オッス! おれ戸部アツマ。
妹が失恋したりギター始めたり、いろんなことが起こっているんだけど、
なんと!
まだ夏休みです!!
なぜかって大学生だから。
大学生活って、素晴らしいっ!!
とはいえ、
夏休みのバイトは継続中なので、
今日もせっせと労働。
葉山に紹介されたバイトで、
『リュクサンブール』という喫茶店のホールスタッフをしている。
ここは葉山がよく通いつけているという喫茶店で、その影響で葉山の知人もよくやって来たりするのだ。
ところがーー。
・テーブルを拭いていた
♫カランカラン♫
「いらっしゃいませ~、
お好きなお席にーーって、
(;´Д`)!!!!!!!」
「グッドアフタヌーン戸部くん」
「(;´Д`)ぐっ……、
ぐっ、グッダフタヌゥン」
「なんで無駄に英語っぽく挨拶するのw」
「(;;;´Д`)星崎、おまえ、どうしてここを!?」
「風のうわさ。
ほらほら、接客しなきゃだめでしょ、そんな制服着てるひとはw」
星崎。
星崎姫(ほしざき ひめ)。
同じ大学、同じ文学部、同じ学年の女子。
おれの弁当にちょっかい入れたり、
おれの邸(いえ)にいきなり突撃してきたり、
なにを考えているのか、皆目見当がつかない女子大生だ。
なぜかエンカウントすることが多い星崎。
藤村とは違った意味で、腐れ縁みたいな感じになりそうなにおいがプンプンしている。
「(お冷やを置いて)ご注文はお決まりでしょうか?」
「マニュアル通りだね」
(うるせえ……)
「ねえ、戸部くんってさ、
(とても嬉しそうに)女の子になつかれるタイプじゃない?」
(うるせえうるせえうるせえうるせえ)
「(泣きそうな声になるのを自覚しながら)後ほどおうかがいします……」
× × ×
「ちくしょうあのバカ」
同僚のお兄さん「お、戸部が悪態をつくとは。めずらしいww」
「す、すんません、
あのっ……おれの知り合いがたくさんやって来て、迷惑じゃないですか?」
同僚のお兄さん「ぜんぜんw 楽しいしw」
「ええっ」
同僚のお姉さん「うん。なんかシチュエーション・コメディみたいで」
「(;´д`)トホホ…」
同僚のお姉さん「ねえいま来たあの娘(こ)かわいいね」
「星崎が? 果たしてそうでしょうか」
同僚のお姉さん「あの娘もかわいいよね」
「なんで『も』を強調するんですか!」
同僚のお姉さん「戸部くんってモテるんだね」
「(悄然として)そんなことないです……」
同僚のお姉さん「ほらほらあの娘、手を上げて呼んでるよ」
ったく。
ギャルゲー(←やったことないけど)の主人公じゃないんだぞ。
それっぽく見えたとしても、おれの責任じゃねえ。
星崎。
こいつ、表情がかっちりしてて、悪くいえば冷徹な部分があるが、良く言えば泰然自若としている。
表情を崩さない。
ちょっとやそっとのことで、挙動がおかしくならない。
ーー星崎は、どうなった場合に、あわてるんだろうか。
「お決まりでしょうか。」
「うん。ストレートティー、ホットでくださーい」
「紅茶のほうがお好きですか?」
「そんなことないよぉ。コーヒーも飲むけど、今日の気分はストレートティーなの」
「左様ですか。
かしこまりました、
それではお待ちください、
姫。」
「ーーと、べ、く、ん、
いま、わたしのこと、
ひめ、
って」
固まった。
星崎が固まった。
下の名前『姫』で呼んだ途端、固まった。
よっしゃー。
星崎の弱点発覚。
グッジョブ、おれ。
× × ×
「ストレートティーをお持ちしました」
「……か、からかってるのかな、とべくんそんなにからかいじょうずだっけ、からかってるんじゃないんだよね、でもからかってる、あ、あれこんがらかってる、こんがらかっちゃってるなーわたし……なんで、したのなまえいきなりいっちゃうかなー、びっくりするじゃん、びっくりしたなもーだよ、なんで、どうして、どうしてどうして『姫』なんていうの、はじめてだよねこんなの、たしかにわたし『姫』だけど、リボンなんかつけてないよ、ふるいからちょっとこのネタはとべくんわからないかなー、なーんて、でもど、ど、ど、どして?」
「冷めないうちにお召し上がりください」