【愛の◯◯】元気な愛が好き

文化祭がある、ということなので、

愛の学校に来てやった。

 

校舎

 

「いろんな出店があるなあ。

 

 愛のクラスは……、

 ここか」

 

お好み焼き、食べませんかぁ!?』

 

お好み焼き屋をやってるらしい。 

 

「そうだなあ。もうお昼だし、食べていくよ」

『やったあ! ありがとうございます』

「それとさ……」

『?』

「羽田愛って子、いるだろ」

 

その瞬間に、おれを呼び込んだ愛のクラスメイトの子が、

ニヤけた。 

 

× × ×

愛のクラスの教室(お好み焼き屋)

 

『羽田さん、アツマさんが来てくれたよwwwwwwwwwwwwwwww』

 

(一心不乱にホットプレートでお好み焼きを焼き続ける愛)

 

(一方、おれの周りに女子生徒が群がってくる)

 

なぜか、質問攻めにされるおれ。 

 

「わ、わかった、順番に答えるから、」

 

アツマくん!!

 

 その前に、さっさと席に座ってよ💢」

 

「(-_-;)はい」

 

 

・愛がお好み焼きの皿を運んでくる

 

「このお好み焼きなんでこんなデカイんだ」

「アツマくんだから」

「は?」

「アツマくんだったらこれぐらい食べると思って…」

 

『へぇ~へぇ~』

 

とたんにほっぺたが紅潮する愛

 

「ま、いいか。

(割りばしをパチンと割って)いただきまーす」

 

・・・・・・

 

「愛」

「なによ」

「やっぱりソースはオタフクソースだよな」

「あたりまえよ」

 

「……」

「……」

 

 

・完食

 

「ごちそうさま。美味しかったよ」

 

「(萎縮したような声で)アツマくん……」

「なんだい」

「……」

「(^_^;)いや、なんか言えよ」

 

ーー突然、愛がおれの腕に手を回して、

教室の外までダッシュで連れて出た。

 

 

 

× × ×

 

(息せき切って喘(あえ)ぐ愛)

 

「なんなんだよ、落ち着けよ」

 

「(弱々しく)ひとこと言ってよ。

 わたしのクラスのお店に来るときは」

「ああ、アポ無しじゃまずかったかw ごめん」

「素直ね」

「まあね」

 

「なあ、愛……、

 おまえ、ほんとにくたびれてるんだな」

 

「どうしてもうちょっと早くわかってくれないのかしら」

 

(優しく、愛の頭に手を置く)

 

「でも、わかってくれるだけで、うれしい」

 

すがりつくように、

座ったまま、

おれの上半身に抱きかかる愛。 

 

「(弱々しい声で)クラスのみんなが、わたしのぶんもがんばってくれるって」

「じゃあ甘えればいいじゃないか、クラスの子に」

「うん…」

「ただ」

「ただ…?」

「おれに甘えるのには」

「」

「TPOってのを考えてほしいかなー、とは思う」

 

(おれを抱きしめる愛の腕力がいっそう強くなる)

 

「…文化祭のパンフレット、もらってるよ。

 どこか行きたいところあるか?」

「(抱きついたまま)それこそ、TPOよ」

「おれがいたら不都合か」

そんなわけ…ないじゃない

「じゃあなんでTPOなんだよw」

「ごめん、わたしこんらんしてる」

「誰だって混乱するさ」

 

少し間があって、

ようやく、愛がおれの身体(からだ)から腕を離した。 

 

(パンフレットを受けとる愛)

 

「ジャズ喫茶やってるとこがあるの」

「ジャズかぁ…」

「不都合?」

不都合なのは筒香

「そこはボケるタイミングじゃないでしょうが」

「ジャズ、だめ?」

「あんまりジャズはわかんにゃいけど」

「あなた大学のサークルで何してたの、音楽鑑賞サークルでしょ」

「ごめん。

 おまえが行きたいのなら、どこでもOK」

 

 

× × ×

・ジャズ喫茶

 

「アツマくん、この曲弾いてるピアニスト、誰だかわかる?」

「ーーわかんにゃい」

バド・パウエルよ」

 

「アツマくん、この曲弾いてるピアニスト(以下略)」

「ーーわかんにゃい」

セロニアス・モンクよ」

 

「アツマくん、このサックス吹いてるの誰かは、さすがにわかるよね」

「ーーわかんにゃい」

コルトレーンよ!! どうしてわかんないの!?

 

(一身に注目を浴びる)

 

「…アツマくん、曲が変わったけど、このサックスはーー」

「…そろそろ戻らなくてもいいのか」

スタン・ゲッツよ」

「(^_^;)ーーま、いいか。

 しばらくここにいようか、愛」

「ーーいいの?」

「しんどいんだろ」

「もうあんまりしんどくないから…」

「強がるの禁止な」

「強がってなんかないもん。

 

 

 でも…ありがとう」

 

 

 

おれは、愛の握りこぶしに、さりげなく手を置くことにする。

 

「どうしたの、びっくりするじゃないのっ」

「はやく元気になーれっ」

「ここ、メイド喫茶じゃなくてジャズ喫茶なんですけど。

 

 

 

 …だいぶ元気になったよ、

 アツマくんが来てくれたから。

 

 

ーー愛の声に、

自信が、戻ってきた。

来てよかったな。