こんにちは! アカ子です!
……、
1ヶ月ぶりのごぶさた、ですか?
いいえ、別に「もっと出番がほしい」というわけでは、全然ないですから、
ないんですからね!!
気を取り直して、きょうは2月14日。
もう、何の日かは、おわかりですよね。
それで、わたしはーー。
ハルくんのサッカー部の練習場
ーー来てしまいました。
でも、マオさんが見当たらない。
その代わり、いつもマオさんが立っていたところに、別の女の子が立っていて、グラウンドに檄(ゲキ)を飛ばしている。
「(こちらに気付いて)
あ! アカ子さん、ですよね?」
「Σ(・・;)」
× × ×
「わたし四日市(よっかいち)ミカっていいます。
マオさんの後任です」
「後任…ってことは、マネージャーの長(おさ)ですか?」
「そんな感じです。
マネージャーも代替わりするので」
ということは、いま、わたしと同じ、2年生。
「四日市さん。
あの……本来部外者なんですけど……今後ともよろしくおねがいします。
(ぺこり、と頭を下げる)」
「そんなにかしこまらなくても~~!!」
「わたし、そんなにかしこまってますか?」
「はい、かしこまってます、かしこま状態です」
「か、かしこま状態!?」
「かしこま!」
・ここからはタメ口で
「アカ子さん、きょうここにわざわざ来たってことは、『そういうこと』でいいよね?」
「ええ。ハルくんにーー、」
「わたしもハルにチョコつくってきた」
「お~い?
顔が真っ青だぞ~??
帰ってこ~い??」
「(さりげなく手ぐしで髪をならして)
だ、だしぬけにさっきみたいなこと言われたら、誰だって顔が真っ青になると思うんだけれど」
「まっさかあww」
「まさか、じゃなくて」
「アカ子さんもしかして『ウブ』ってやつ?w」
「ーーーー、
そ、そうね、『初めての心』って書いて『初心(うぶ)』だから、そうともいえるかもしれないわね」
「『初めての心』ーー。
初恋だったんだ、アカ子さん」
「ーー何も言えないってことは、ビンゴなんだね。
たしかにわたしもハルにチョコあげるんだけど、
『義理チョコ』ってことば、知らない?ww」
「ーー知らなかったわ。初めて知った」
「……どうして今度は四日市さんのほうが黙っちゃうのよ」
× × ×
@帰り道 with ハルくん
「さすがに今回は、練習場の入り口で出待ち、なんて非常識なことはしなかったんだな。
学習、できてる。
えらいぞ」
「子どもじゃないんだから。」
「えらい、えらい」
「わたし、あなたの娘じゃないんですけどっ!
わたしは……あなたの……」
(その先が言えず、口ごもってしまう)
(ハルくんも、バツが悪そうに、沈黙する)
「わたしは、あなたの、
…じゃなくってっ、
わたしは!
あなた『に』!
あげたいものがあって…ここにきたの」
「知ってる」
・カバンの中から、チョコを取り出そうとする。
なぜか、なかなかチョコが見つからない。
「ミカと会ったんだろ」
「(一心不乱にチョコを探しながら)四日市さん?」
「そ。四日市ミカ。
騒々しいやつだけど、仲良くしてやってくれ」
「わかったわ。あなたの頼みなら。
ところでっ、
わたしのチョコが、見つからないの」
「?」
「だ、
か、
ら、
!
わたしがあなたにあげたいチョコが、
チョコがカバンに見当たらないの!!」
「学校の教室に置いてきたとか」
「そんなばかな」
「朝、自分の部屋に置いてきてしまったとか」
「最初から持ってこなかったってこと!?
そんなはずないわ」
「ちゃんと確かめた?」
「………………………」
でも、
なんどカバンの中をかき回しても、
見当たらない、
ない、
ない。
徒労?
無駄な努力?
手作りが、水の泡……
ここまで来て、
バレンタインがわたしを見はなした。
絶望。
「(立ち止まって)ハルくん……、
つかれちゃった、
ぐったりきちゃった」
「……泣いてるの?
アカ子」
「(ハルくんの胸をコツン、と叩いて)
バカっ、
誰だって泣くに決まってるでしょ」
・人目かまわず、泣きながらハルくんの胸にすがりつく
・そして人目かまわず、ハルくんの胸を乱打する
「(泣き疲れ、叩き疲れて)
どうすればいいのよ。
どうしようもないのに、どうしたらいいの」
「…自転車」
「自転車がどうかしたの」
「…ここからきみんちまで、自転車でどのくらいかかる」
「考えたこともないわよっ」
「じゃあ、とにかく行こうよ、きみんちに。
考えてるヒマ、ないよ。
きみんちに行けば、チョコが部屋に置いたままになってるかもしれない」
「二人乗り…?」
「しがみついてれば大丈夫だ」
「…部屋に、
部屋になかったらどうするの、
チョコ」
「作ればいいだろ。おれも手伝うよ。蜜柑さんに教えてもらう」
「むちゃくちゃよ、あなた」
「ほら、乗って」
「むちゃくちゃね、ほんとうに、あなた、
『おれも手伝う』なんて、バレンタインをなんだと思ってるのかしら…。
振り落とさないでね。
わたしも、絶対に離さないから」