昼
『いってきまーす』
「いってらっしゃ~い、おねーさん」
× × ×
「愛ちゃん、午後から学校があるの?
たいへんだねえ」
「こんにちは流さん」
「あすかちゃん、コーヒーがあるよ。」
「あ、ではいただきます」
× × ×
「わたしたちの高校は甘いので休校になりましたが、名門はやっぱり違いますね」
「ハハ…台風だと、台風が来たあとの交通機関の乱れとかもあるからね」
「それよりもブログの事情で休校な気がします」
「?」
「それは…また別の話で、どうでもいいんですけど……」
「んっ? どうしたのあすかちゃん」
「あの……さいきんわたしなんかイライラしてたことがあって……、それで流さんにキツい態度をとってしまったことがあって……、その、吉本ばななのことで、流さんに八つ当たりみたいになったりしてしまって、
ほんとーーすみませんでした」
「あ~いいんだよいいんだよ。人間誰しもそういうときはあるさ」
「わたしーーこんな自分を変えたいんです。
だから、新しいことにチャレンジしようと思って」
「どんな?」
「えーっと、
えーっとですね、
それは……」
・兄が降りてきた
「流さん、こいつバンドやるんだってよ」
「やめてよお兄ちゃん! バラさないでよっ」
「バンドって、ロックバンド?」
「そう! しかもなんとギター! 花形だっw」
「ぐぐぐぐぐぐ」
「でもあすかちゃん、楽器の演奏ってーー」
「シロウトだよこいつは」
「お兄ちゃんだって!」
(やれやれ、しょうがないなあ、といった様子のバカ兄)
「練習して、
練習してうまくなるんだもん、
超絶技巧でお兄ちゃんなんかコテンパンにしてやるんだもん、」
「でもさぁ」
「なによ💢」
「そもそも練習するためのギターはどうするんだ」
「(・_・;)と、とりあえず、奈美…メンバーのを、借りて練習……」
「それじゃあなかなかすぐには上達せんなあ」
「上達するもん。
上達して、新しい自分に…なりたい」
「アツマ、おまえがバイトで稼いだ金でギターを買ってやれないのか?」
「おれのバイト代は別の目的で使うので」
「薄情だなあ」
「あすかのために取っておくんだよ」
「え、え、それ、お兄ちゃんどういうこと」
「…おまえもいろいろ背負(しょ)ってるからさ」
「…なぐさめてあげたい、ってこと…?!
同情してくれるのはうれしいけど、
あんまり同情されると、重い…」
「重いってなんだよ」
「お兄ちゃんに過剰によりかかっちゃう」
「わかれよ。
きょうだいだろ?
あすかがつらいのは、おれもつらい。
だからーー」
「わたしもう泣かないもんっ!!」
「ーー落ちつけよ、あすかぁ」
「(立ち上がって)はい、2人ともそこまで」
『……』
「ギターのお金。
ぼくが出してあげるよ。
予算しだいで、どこまで出せるかわからないけど。
これまでのバイト代も貯まってるしね、随分w」
「わ、わるいです、わたしのために、全額!?
流さんどうしてーー」
「あすか、こういう時は、素直にもらっておくもんじゃないのか?」
「お、お兄ちゃんまで!」
『むくり』
「あ、母さん起きた」
「おはようアツマ。
あすかも、流くんも、おはよう。」
(気持ちよさそうにソファで背伸びするお母さん)
「よ~し。
ギターのお金、わたしと流くんで半持ちしよう」
「(゜o゜; えっ、お母さん、今の話、聞こえてたの…!?」