【愛の〇〇】八木先輩、荒れる

金曜

期末テストの終わったあと

 

先生バカっ

 

──そう捨て台詞を吐いて、

わたしは、進路指導室から逃げ出した。

 

自宅のマンション。

じぶんの部屋に駆け込む。

 

『こんなもの、

    こんなもの、

    こんなものっ!!

 

制服の上着カッターシャツを脱ぎ、ベッドに叩きつけた。

はずみでカッターシャツのボタンが1個だけちぎれて取れた。

 

わたしは胸に手を当てた。

わたしの脈拍数、絶賛暴騰中。

 

それから、わたしの胸──というより乳房……の小ささを思い知り、もっと不愉快な気分になった。

 

姿見を振り向く。

小泉も。

羽田さんが居候してる戸部くんの妹のあすかちゃんも。

『胸の大きい小さいなんて気にしないよ』って子、けっこういるし、

中学生ならまだしも高校卒業間際になって、そんなこと気にしたって──、と、ひとは言うだろう。

でも、小泉もあすかちゃんもいいよね、

女としての魅力があって。

 

モテそう💢

 

あーもう!

葉山ならわかってくれるよね葉山なら!

3年貧乳組!!

 

あまりにもムシャクシャしているので、わたしはわたしの小さいブラジャーのカップを鷲掴みした。

薄いグレーの無地……、

生地が、大人の女の人がつけるのみたく薄い生地じゃなくて、ゴワゴワしてる。

傍(はた)から見たら、スポーツブラに見えるかもしれない。

 

わたし、イライラをぶつけることのできる人間が不在のときは、自分のファッションに『当たる』の。

ブラジャーだったり、髪留めだったり、靴下だったり……。

 

自分で自分の胸のブラジャーをしわくちゃにしてもどうしようもないので、とりあえず着替えることにした。

どんな上着を重ね着するのかに30分以上かかった。だれも気にしないのに。

寒いのでデニムの長ズボンを履いたが、履くのとベルトで締めるのでもたつき、履き終わった瞬間にストレスが沸点に達し、ベッドにボーンとダイヴした。

 

『葉山、どうしてるかな。

   葉山。いまの葉山だったら、わたしの愚痴、聴いてくれるかな』

 

 

♪着メロ(工藤静香の曲)♪

 

『( ゚д゚)え、え、え、

   伊吹先生

   から着信──』

 

いつ番号交換したっけ?

したような記憶もある。