ジャージに着替えたわたし「アツマくん、ランニングしよーよ。」
部屋から返事がない。
ドアをノックしてみようとする。
あれ、半開きじゃないの、ドア。
「入るよー、アツマくん」
わたし「……まだ、寝てたの?」
わたし「なんとか言いなさいよ?」
わたし「もしかして昨日のこと気にしてる?
わたしが『こわい』って言っちゃったこととか、」
アツマくん「ピクッ」
アツマくん「学校行きたくない……」
え……?
わたし「どうして? おなか痛いとか?」
アツマくん「そんなんじゃねぇ! 体調は、どこも、悪くなくて」
わたし「気分的なもの──」
そ、それは、
いちばん、アツマくんらしくない──。
わたし「やっぱりきのうわたしがアツマくんにどやされて、こわがって、アツマくん泣くほどショック受けてたから、それを引きずってるんじゃないの?」
アツマくん「ちがう!
──だけどそれもある」
わたしは全速力でわたしの部屋に行き全速力で着替えて戻ってきた。
アツマくん「おまえ、制服に着替えろよ、なんで──」
わたし「アツマくん、わたしも学校行かない、休む」
アツマくん「!!」
わたし「だってつらそうだもん、アツマくん」
明日美子さんに伝えた。
3秒でOKが出た。
あすかちゃん「あっちゃー、おちこんでるなー」
わたし「わたしが来る前にも、こういうこと、あった?」
あすかちゃん「ありました。
お姉さんは、お兄ちゃんが中学時代にいじめられてたこと──、お兄ちゃんの口から聞かされたんですよね」
わたし「うん」
あすかちゃん「まだボコボコにされる側だったときは、こうやってふさぎこむこともあったんです」
あすかちゃん「お兄ちゃん。
こういう時って、ガンバレ、って、言っちゃだめなんだよね、
わたし家族だよ。お母さんとわたしは、お兄ちゃんの家族。わすれないで」
アツマくん「背中が痛い」
あすかちゃん「じゃあ、さすってあげる」
わたし「すごく悪い夢、見たんじゃ」
アツマくん「大正解」
わたし「みんながアツマくんを責め続ける、とか……」
アツマくん「よくわかったな」
アツマくん「心当たりは、ある。ボコボコにされた奴に復讐して半殺しにしたからな、その半殺しにされた恨みが──」
あすかちゃん「(さすってあげていたアツマくんの背中を、ぽん、と押して)半殺しとか物騒なこと言わない。
(アツマくんの顔に近づき)じゃあ行ってくるね」
アツマくん「(行こうとするあすかちゃんの手を握り)あすか。」
あすかちゃん「(OoO;) お兄ちゃん。」
アツマくん「ありがとな」
あすかちゃん「何かあったらこまめに伝えてください」
わたし「うん。できるだけ目を離さない」
あすかちゃん「(胸に抱きついて)よろしくお願いします。」
──明日美子さんとアツマくんは話すべきだ。
そりゃ、実のお母さんに話を聴いてもらうのが、いちばんいい。
だけど、
こんなふうになっちゃったアツマくん、わたしはじめてだし、
そばにいてあげたい。
わたし「……なんでも聴くよ。」
アツマくん「そこにいてくれ。」
わたし「いるよ、いるから」
アツマくん「そばにいてくれ、愛」