「愛。おまえ、鼻歌を歌いながら、ノートに頻(しき)りに何か書きつけているが。いったい何を書いてるんだ?」
「絶対に教えない」
「お、おいっ」
「――というのは嘘で」
「ななっ」
「明日ね、あすかちゃんと『デート』するの。だから、詳細なスケジュールを立てていたのよ」
「おまえはおれの妹が本当に大好きなんだな」
「当たり前よ」
「実の姉妹みたいに通じ合ってるし」
「当たり前の当たり前だから。……あのね、明日の『デート』は、ちょっと特別な『デート』になるの」
「特別?」
「アツマくん、あなたに教えるつもりなんかは無いけどね♫」
「どーゆーこった。なんだか怪しいぜ」
「『怪しい』!? 明日の特別デートに怪しい要素なんて無いわよっ!!」
「出た。瞬間湯沸かし器」
「殴られたいの!?」
「出た。『殴られたいの!?』とかいう常套句」
「ぐぐぐ……!」
× × ×
「よくガマンできたな、愛。おれにパンチしたい気持ちを抑え続けられた」
「暴力の代わりに、ポイント大幅マイナスよ」
「おおーーっ」
「な、何なの、その反応」
「おまえ独自のポイントシステム、有名無実と化してなかったんだなーって」
「化してないわよっ。さっきのバカみたいな態度で2000ポイントマイナスになったから、あなたの現ポイントは、4820ポイント」
「それ、ホントにちゃんと計算してんの??」
「し・て・る・か・ら。言ったはずよ!? ポイント記録専用のノートも作ってるって」
「ノートあるんなら、おれに見せてくれよ。『証拠』が見たいし」
「ゼッタイのゼッタイにイヤだ」
「なぜに」
「女の子は、自分の彼氏に対しても、隠しごとを20個までなら持って良い権利があるんだから」
「なんじゃいなー。どうせ、おまえの口から出任せに過ぎんのだろ?」
「……アツマくん」
「『なんじゃいなー』って言うのは、1日3回まで」
「へぇ」
「薄ら笑いはやめて。ムカつくから」
「はい」
「……ポイントシステムに話を戻すけど」
「はい」
「ポイントが付くのは、あなただけじゃないの。あすかちゃんや利比古の分のポイントも、記録して、『保管』してるの」
「ほぉ。じゃあ、あすかや利比古のポイントが減点されるケースもあるんか?」
「無い。ポイントがマイナスになる場合もあるのは、あなただけ」
「それはかなりヒドいな」
「あなたを愛しているからこそ、よ。ポイントマイナスも、愛情表現の一環……」
「ハハハッ」
「なんなのよそのリアクション!? 半角カタカナみたいな笑い声は出さないで!?」