「お兄ちゃん、今日は短縮版だよ」
「おー」
「800字から900字で」
「うぉー」
「なにその反応!?」
× × ×
「えーと状況説明。
おれは実家の邸(いえ)に『プチ帰省』中。
そんでもって妹のあすかと仲良く朝飯を食っており――」
「ちょっと待ってよお兄ちゃん」
「へ」
「『仲良く』ってなに『仲良く』って」
「だって、おれとおまえ、仲良し兄妹じゃん?」
「んなっ」
「だろ?」
「あ……兄貴の笑い顔がキモチワルイ」
「おいおい」
「朝食中にそんなにキモくならないで」
「おいおいおいおい~~」
「食べるのに集中したらどうなの変態兄貴!?」
「や、変態とは」
× × ×
「それにしても、おまえ、焼き海苔に醤油かよ」
「はぃ!?!? どーゆう意味」
「知ってるか、焼き海苔って高級食材なんだぞ。朝っぱらから焼き海苔に醤油でご飯食うとは、ずいぶんお嬢さまなこった」
「あのねえ。『朝っぱらから』って言うけど、朝ご飯『だから』焼き海苔に醤油なんでしょ」
「ハイソサエティだなあ」
「バカ!!! なにがハイソサエティだか」
「『わたしがお嬢さまなら兄貴だってお坊っちゃまでしょ』とか言わんでくれよ」
「……」
「な? それぐらいの慎みはあるよな」
「……味付け海苔」
「お兄ちゃんは、味付け海苔を、お皿に盛り過ぎ」
「エーッ盛り過ぎじゃないって」
「味付け海苔の容れ物があっという間に空(カラ)になっちゃうよ。矢継ぎ早に味海苔の容れ物カラッポにしていくのは良くないと思うよ。海苔も無限にあるわけじゃないのに」
「味海苔を無駄遣いするなってコトか」
「それともう1つ。お兄ちゃん、何杯ご飯お代わりする気? もう5回ぐらいダイニングテーブルと炊飯器を行ったり来たりしてるよね」
「ダメなの」
「限度がある」
「大目に見てくれよ~。連日の激務で腹が減り放題なんだよ、エネルギーを蓄えるには現在(いま)しか無いんだ」
「うそつき。」
「え?」
「おととい、シフトが入ってないからって、母校の大学の学生会館に行ってたんでしょ。そんな余裕があるのなら、『激務』なワケ無いでしょーが!!」
「なななっ、あすかがなぜそれを知ってる!?」
「わたしの地獄耳」
「いや自分で自分のこと『地獄耳』とか普通言わないよね」