「8月もいろんなコトがあったわね、アツマくん」
「そんなにいろんなコトあったかぁ?」
「バカね、嘘でも『いろいろあった』って言っておくべきよ、こういうシチュエーションでは」
「えー」
「ずいぶんフザケた声ね……」
「だってー。『こういうシチュエーション』って、どういうシチュエーション?」
「話は変わるんだけどね」
「まーた、愛の身勝手が発動かよ」
「ベスト3を言ってほしいの」
「なんのベスト3だよ。愛、おまえはそういうとこが身勝手なんだぞ」
「8月にわたしが作ってあげた料理のベスト3よ」
「難しい要求だなあ」
「難しくても言ってほしいわ」
「……」
「考え始めてるのね」
「……」
「じっくり考えてるのね。良いコトだけど、考え過ぎて日が暮れないようにね」
× × ×
「よし、決まったぞ」
「それなら早く教えて〜」
「第3位。きゅうりとトマトのレモンドレッシングサラダ」
「へえぇ」
「なんだか微妙なリアクションだな」
「微妙じゃないわよ」
「第2位。小エビとズッキーニのイタリア風サラダ」
「エエッ、またサラダ……」
「小エビの食感とドレッシングが良かった。地中海風な味わいのドレッシングだったよな」
「まさかあなた、第1位もサラダなんじゃ」
「違う」
「違うの?」
「違うぞ」
「な、なんなの、1位は」
「第1位は――塩肉じゃが」
「!!」
「なんだよー、いきなり凄くビックリしやがって」
「アツマくんが……いちばん美味しかった8月のわたしの料理……塩肉じゃがだった……。わたし、とっても……とっても……嬉しいわ……!」
「なんで泣く勢いなの」
「ありがとう、塩肉じゃがさん」
「いや肉じゃがを擬人化するなや」
「だって、わたしの小さな胸が嬉しさでいっぱいなんだもの」
「理屈になってない」
「なってなくても良いでしょ、少しぐらいは☆」
「……おれに抱きつきながら開き直りやがって」