わたし、羽田愛。
身長160.5センチ。
体重とスリーサイズは、永遠の秘密。
11月14日生まれの18歳。
大学では、第一文学部で哲学を専攻中。
最近のマイブームは、バームクーヘンを作ること……。
えー、
なぜ、このような自己紹介めいた始まりかたをしたかといいますと、
近ごろ、本シリーズにおきまして、
わたくし羽田愛の影が……極度に薄いような気がいたしましたので。
【愛の◯◯】シリーズ、なんです。
そういうシリーズ名であるからには、もうちょっとわたしの出番があってもよろしいんじゃありませんの??
わたしはアツマくんなんかと違って、このブログの『中の人』とは友好的にやっているほうだと自覚してるんですけど、
にしても……こうも干され気味だと、苦情のひとつやふたつも言いたくなってくるんですよ。
『わたしが語り手である地の文の記事』、さかのぼってみると、
なんと、7月13日までさかのぼらなきゃならなくなってしまうんですけど。
――1ヶ月近く、わたしの『お当番回』がなかった、ってことですよね!?
聴いてますか、管理人さん!?
しっかりしてくださいよ!!
もっとじぶんの創作に、責任持って!?
落とし前、つけて!?
……余計なことまで言っちゃった気がするけど、
ようやくきょう、わたしのお当番回が来るまで、長くて、つらかったです。
でも、前進していきましょう。
わたしたちは、一歩一歩、この【愛の◯◯】シリーズを、前に進めていくんです……。
重ねて言うみたいだけど、
腹くくってくださいよ、
管理人さん……!!
ちなみに、
きょうは日曜日、
直近4週間の、日曜日の担当者はというと、
7月11日:アカちゃん
7月18日:アカちゃん
7月25日:アカちゃん
8月1日:アカちゃん
――はい。
見事に、日曜日は、アカちゃんしか勝ちませんねー(棒読み)。
きのう、アカちゃんのお当番回だったみたいですけど、
日曜日の担当を、わたしに譲ってくれたんですね。
× × ×
「――前フリの長さ。
きょうは、とくに長かった。
前フリに時間をとりすぎて、収拾をつけられなくなるのが、悪いクセ。」
「?? なんのこっちゃ。だれの、悪いクセなんだ? 愛よ」
「だれでもないのよ――アツマくん」
「……なんだそれ」
じぶんの部屋だからと、アツマくんは、ベッドに仰向けになって、スマホをさかんにフリックしている。
なにをやってるんだか。
思わず、問いかける。
「アツマくんあなた、SNSはしない主義だったわよね?」
「あー。アカウントなんか、持ってねぇぞ」
「じゃあ、いまスマホでなにを見てるの」
「そこは、プライバシーだ」
「なにがっ」
「いいだろ、なに見てるか晒さなくたって、べつに。悪いことしてるわけじゃないし」
「だとしても……」
「『わたしにだけは、教えてくれてもいいじゃない』?」
「そ、そう。そういうことが言いたかったのよっ」
「しょうがないねえ~~、愛ちゃんは」
「なによその口調。もっとちゃんとやってよ」
「――すまん」
「す、素直ね」
「素直ついでに教えてやる。
おれがいまスマホで閲覧してるのは――、」
「う、うん、」
「――ボクシングの入江選手の、出身ジム公式サイトだ」
「――そんなこと調べてたの!?
「『シュガーナックル』っていう名前のジムらしい」
「へ、へぇ……」
「ジム通い経験のある身としてもな……」
遠い眼になるアツマくん。
ボクシングジムを検索したぐらいで、なぜそんなに感慨深くなるのか。
まあ、気持ちは……わからなくも、ない。
「入江選手の出身ジムのサイトを巡礼するのは、大いに結構だけど」
「ん~?」
お行儀よい床座りのしかたで、寝っ転びアツマくんのお腹のあたりをまっすぐに見る。
わたしは、わたしをもっと、見てほしく、
「なにか――気づかない?」
「は?」
のっそり身を起こしかけるアツマくんに、
「わたしの、外見について」
…すると彼は、仏頂面でわたしをジィーッと眺めて、
「なんも変わったとこなんかないじゃねーか。
ナンパされるほど美しい、女子大生の外見だ」
……ハァ。
これだから、
これだからアツマくんは。
期待してたのにぃ~。
「……そのガッカリ顔、謎なんですけど」
「ほんとうに、なんにも変化がないって思うの??」
「お、おい、怒んなよ」
「怒らないわよっ、ただし――」
手櫛で、わざ~とらしく、髪をかきあげて、
「散髪したわたしの髪を、ベタボメしてくれたなら」
「――もしかして、髪、切った?? おまえ」
「気づくの遅いっっ」
「それは――遅くて――すまんかったよ」
「スマホなんかにうつつを抜かしてるからでしょ」
「すまんな。ごめんな、鈍感な男で」
「許すけど。――で、わたしのさっぱりした髪は、どういう印象?」
「フーーム」
「早くベタボメしてほしいんだけどなー」
「……うん。
女子大生らしさに、磨きがかかった」
「……ちょっと。」
「え、不満か?」
「不満よ!! それでホメちぎったことにはならないでしょーが」
「じゃ、じゃあ……どう言えばいいんだよ、おれ」
「考えて」
「……」
「……」
ベッドの上であぐらをかいて、腕を組み、懸命に考え込む彼。
やがて――彼は、顔を上げ、
「……困ってしまうぐらいに、キレイな髪だ。
おまえの、戸惑うほどキレイな顔と……すこぶる、似合ってる」
「――、
あはっ、あははははっ」
「えぇぇ……いきなりの、爆笑モードかよ!?」
「だって、涙が出るくらい、アツマくんのホメかたが、面白いんだもん」
「面白くって――悪かったな」
「ありがとう。アツマくん。」
「ったく。一気に、素直になって、感謝してくるんだから」
「――戸惑ってる?」
「若干。」
「わたしがキレイだからなんだ☆」
「こらっ」
× × ×
「……でね、夏真っ盛りだから、サナさん、冷たいシャンプーでシャンプーしてくれて。幸せすぎるぐらい幸せなシャンプーだった」
「ほおーっ。冷たいシャンプーかあ」
「いいでしょ」
「そのシャンプー、非売品なんかな?」
「どうかな、あいにく、訊かなかった」
「邸(いえ)の風呂にもあるといいな」
「ほしいよね」
「どうにかして、取り寄せられないか…」
「取り寄せられそうじゃない?」
「そう思うか?」
「ほら。明日美子さんの、神通力で――」
「神通力って」
「だって明日美子さんでしょ」
「そりゃあ、母さんは……いくつになっても、なんでも可能にする神通力みたいなのを、持ってる気がするけど」
「ねっ。
おねだりしてみて? 明日美子さんに。
おねだりおねがい、アツマくん」
「おれがかよ」
「あなたは息子でしょ」
「んー……」
「なにおねだり恥ずかしがってるのよ~っ」
「……」
「お母さんに、おねだりぐらい、できないの?」
「…できらぁ」
「じゃ、たのむわね~♫」
アツマくんのおねだりが成功したあかつきには――、
明日美子さんの謎のパワーで、夏には最高の、冷たくてスッキリするシャンプーを…取り寄せてくれるはず。
心待ちにしよっと。