「え、えーっと。み、皆さま、おはようございます……じゃなかった、こんにちは。
金曜のお昼、どうお過ごしでしょうか? 元気ですか?」
「トヨサキくん、タイトルコールタイトルコール」
「あっ」
「『あっ』じゃないよ。タイトルコールしなきゃ。番組が始まらないよ?」
「そ、そーでしたっ。
ん、んっと……んっと……。
あれっ?
番組名、何でしたっけ」
「ガクッッ!!」
「……」
「普通、ド忘れなんてする!? 前代未聞だよ。
この校内放送番組のタイトルは、『ランチタイムメガミックス』に決まってんじゃんっ」
「すみません……。緊張していて」
「言い訳はNG。
ほらっ、早く。
『ランチタイムメガミックス』って言うんだよ」
「お、お聴きの皆さま。わたくしが緊張し過ぎていて大変申し訳ありませんでした。
これから、『ランチタイムメガミックス』を始めようと思います。
――って、なんで紅葉(もみじ)先輩、笑いまくってるんですか?」
「だ、だってだって、だってね、トヨサキくんが、『わたくし』なんて1人称使うんだもん。普段通りに『おれ』で良いんじゃん。どんだけガチガチになってんのかって感じ」
「じ、時間が押していますので、本日のオープニングナンバー」
「逃げたぁ~~」
× × ×
「……本日のオープニングナンバーは、ずっと真夜中でいいのに。の『秒針を噛む』でした」
「この曲も最早ナツメロっぽくなってない?
まあそれはどーでも良いとして。
トヨサキくんがあまりにもキンチョーし過ぎてるんで、放送部の部長に君臨してるわたしが『説明』しましょう。
2学期になったコトだし、『ランチタイムメガミックス』のパーソナリティをトヨサキくんに担当させても良い頃かなって思った。
あ、ちなみに、トヨサキくんは放送部の部員じゃなくて、『ランチタイムメガミックス』を元々作ってた『KHK』っていうクラブの1年生です。タカムラかなえちゃんっていう女子と一緒に、彼が『KHK』を復活させたの。
で、トヨサキくんに今日のパーソナリティを任せるコトにしたんだけど、スタジオに彼1人ってのは流石に不安なので、ワタクシ中川紅葉(なかがわ もみじ)がサポート役で付いてあげるコトにしたワケ。
いわば、トヨサキくんは仮免(かりめん)パーソナリティだね」
「よく喋りますね、紅葉先輩は」
「トヨサキくんがわたしにぶつかっていかないからだよ」
「エッ。ぶつかる??」
「わたしという『壁』を打ち破る気概でパーソナリティをやらなきゃダメだってコト。
はい、ここで抜き打ちフリートーク!!
わたしは一切口出しをしないので、3分間喋り続けてください」
「3分間も!?」
「余裕っしょ☆」
「余裕じゃないと……思います」
「なんで」
「3分間って結構長いですよ。3分しか戦えないウルトラマンも怪獣倒すのに結構時間かけてる印象ですし」
「!? ウルトラマンって3分しか戦えなかったの」
「そこからですか。……なんかすみません」
「トヨサキくんがウルトラマンにならなくちゃいけないね」
「どうやってなるんですか……」
「開始!! 3分間フリートーク開始!!」
「せ、せんぱぁい」
× × ×
「どうにか3分間話せたね!!
さぁ、くたびれてるヒマなんか無いよ。昼休憩の終わりは着実に近付いてる。
お便りコーナー。お便りコーナーでシメるんだよ」
「おれの眼の前にお便りが積まれ過ぎてる気がするんですけど。どうすれば良いんですか」
「お便りの山の中から2通を選ぶ。そして、読み上げる」
「2通って。どうやってピックアップすれば良いのか、見当もつきません」
「あーあ。これだから、Z世代は……」
「!?!?」
「今から20秒以内に直感で2通を抜き取りなさい。そう、直感で!! 放送部部長としての命令」
「そう言われたって。おれは放送部じゃなくてKHKの人間ですし」
「キミは本当にバカだね」
「ど、ドラえもん風味なセリフを言わないでください」
「え?? ドラえもん風味って、どこが??」
「先輩、ドラえもんに詳しく無かったんですね。申し訳無かったです」
「ウルトラマンにドラえもんか。今回のトヨサキくん、なーんか、昭和世代のオジサンみたい」
「……2通ピックアップしたんで、読みます」