【愛の◯◯】アシスタントには場馴れを

 

「こんにチワワ、チワワチワワ!!!

 5月終わり。週の最後の金曜お昼休み。皆さんいかがお過ごしかな?

 秋本萌音(あきもと モネ)です。

 放送部部長の中川紅葉(なかがわ もみじ)が『今週の金曜の担当はわたし』って告知してたみたいだけど、代わってもらっちゃった。

 もみじのファンの子には申し訳無いコトしちゃったね。

 でも放送部ナンバー2のわたしも、良かったら推していってちょーだいね。

 

 さて!!

 

 本日から、1年生ボーイに、アシスタントとして、番組内で喋ってもらいます!!

 というわけで、豊崎(トヨサキ)くん、タイトルコールおねがい!!」

 

「え、えっと。あーっと。そのっ。ら、『ランチタイムメガミックス』、金曜日」

 

「タイトルコールできたね〜! できるだけ偉いよ。

 もっとも、『いかにも校内放送のスタジオの空気に慣れていませんよ』的な感じの言い方だったけど。

 決めた、わたし。

 やっぱり場馴れよ、場馴れ。

 わたしが『ランチタイムメガミックス』担当する日は、トヨサキくんを必ずアシスタントとして侍(はべ)らせる」

「ちょ、ちょい待ってください」

「エッ、どーしたの1年ボーイ」

「『侍(はべ)らせる』って表現、どうなのかな……って、おれは」

「わたしに楯突くってか!!」

「そ……そんなに顔を近付けないで」

「『時間は待ってくれない』よねぇ!? 自己紹介タイム行くよ!! ホラっ、さっさと自己紹介するんだよ」

「まずは名前、ですか??」

「当たり前。後は自分で考えて」

「……。

 こ、こんちわっ。

 おれの名前は、豊崎三太(トヨサキ サンタ)です。三太って名前の由来は、姉が2人いるからというコトで。

 んーっと、放送部の中川部長に言わせると、変声期が終わり切ってないらしいんですが。

 おれの声を聴いて、皆さんはどう思われになられますか??」

「イケるじゃん!! イケるイケる。案外ちゃんと喋れてる。『どう思われになられますか』は崩壊した敬語だったけども」

「……ハイ」

「ここでトヨサキくんに『お便り』を5枚渡しておこう」

「エッどうして?」

「今からオープニングナンバーかけるから、かかってる間に眼を通して。『お便りコーナー』でキミにお便りを読ませるから」

「!? 無茶では!?」

「無茶じゃない。今から流すオープニングナンバー聴けば、無茶が無茶じゃ無くなる」

「どんな曲なんですか」

DREAMS COME TRUEの『何度でも』」

「げっ。物凄いナツメロ……」

そんなコト言うんだったら一生キミにスタジオで喋らせるよ!?

「と、突然怒りを沸騰させないでくださいよっ!!」