【愛の◯◯】呼び捨ては決定力

自室にて

 

「すーっ」

「はーっ」

「すーっ」

「はーっ」

「すーっ、」

 

 

『何、スマホを持ちながら、深呼吸してるんですか? お嬢さま』

 

「なんでノックしないで入ってくるのよっ蜜柑💢」

「(スケベ心丸出しの顔になって)ーーあっ、もしかしてw」

「もしかして、じゃないわよ。

 ーーわかってるんでしょう?

 誰に電話するのか。

 わかってるなら、とっとと部屋から出ていってちょうだい」

 

 

× × ×

 

「(-_-;)…蜜柑を部屋から追い出すのに30分かかった💢

 

 ……、

 さて。」

 

 

 

『プルルルルルルル…ガチャ』

 

『もしもし。』

 

「ハルくん、こんばんは。」

 

『こんばんは、アカ子さん

 

「ーーちょっと待ちなさいハルくん」

『へ?』

「憶えてるわよね?

 おとといの日曜、公園で会ったとき、

 わたし、なんて言ったかしら?」

『いろんなこと言ってたじゃんw』

そーじゃなくってっ!!

 

『ど、どしたのアカ子さん

「…、

 また『さん』付けにした。

 

 怒るわよ?

 まったくもう。」

 

『あー、あー、

呼び捨てにしてくれ』ってきみ、

 言ったんだっけか。』

 

この鈍感…。

口には出さないけれど、

この鈍感!

 

『でもなんで?

 なんで呼び捨てがいいの?』

「そ、

 それも説明したでしょーがっ!!

 

× × ×

 

『たしかに、さん付けだとよそよそしい感じはするよな。

 ーー『アカちゃん』じゃ、ダメなのか?』

 

「……、

 愛ちゃんは、『アカちゃん』って呼んでるけど、あなたには『アカちゃん』って呼ばれたくないの」

『なんじゃそりゃw』

「あなたには呼び捨てにしてほしいの。

 ーー『アカ子』、って。」

『でもおれには『くん』付けのままなんだww

 

 わがままだなあ、

 アカ子は。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お~い?

 アカ子?』

 

「……わがままだって言われたのは、うれしくない。

 だけど、呼び捨てにされたのは、うれしい。」

『女の子を呼び捨てにするなんて、ぜんぜん慣れないなあ。

 ヘンなカンジだよ。』

慣れて。

 

× × ×

 

「あなたは『押しの強さ』が足らないのよ。

 

 キャッチボールのときも、一方的にわたしのほうが攻めていたじゃないの

『それ、自分で言う?w』

「…そういう、飄々(ひょうひょう)としたところが、ハルくんらしいといえばらしいんだけど、

 だけどね、

 わたしを呼び捨てにして、もっと『押し』を強くしてほしい。

 

 決定力よ、決定力っ

 

『ーーで、アカ子さんの用件は?』

また『さん』付けしたっ💢

『あーごめんごめんw

 

 それでアカ子、きみの用件は?』

 

「…、

 こんど、試合なんでしょう。

 もちろん応援に行くから。

 ーーーー」

 

 

 

× × ×

 

『おじょーさまー、おフロ入っちゃったらどうですかーっ』

 

『おじょーさまー?』

 

<スッ

 

『?

 メモ用紙??

 

 なんですかこの飛び道具は』

 

 

 

 

 

もう少しだけ待って

 

 蜜柑にこんな顔、

 見せられない

 

 わたしが落ちつくのを、

 待って