「湿っぽい季節になってきましたねー。ジメジメ。ジメジメだから『ジメっぽい』とも言えちゃうな。
そんなジメっぽい季節は少しユーウツ。だけど、だからこそ、この校内放送を聴いて元気を出して欲しいな。
『元気を出して』といえば、竹内まりやの曲、なんだけども……。
タカムラちゃん、タイトルコールの前に曲流してもOK?」
「エッ、紅葉(もみじ)先輩、もう曲をかけちゃうんですか」
「そういうパターンもアリ」
「竹内まりやを?」
「ううん、違うよ」
「違うって……」
「わたしが流したいのは、竹内まりやのダンナさんの曲」
「山下達郎!?」
「そ」
× × ×
「……というワケで、本日のオープニングナンバーは某キムタク主演飛行機ドラマの主題歌でありました。
わたしたちが誕生した頃のテレビドラマであるのは承知の上。
さあ!!
始めていきましょー、『ランチタイムメガミックス』!! 本日は、金曜日!!」
「テンション高いですねえ、先輩」
「タカムラちゃんも自己紹介して」
「あ、はい。アシスタント役の、1年B組のタカムラかなえです。同じくアシスタント役でたまに番組に出てる1年C組の豊崎三太(とよさき さんた)くんよりは、恥は晒してないと思いますー」
「恥晒すってなに、恥晒すって」
「身内に厳しいので」
「アハハハ。なんだかわたし、タカムラちゃんとトヨサキくんが名コンビに見えちゃってきてるよ」
「えぇー。名コンビ認定にするの早すぎません?」
「まんざらでもないんじゃないの」
「先輩先輩。時間には限りが有るんですよ。お便り読んじゃいましょーよ、お便り」
「わたしの指摘をスルーかつ『巻き』の進行かあ。タカムラちゃんもなかなかやるねえ」
「トヨサキくんよりはアシスタントらしいでしょ?」
「否定できない」
「わたしは、トヨサキくんよりも、紅葉先輩と名コンビになっていきたいです」
「男子と名コンビになっちゃうのは気恥ずかしいか」
「……お便りコーナー、スタート」
「わあ〜〜」
「そ……そのリアクションは??」
「スルースキルに回避スキル、発動させてたね」
「うぐ」
「今日は、図星のタカムラちゃんに、お便りを読んでもらおうと思います」
「無茶振り……。
でも、良いですよ。読みます読みます。
1つ目は、ラジオネーム『響け! TrySail(トライセイル)』さんから。
アニメと声優ユニットが混ざっちゃってるラジオネームですが。
『こんにちは。わたし合唱部に入ってるんですけど、同じパートの同級生の子が最近ピリピリしてるんです。ピリピリしてる理由が分かんなくて。原因不明のピリピリにはどうやって向き合っていけば良いんでしょうか?』
ははー。
完全なる人生相談ですねー、コレ。
わたし高校に入学したばかりだから、人生相談に対するアドバイスとか、まだ不得意なんですよね」
「タカムラちゃんは、女子同士の人間関係のお悩みとか、解決するの得意そうだけどねぇ」
「そうでもないですよー?」
「『原因不明のピリピリ』かぁ。なんか分かるかも」
「分かるっていうのは?」
「他人が苛立ってたり殺伐となってたりする理由が解らないってコト、案外多いと思うんだよね」
「わあ、さすが3年生。紅葉先輩、酸いも甘いも噛み分けてるって感じする」
「噛み分けてなんかないよぉ」
「アドバイスしてあげてくださいよーっ、先輩の口からっ」
「そだねー。
わたしから言えるコトはねえ……。
カラオケに行こう。
ピリピリしてるその子と2人だけでカラオケ行って、その子にしこたま歌わせて発散させたあとで、悩み事を話させるの」
「んーっ」
「良くないと思う? タカムラちゃんは」
「合唱部とカラオケって、ほんとに相性GOODですか?」
「BADなの?」
「他校の子なんですけど、わたしの知り合いで、合唱に打ち込んでいて、カラオケを蛇蝎(だかつ)のごとく嫌ってる女の子が居て……」
「どんな子!? プリ帳(ちょう)とかいま手元に無いの!? タカムラちゃん」
「プリ帳は放課後にしましょう、先輩。お便りコーナーに戻ってください」
「厳しい後輩ちゃんだな」
「光栄です」