「(´⊙⊙`)パチッ」
あー、
起きちゃった。
6時。
いつもより、早いな。
PCを立ちあげる
東〇荘にログイン
「どんだけ暇人多いのよ……wこんな時間に」
「さてさてさて。
一打目に切るのは、
いつも字牌以外。」
「あ、ちくしょう」
「ログアウトしやがったなコンニャロ、
卓に迷惑かけやがって~」
『(o_ _)o…ムクリ』
「あ、羽田さん」
が起きる。
回想
前夜
羽田さんは親の家事に全面的に協力してくれた。
海外に家族がいる羽田さん。
戸部くん家(ち)に居候の身分で、親御さんが恋しかったのだろう。
とくに生き生きとしていたのは、わたしのおとうさんと会話しているときで……。
「わたしのおとうさん、そんなに気に入ったの」
「はい💛」
「なんか羽田さん、じぶんのおとうさんと接してるみたいで」
「わたし、わたしのおとうさんをこの世界の誰よりも尊敬してるんです」
「へ、へぇ」
なるほど──、
わたし、おとうさんもおかあさんも、
尊敬できてるかしら?
自信ない。
思春期に、わたしがおかしくなって、
ずいぶん両親を困らせた。
『つらい過去だからひとりでに思い出す』は、ごもっとも。
でもわたしはわたしの暗い過去に、そっとフタをして──調子が悪くなければ、出てこない。
羽田さん、おとうさんと戸部くんと、どっちのほうがより好きなんだろうかw
わたしもわたしのおとうさんと、もっと会話してみるかな。
大学行かないんだったら、今後はそういう機会も増えて、話す時間もできる。
「羽田さんは、羽田さんのおとうさんと戸部くんだったら、どっち選ぶ?」
「Σ(゚д゚;)えっ」
ふたたび今朝
東〇荘を閉じ、テーブルで羽田さんとわたしは向かい合っている。
わたし「きゅーきょくのせんたくね」
羽田さん「選べない、選べないです」
わたし「以前だったら──」
羽田さん「おとうさんって即答してました。でも、でも、さいきんアツマくんがおとうさんみたいで。へんな言い方なのはわかってるんですけど」
わたし「戸部くんがおとうさんなの?」
羽田さん「明日美子さん(戸部くん母)はおかあさん、流(ながる)さん(もうひとりの居候の大学生)はおにいさん、って、お邸(やしき)の人間をあてはめていったら」
わたし「あすかちゃん(戸部くん妹)は?」
羽田さん「おねえさんなんです」
わたし「ゴーインだな…w
で、戸部くんがおとうさんになっちゃうんだ」
羽田さん「守ってくれるから……」
わたし「優しいんだね」
羽田さん「……そこらへんが、頼りになって、わたしに誠実な態度でいつも接してくれた、おとうさんを思い出して、おとうさんの温かさもアツマくんに……やだ、なにいってんだろ」
羽田さん「ま、欠点はおとうさんより圧倒的に多いですけど」
そう言って羽田さんは笑った。
一点の曇りもない笑顔だった。
リビング
わたし「羽田さん朝ごはん作ってくれるらしいよ」
おとうさん「働かせてばっかりでよくないなw」
わたし「でも、どうしても『やる!』って聞かなくて」
おとうさんが、読んでいた新聞を置いた。
いや、新聞だと思ったけど、これ『週刊読書人』だ。
おとうさん「愛さんは、本が好きなんだなあ。フォークナーの話をし出すと止まらなかった」
わたし「ヴァージニア・ウルフも」
おとうさん「ジェーン・オースティンも」
おとうさん「金井美恵子やらタブッキやらクッツェーやらケルト神話やらフォークナーやら、挙句の果てにハーバーマスなんて名前もw」
わたし「あ、フォークナーって2回言った」
おとうさん「(⊙ヮ⊙;)あっ」
わたし「ねぇ、おとーさん」
おとうさん「なんだい、むつみ。」
わたし「わたし、おとーさんとも、本の話がしたいなー💛」
おとうさん「そうかあー、いままであんましそんな話しなかったっけ」
わたし「新宿の紀伊國屋(書店)に行かない、今度? 帰りにご飯食べてコーヒーでも飲みながら」
おとうさん「おまえ、新宿は、うるさくないか?」
わたし「大丈夫だよ、最悪の時期は脱したから」
おとうさん「じゃあ、土日にでも行くかあ。年末に近くなると寒すぎるからなー」
わたし「やったぁ!」
おとうさん「ところでさいきんおまえはなに読んでるんだい」
わたし「山口誓子と島木赤彦」
おとうさん「(´ヮ`;)さっきは小説家の名前ばっかし出てきたんだけどな……w」