「利比古くん」
「なんですかあすかさん」
「きょうは、短縮版を目指していくよ」
「め、目指していくとは」
「だーかーらー、いつもよりも短く、具体的には文字数1000文字程度におさめていく、ってこと」
「1000文字ですか!? ずいぶん短くないですか。短縮版だからといって、手抜き――」
「それ以上はダメだよ、利比古くん」
「ええっ、それ以上はダメ、って」
「――短くまとめるのも、『技術』じゃん?」
「……腑に落ちませんが」
「腑に落ちて」
× × ×
「あすかさん、今月が推薦入試ですよね?」
「だよ」
「正直――あんまり、忙しそうに見えないんですけど」
「わたしが?」
「はい。あすかさんが……」
「忙しいよ、それなりに」
「試験対策とか、ほんとうにしてるんですか……?」
「してないわけないじゃん」
「たとえば」
「面接練習。学校で、面接練習やってるの」
「へぇ……」
「けっこうたいへんなんだよ? 面接練習。少なからずダメ出しされるし」
「ダメ出し、ですか」
「作文書くのとは違うスキル、だからね」
「――ダメ出しされると、焦りませんか?」
「あ~、それはないかな。むしろ、本番に向けてのスキルアップなんだと思って、前向きに」
「……図太いですね、あすかさんは」
「それ……ホメてるつもりなの? 利比古くん」
「は、ハイ」
「怖いもの知らずだな~」
「え!?」
「図太いわたしと、怖いもの知らずなあなた。……案外似てるよね」
「似てる……?」
「――まあ、もうちょっと、ことばを『オブラートに包む』ことも、覚えたほうがいいと思うよ」
「反省します……あすかさん」
「くよくよしちゃってる?」
「……し始めちゃってます」
「あんまりくよくよしすぎるのもイヤだよ、わたしは」
「……ですよね」
「……おねーさんだって、弟がしょげてるのを見たら、心苦しくなっちゃうと思う」
「はい」
「おねーさんといえば」
「はい?」
「おねーさんの誕生日、近いよね」
「――近いです。11月14日、あと約1週間」
「迫ってるじゃん。どうやって祝うの? 弟のあなたは」
「ふつうに、プレゼントをあげて――」
「それだけで、いいのかな」
「ほかに……なにができるんでしょうか」
「そうねぇ」
「姉やあすかさんと比べて……これといった特技もないし」
「ホントだよね」
「……意地でもぼくを立てませんよね、あすかさんは」
「評価されたいんだったら、なにか特技を習得したら? おねーさんに喜ばれるような」
「た、誕生日はあと約1週間後なのに、特技をつけろと言われても……」
「いますぐの話じゃないよっ! 誕生日に向けて特技つけようとしても、そりゃー付け焼き刃になっちゃうよっ」
「……たしかに」
「がんばって特技つけなよ、いくら時間かかったっていいんだから。ファイトファイト」
「……がんばります、あすかさんを、ギャフンと言わせられるように」
「ずいぶん攻撃的だね……」