土曜日。
母校の文化祭に来た。
スポーツ新聞部の面々に会った。
ソラちゃん・ヒナちゃん・会津くんの2年生トリオ、1年生のときよりも大人びて見えた。
成長が垣間見られて嬉しい。
加賀くんは、変わりがなかった。
『まるで成長していない……』っていうわけでは、なかったんだけどね。
いくつになっても加賀くんは加賀くんなんだな。
それから、1年生部員の本宮なつきちゃんと初めて対面したんだけど、とっても背が高い女の子だった。
会津くんはもう少し彼女より高いんだけど…加賀くんは確実に、彼女よりは低かったな。
× × ×
『がんばれ加賀くん…』って、呟いてみたり、みなかったり。
――さて、とあるクラスの出し物の喫茶店を出て、ぶらぶらと校内を散策していた。
そしたら、とあるハンサムボーイが手持ち無沙汰そうに立っているのが、眼についた。
間違いない。
あれは、わたしと同期の濱野くんだ。
× × ×
「おーい、前代生徒会副会長!!」
叫ぶように言いながら、濱野くんの背後に立ってみる。
「び、びっくりした、あすかさんか」
ほんとーにビックリしたみたいなリアクションで、振り向く。
狼狽(うろた)え混じりのハンサムボーイに、
「来てたんだ」
と言う。
「そりゃ、来るさ」
「前代生徒会副会長としての、義務感?」
「まあ、それもある。…あしたも来るつもりだよ」
「すごいね」
「…別にすごくなんかないよ」
「謙遜はNG」
「……」
「ねえ。小野田さんは、きょうは??」
「きょうは来られないらしい。あしたは必ず来るって言ってたけど」
「へーっ」
……。
これを、言わなくっちゃな。
「ねえねえねえ、濱野くん」
「……ん?」
「徳山さん、誘わなかったの??」
狼狽(うろた)えが倍増しになる濱野くん……!
「――誘わないかあ。彼女、母校のイベントとか行ってるヒマ、なさそうだもんねえ」
「……知ってるんだろ、あすかさんは」
「『徳山さんが無事大学合格するまで、交際はお預け』」
「……カンペキに把握してるんだな、きみは」
「彼女はわたしの親友なんだよ!?」
「そ…そうみたい、だな」
「この前の日曜日、会ってきたよ。バーガーキングでいっしょにワッパー食べた」
「…いま知った」
「エーッ、LINEでのやり取りすら、滞(とどこお)ってる感じ?!」
「滞ってるわけでは、ないんだが」
濱野くんは、わざ~とらしく後頭部をポリポリと掻いて、
「LINEでやり取りするのは、月2回まで、というルールがあって」
「す、少なっ!!」
「…やっぱり、そう感じる??」
「少ないよ。少なすぎるよ」
月2回で半年だと、12回しかやり取りできないじゃん。
それは、どーなのかなー。
いくら交際を自粛してるからって。
「ちょっと潔癖すぎなんじゃないの!? 濱野くん」
「け、潔癖ってなんだよ」
「SNSの上ぐらい、もう少し彼女とベッタリしたっていいじゃん。――そう思ったりしないわけ?!」
「ベッタリ……」
「彼女も寂しくなっちゃうよ。それはマズいよ」
「……。
考え直してみるか」
「いまこの瞬間から、変えなきゃ、意識」
「き、厳しいね」
「徳山さんに、もっとちゃんと向き合ってあげて?」
説教モードの真っ最中に、わたしのスマホがピロリン♫ と通知音を鳴らした。
画面を確認してみるわたし。
確認してから、
「――『わたしたち』みたいに、毎日LINEを交換し合う『関係』のほうが、自然だと思うんだけど。どう?」
「いや――、どう、っていうより」
「え、どーかしたの」
「あすかさん――彼氏、できたんだ」
「――珍しいね。きみがうっかりミスするなんて」
……濱野くんのバカ。
ついでにミヤジも、バカ。
なんにも……言えなくなっちゃったじゃんっ。