【愛の◯◯】友チョコは貰えなかったけど、その代わり……。

 

「はいはいはいはい!!

 お昼休み突入ですよ!!

 元気!?

 みんな元気!?!?

 

 えーと、『ランチタイムメガミックス』やるわけなんですけど、今日はいつもの高津(たかつ)かがみに代わって、放送部部長の若松花(わかまつ はな)がパーソナリティを務めます。

 

 理由?

 かがみがパーソナリティじゃない、理由??

 

 かがみが降ろされたわけじゃないよ。

 番組内で問題発言したから降板とか、そういうわけじゃない。

 あのね……。

 わたしが、直訴(じきそ)したんだよ。

わたしにもパーソナリティやらせてよ』って。

 そしたら、かがみ、快(こころよ)く『いいよ』って言ってくれて。

 

 そういうわけで、今日はわたくし若松花が――喋ってるの。

 

 もしかすると今後、わたしがパーソナリティを務める日が、徐々に増えていくかもしれない。

 週のうち3日がかがみ、2日がわたし――っていう風にね。

 2枚看板パーソナリティってのも……悪くないと思う。

 

 ま、そんなことは追い追い考えるとして。

 今日の1曲だよ。

 槇原敬之で、『どんなときも。』」

 

× × ×

 

「――流しちゃった。

 30年以上前のヒット曲、流しちゃった。

 前任者の羽田先輩も、草葉の陰で喜んでるだろうな。

 彼、懐メロ流すの大好きだったし。

 

『どんなときも。』で良かったよね。

 同じ槇原敬之の曲でも、『冬がはじまるよ』だったら、台無しだった。

 暦の上では春なんだよ? 『冬がはじまるよ』なんて題名の曲流したら、聴いてる人みんなドン引きしちゃうよ。旧校舎の枯れた噴水も、凍りついてカチカチになっちゃう。

 そうなんだよ、もう春ですよ、皆さん。『三寒四温(さんかんしおん)』って言うじゃん?? 暦の上ではスプリング、スプリング。

 

 ――ところで、今週のビッグイベントといえば、バレンタインデーだ。

 わたしのクラスでも、急に距離感の近くなった男女が見受けられた。

 微笑ましい。

 

 わたし?

 

 わたしは、なんにも無かったよ、マジで。

 作らなかったし、貰わなかった。

 かがみが。

 かがみが、友(とも)チョコを、くれると思ってたんだけど。

 なんにもくれなかった、かがみ。

 肩透かし。

 ウチの部活の副部長は、友チョコ文化に価値を認めてないのかな!?

 そこんとこどうよ、副部長。

 副部長たる高津かがみさーーん。

 

 それとも、アレかな?

 もしや、かがみのヤツ、友チョコ文化どころじゃなかった……とか。

 友チョコ文化どころじゃなかった、ということは……。

 

 ヌフフ。

 

 おーえんしてるよー、かがみー。

 いくらでも、お背中、押してあげちゃうゾ!?」