ゴールデンウィーク突入。
で、宿題がどっさりと出た。
名門進学校ゆえの宿命か。
よーーーし。
がんばっちゃうぞ~~~、わたし!!
× × ×
で、午前中からひたすら宿題に取り組んでいたわけだが、ちょっとだけ疲れちゃった。
ちょっとだけ、ちょっとだけ……と、ベッドに横になるわたし。
ところで5月頭とは思えない暑さで、ついにわたしの部屋もエアコンを導入していた。
冷房でひんやりとなったお布団の感触が、心地よい。
心地よく――、
心地良すぎて、
こう、ウトウトと、
ウトウトウトウト……。
× × ×
『愛』
『おとーさん、おとーさんだ!!
おとーさん、かたぐるまして!!』
『しょうがないなあ愛は。
甘えんぼさんなんだから』
『え~~~、いいでしょ~~~、おとーさーん』
『わかったよ。』
『やったーー!!!!!』
『よいしょっ、と』
『おと~さ~ん、だいすき……』
言った途端に、パチリと眼が覚めた。
恥ずかしい夢見ちゃった。
おとうさんの夢見るの、久しぶり……。
× × ×
疲れてるのかな?
GW初日で、いきなり寝落ちして。
とりあえず顔でも洗わなきゃ! と、階下(した)に降りる。
顔は洗ったけど、さっき見たおとうさんの夢が忘れられない。
夢の中で、おとうさんに、
『甘えんぼさんなんだから』
って言われた。
アレは、もしかしたら、わたしの「甘さ」が、夢に反映されたんだろうか。
自分に甘えてるのか。
だから、おとうさんにベッタリと甘えるような夢を……。
ちがう。
わたし、自分に甘えてなんかない。
やるべきことは、ちゃんとやる。
自分に疑問なんか持つな、わたし。
もっとシャキッとするんだ!!
「――頭、ぶんぶん振って、どうしちゃったの? 愛ちゃん」
「え……」
「ストレス解消?」
「明日美子さん……いつの間に」
「いつの間に、って」
明日美子さんは、おどけたように笑いながら、
「わたしはここに居たよぉ」
「お昼寝、してたんですね」
「いまおきた」
「わたしも――お昼寝しちゃいました。それで、顔をいまさっき、洗って」
「悪い夢でも見たの?」
「いいえ、良いか悪いかでいえば、まちがいなく、良い夢でした」
「それにしては機嫌悪そう」
どうしてわかるんですか――と言いかけたが、
どうしたって、わかっちゃうんだろうなあ、と納得して、
苦笑いするだけにした。
そうだ。
どうしたって、けっきょく、わかっちゃうんだ。
お見通し、というか、なんというか……。
明日美子さんだもの。
何年いっしょに暮らしてるんだ、って話。
「明日美子さん、わたし、おとうさんの夢、見ちゃいました」
「そっか、そっか」
「アツマくんには、できれば内緒にしてほしいかなー、って」
「わかった、わかった」
いつの間にかわたしと明日美子さんはソファにいっしょに座っていた。
「愛ちゃん」
「はい」
「やっぱし――守くんやシンちゃんと離れ離れだと、さみしいときもある?」
難しい質問だ。
おとうさんやお母さんは、ここにはいない。
でもここには、アツマくんやあすかちゃんや明日美子さんや流さんがいて、利比古も来てくれた。
でも、おとうさんやお母さんと直接顔を合わせられるわけじゃない。
でもそれは利比古にとっても同じことなんだ。
「利比古のほうが――さみしいんじゃないかなーって」
「え~~っ」
不満そうな口ぶりになる明日美子さん。
「わたしは、『愛ちゃんがどうなのか』って、『愛ちゃんに』訊(き)いてるんだけどなーっ」
わたしは気まずくなって、
「ご、ごめんなさい、はぐらかすみたいになって」
「弟想いなのは、よろしい」
「――」
「うん、大変よろしい、さすが愛ちゃんだ、利比古くんのお姉さんだっ」
「え、ええっ、わたしてっきり叱られるかと」
「いいのよ~~、答えにくい質問しちゃったのはわたしだから」
そして明日美子さんは、パンパンと両手で自分のほっぺたを叩きながら「よーし」と言ったかと思うと、すっくと立ち上がって、
「きょうの晩はわたしがごちそう作る」
「!? きょうの晩ごはん当番、明日美子さんでしたっけ」
「わたしにやらせて。6人みんなそろうでしょ今晩は。だから久しぶりに腕をふるいたいの」
どうして急にやる気になったんだろう。
ま――いっか。
明日美子さんだし。
明日美子さんが本気出して作る料理、すごく美味しいし。
明日美子さんのごちそう――すごく、楽しみ。