「結崎(ゆいざき)、今日は短縮版よ」
「は!? 短縮版ってなんだよ、浅野」
「なんだっていいじゃないの」
「意味がわからん」
「短縮版は短縮版なのよ。短縮版なんだから、800文字程度」
「文字ってなんだ文字って。ますます意味がわからんくなってきたぞ」
「――卒業式が近づいてきたわよね」
「おいっ!」
「近づいてきたといっても、わたしとあなたの2人には無関係なんだけど」
「……無いんだな、ぼくの疑問に答える気は。勝手に話を進めやがって」
「進めるわよ」
「うぜぇ」
「あ~~っ、結崎が、子どもっぽい~~」
「浅野ォ!!」
× × ×
「あなたって本当に幼いわよね」
「そんなことはない」
「留年するし」
「りゅ、留年は、幼さとは関係ないだろ。それに、おまえだって留年するんだし」
「『おあいこ』だって言いたいの」
「置かれてる状況は変わらないよな」
「本当に変わらないのかしら?」
「どういうことだよ」
「わたしは、『5年生』で卒業するつもりだけど。あなたは、8年間ぐらい大学に居続けるつもりなんじゃないの?」
「で、デタラメをっ」
「繰り返すわよ。わたし、5年で卒業するから。置いていかれたくなかったら、単位を取りなさい」
「……」
「ヘンなタイミングで黙るのね」
「……」
「もしかして、単位の取りかた、わかんないの?」
× × ×
「読者の皆さま。結崎が完全にスネてしまったようです。結崎スネ夫くんです」
「るせぇ」
「おもしろい~~」
「面白がるなら、この部屋の外で面白がりやがれ」
「やだ」
「あ、アホンダラ」
「ねえねえ、『5年生』といえば、なんだけど。あなたの雑誌で、木尾士目の『五年生』って漫画を取り上げてたわよね?」
「……取り上げたが。それがなにか」
「あなたのマイナー漫画サルベージ能力だけは、ホメてあげてもいいと思うのよ」
「……『五年生』は、『マイナー漫画』じゃないと思う」
「どうしてそう思うの?」
「1800字かけて説明してやろうか」
「えっなんかコワい」