♪コンコンコン♪
♪ガチャッ♪
おれ「えーっと、少し勉強で教えてほしいところがあるんだけど」
愛「わたしがもう習ってるところ?」
おれ「・・・・・・たぶん」
愛「(少しムッとして)『たぶん』じゃ心もとないわねー」
おれ「じゃあこの問題集だけ渡して、おまえができそうだったら、あした教えてくれ。それならいいだろーーって、おい」
愛「(おれの腕を引いて)いま見てあげる」
なかば強引に、おれは愛の部屋に連れ込まれるようなかたちになった。
愛「……アツマくんが泣いたとき以来ね」
おれ「なにが?」
愛「にぶいわね。『こわい』って言って、あなたを泣かせちゃったことあったじゃない」
おれ「そんなこともあったっけ」
愛「(クスクス、と笑いながら)つい最近のことなのにw」
おれ、愛がこの邸(いえ)に来てから、愛の部屋に通算で何回入ったっけ?
覚えてねえ。
ぎゃくに、愛がおれの部屋に来たときのことは、鮮明に覚えてることが多いんだけどなあ。
愛「(右手を差し出して)見せて。」
おれ「ほい。(と言って問題集を渡す)」
愛「……ふーん。」
愛「自分で考えようとしない男の子って、カッコ悪い」
おれ「( ゚д゚)」
おれ「なに……が、いいたいんだ?」
愛「まず、わたしの学年の世界史Bは、ここまで進んでいません」
おれ「え」
愛「でもわたしは知識として知っていたから問題の答えがわかった。よかったわね、偶然よ」
おれ「(; ゚д゚)……で?」
愛「モンダイはここからよ!! これ、選択肢のなかで『正しいのを選べ』って設問よね? 消去法、って聞いたこと無いの!?」
おれ「ある」
愛「(見るからに不機嫌そうに)じゃあなんで消去法を使おうとしないの!? 極端なはなし、4つの選択肢のうち3つが誤りだってわかったら、のこり1つの選択肢についてなんにも知らなくても、その選択肢が正解だってわかるじゃないの!! しかもこの設問、誤りの選択肢3つとも、わたしが学校で今までで習った範囲の事項なんだけど。もっと頭使いなさいよ💢」
おれはもう一度、その問題の選択肢を凝視した。
が……。
おれ「愛」
愛「これからは、すぐに他人(ひと)に答えを訊かないよう、心がけることね」
おれ「いや……そうじゃないんだ」
愛「は?!」
おれ「この問題の選択肢ーー、
ぜんぶわかんにゃい」
♪正午のチャイム♪
愛「(深刻な顔で)アツマくん……、
昼ごはん抜き。」