ようやく戻ってきた」

「ごめんね待たせて……全部蜜柑のせいだから」

 

「ねえアカ子さん、これとこれと、どっちが君は好きだ?」

 

それ…ハルくんが着るTシャツなのにわたしが選んじゃってもいいってこと?

 

「そうだね」

 

 

 

 

<ぽすっ

 

「(;^_^)アカ子さん…僕のからだにシャツ、合わせるのはいいけど、

 顔、上げてくれよw」

こっちのほうが絶対いいから。

 こっちしか選んじゃいけないから

「片方のは?」

「(店員さんにバレないような声で)そっちのブランドはもう今後、手に取っちゃだめだからね

「(;^_^)ええっw」

 

 

男の子のからだにこんなに接近したのは、

約17年間の人生ではじめてだった。

 

身体は火照り続けていた。

蜜柑とアツマさんはアロマオイルを買いに行ったらしいが、

身体は火照り続けていて、

それで……帰ったら、

アロマの入浴剤を入れたお風呂に入って、

きょうの疲れを癒やすと同時に、

波立つ感情を鎮(しず)めたかったけど、 

 

蜜柑、用事が終わったら、アツマさんと一緒に、ここに戻ってくるの? 

 

もうちょっと待って、蜜柑。

アツマさんをひきとめておいて。

 

ごめんね、蜜柑……。

今は蜜柑に戻ってきてほしくない。

 

 

 

 

 

 

ハルくんといっしょにいたい……。