都内某書店
「ふー、岩波文庫、収穫なし、っと」
「…………」
「………あれ!?」
「戸部くん!
戸部くんじゃないの」
「(-_-;)いかにも」
「岩波文庫に何の用があるの?」
「( ;∀;)ひでぇ」
「T・S・エリオットの『荒地』?
なんでまた」
「いや、じつは、大学入ったら、イギリス文学を学ぼうと思って。
で、西脇順三郎っていう詩人の詩を読んで、かれがエリオットっていう詩人の『荒地』っていう詩を翻訳してるってーー」
「西脇……好きなの?」
「お、おれは好きだけど……愛の仲間内では西脇、評判悪い…って」
「わたしは好きだよ」
「マジで!」
「『西脇が好き』って言ったらヤな思いしたこともあるけどねん♫」
「あ(;´Д`)」
「訳者が西脇順三郎じゃない」
「西脇訳の『荒地』は、古本屋じゃないとなかなかねえ。
新潮社が出してた『世界詩人全集』のエリオットの巻に、西脇が訳した『荒地』が入ってるから、戸部くんちに郵送してあげるよ、わたし」
「えっ!? いいの?」
「いいよぉ~」
「ねえ、エリオットは、またこんどにして、別の詩人を買ってみない?」
「詩人を『買う』か。
いいセンスしてんな、あんたw」
「( ´ー`)文字を書くことからしておっくうだけどね」
「……へ??」
文芸書コーナー
「あった。あるかどうか微妙だったけど。
やるじゃないの、この書店も。
たまには」
「(^_^;)ひとこと余計な気がw」
「オーデンは、イギリス生まれだけど、アメリカに移住して、帰化するのね。
ちなみにエリオットは、アメリカ生まれだけど、イギリスに帰化したの」
「詳しいんだな、あんた」
「それほどでも」
「やっぱ英語を使う国って多いから、イギリスだけ見てちゃあだめなんだな。
もっと広いくくりじゃないと」
「それはそうでしょうね。至近距離にしたって、アイルランドとイギリスの複雑な関係とかーーほら、世界史Bでやるでしょ? アイルランドの諸事情」
「orzそこが世界史Bでいちばんわからないんだ…」
「(;^o^)あー」
「ところでーー」
「なあに? 戸部くん」
「その……。
呼び捨てにしていいか?
葉山『さん』付けじゃなくて、『葉山』で」
「Σ(@_@;)」
わたしはーーーーーー、
思わず、
首をタテに振っていた。