【愛の◯◯】わたしの彼氏は4820ポイント

 

「愛。おまえ、鼻歌を歌いながら、ノートに頻(しき)りに何か書きつけているが。いったい何を書いてるんだ?」

「絶対に教えない」

「お、おいっ」

「――というのは嘘で」

「ななっ」

「明日ね、あすかちゃんと『デート』するの。だから、詳細なスケジュールを立てていたのよ」

「おまえはおれの妹が本当に大好きなんだな」

「当たり前よ」

「実の姉妹みたいに通じ合ってるし」

「当たり前の当たり前だから。……あのね、明日の『デート』は、ちょっと特別な『デート』になるの」

「特別?」

「アツマくん、あなたに教えるつもりなんかは無いけどね♫」

「どーゆーこった。なんだか怪しいぜ」

「『怪しい』!? 明日の特別デートに怪しい要素なんて無いわよっ!!」

「出た。瞬間湯沸かし器」

「殴られたいの!?」

「出た。『殴られたいの!?』とかいう常套句」

「ぐぐぐ……!」

 

× × ×

 

「よくガマンできたな、愛。おれにパンチしたい気持ちを抑え続けられた」

「暴力の代わりに、ポイント大幅マイナスよ」

「おおーーっ」

「な、何なの、その反応」

「おまえ独自のポイントシステム、有名無実と化してなかったんだなーって」

「化してないわよっ。さっきのバカみたいな態度で2000ポイントマイナスになったから、あなたの現ポイントは、4820ポイント」

「それ、ホントにちゃんと計算してんの??」

「し・て・る・か・ら。言ったはずよ!? ポイント記録専用のノートも作ってるって」

「ノートあるんなら、おれに見せてくれよ。『証拠』が見たいし」

「ゼッタイのゼッタイにイヤだ」

「なぜに」

「女の子は、自分の彼氏に対しても、隠しごとを20個までなら持って良い権利があるんだから」

「なんじゃいなー。どうせ、おまえの口から出任せに過ぎんのだろ?」

「……アツマくん」

「ん」

「『なんじゃいなー』って言うのは、1日3回まで」

「へぇ」

「薄ら笑いはやめて。ムカつくから」

「はい」

「……ポイントシステムに話を戻すけど」

「はい」

「ポイントが付くのは、あなただけじゃないの。あすかちゃんや利比古の分のポイントも、記録して、『保管』してるの」

「ほぉ。じゃあ、あすかや利比古のポイントが減点されるケースもあるんか?」

「無い。ポイントがマイナスになる場合もあるのは、あなただけ」

「それはかなりヒドいな」

「あなたを愛しているからこそ、よ。ポイントマイナスも、愛情表現の一環……」

「ハハハッ」

「なんなのよそのリアクション!? 半角カタカナみたいな笑い声は出さないで!?」