「今週も皆さまお疲れ様です。金曜日になりました。お昼休みの校内放送『ランチタイムメガミックス』でございます。パーソナリティはわたくし中川紅葉(なかがわ もみじ)――」
「――それと、高津(たかつ)かがみですよ~ん」
「いきなりわたしの喋りを遮らないでください、かがみセンパイ!!」
「怒っちゃダメだよん」
「あの。根本的に『おかしい』って思うんですけど」
「なにが?」
「この前卒業式ありましたよね? かがみセンパイ、卒業証書授与されましたよね? 卒業して在校生で無くなったのに、なんで学校に来てるんですか。制服も着てないし、どうやって校舎に入り込んで……」
「えー?? だれもスルーしてたよ。スルーしてたから、『問題無いんだな』って判断したんだけど」
「それでいいの!? スルーする側にも大きな問題があるじゃあないですか!?」
「もみじは、桐原高校の管理体制に不満?」
「不満です」
「いーじゃんいーじゃん、自由な校風残ってて。学生の自由なんて近年どんどん減ってきてるんだから」
「それは主に大学の『学生自治』の問題だと思うんですけど」
「そーねー、京都大学とかね♫」
「……センパイ」
「どーしたのん」
「わたし、センパイの進学する大学、言っていいですか」
「ええっ。もみじには個人情報保護って概念は無いの?」
「センパイがこのスタジオに乱入してきたのがいちばん悪いんですっ。個人情報を保護されなくても仕方無いっ」
「そんな悲しいコト言わないでよぉ。曲。曲を流そうよ、もみじ。オープニングナンバーだよっ」
「か、か、かってに曲を流そうとしないでください!!」
「本日のオープニングナンバーはぁ、フレデリックでぇ、『オドループ』~~」
× × ×
「いい曲だねぇ。……って、どうしてスマホを一生懸命操作してんの、もみじは?」
「他の放送部員に連絡してるんです。かがみセンパイをスタジオから引きずり出したいので」
「ふぅ~~ん」
「そんな下心アリアリの顔で見てこないでください!!」
「他の放送部員ってゆーと、萌音(モネ)とか?」
「なんでわかったの」
「あんたの代は、あんたとモネで、2枚看板じゃんっ☆」
「なんでどんどんギャルっぽいコトバや仕草になってきてるの!?」
「センパイにタメ口は控えめに」
「す……スネてもいいんですか、わたしが」
「なに? パーソナリティの職務放棄??」
「そういうことです!!! もうセンパイが独りで喋ったらどうなんですか!? というか、独りで勝手にやってよ!!!」
「投げやりな」
「……」
「コドモっぽいね。部長になったってゆーのに♫」
「……わたし、部長なんですよね。かがみセンパイは副部長止まりだったから、わたしの『勝ち』……」
「エッそこ勝ち負けあるの」
「あるんです」