おれ、戸部アツマ。
大学1年生。
好きなはなまるうどんのメニューは、
おろししょうゆの冷(ひや)。
ところで、きょうの昼飯は、はなまるうどんではなく、
作ってもらった弁当。
えーっと、
「だれに」作ってもらったか、は、
その……お察しください。
ラウンジのすみっこ
「ふーっ、やっと弁当食えるぞお」
『戸部くん?』
「ギョッ」
まずい。
同学年の知り合いの女子に見つかってしまった。
星崎姫(ほしざき ひめ)。
おなじ文学部で、
英語の講義も、ドイツ語の講義も、
おんなじクラス。
それに、とっているほかの講義も、
なにかとかぶっていたりするのだ。
「戸部くんきょう弁当なんだ。
……、
戸部くんが自分で作ったようには見えない。
だれかに作ってもらったんだ、弁当。」
「(^^; そ、それはどうかな」
「いっしょに住んでる恋人でもいるの?」
「(゚Д゚;)うわああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
(ラウンジじゅうの注目を浴びる)
「(とりすまして)いいじゃん、大学生なんだし、そういうことも、あるでしょうに」
「星崎、『そういうこと』ってお前、ど、ど、ど、」
「同棲なの?」
「(゚Д゚;)ちがーう!!」
「……戸部くん、ドイツ語のときも思ってたけど、声大きいね」
「(-_-;)かならずしもそうとはかぎらなーい」
「居候?」
「(食べながら)ご両親の都合でな」
「海外転勤、とか?」
「(箸を止めて)なんでそんなにカンがいいかなあ」
「高校生? 中学生?」
「年下っていう前提かいな…まあその前提、合ってるけど。
高校生だよ、2年生」
「よかった、歳があんまり離れてなくって。
--でも、年下好きだったんだ」
「そんなことねーよ……、
だけど、そう見られても、仕方ないのかな」
「自問自答しはじめちゃったw」
× × ×
ラチがあかないので、
大学から少し離れたルノ◯ールに移動して、
諸事情を星崎に打ち明けた。
「じゃあ、告白したのは、愛ちゃんのほうからだったのね」
bakhtin19880823.hatenadiary.jp
↑参考VTR
「まぁ、なりゆきまかせ、みたいなとこも、あったんだけどな」
「戸部くんからも『好き』って言ったらいいじゃないの」
「…………好きだよ?」
「なんでわたしに向かって言うのw」
「orz」
「恥ずかしいうえに、タイミングっていう厄介な、代物がだな」
「じゃあ、さりげなく、でいいじゃないの」
「たしかにーー」
× × ×
ゆうがた
愛からLINEがきた
『どうだった? お弁当』
『とても美味かった。
特に、卵焼きが最高。
タコさんウィンナーも、これまでにない趣向で◎。
大好きだよ、愛。』
ーーこの文面で、送信一歩手前まで行ったのだが、
さすがに自分でたまらなく恥ずかしくなり、
踏みとどまった、
のだが……。
愛の返信
『どうしてそんな脈絡のないことば付け加えるの!?』
おれの返信
『唐突だったのは認める。
悪いな、感情表現が苦手で。
でも、うれしかっただろ?』
愛の返信
『うれしくないわけないじゃない!』
『でも、なんでそんなにぶっきらぼうなのかなあ、アツマくんはw』
……おれは、
『あっかんべー』のスタンプを、
黙って送り付けてやった。