♪コンコンコン♪
♪ガチャッ♪
アツマくん「えーっと、少し勉強で教えてほしいところがあるんだけど」
わたし「わたしがもう習ってるところ?」
アツマくん「・・・・・・たぶん」
そう来ると思った。
まったく……。
わたし「『たぶん』じゃ心もとないわねー」
アツマくん「じゃあこの問題集だけ渡して、おまえができそうだったら、あした教えてくれ。それならいいだろーー」
いまのままじゃアツマくん、絶対浪人する。
そう確信して、「いま見てあげる」と言い、わたしはアツマくんの腕をつかんで引きずり込んだ。
わたし「……アツマくんが泣いたとき以来ね」
おれ「なにが?」
にぶいわね💢
わたし「にぶいわね。」
わたし「『こわい』って言って、あなたを泣かせちゃったことあったじゃない」
「あなた」って二人称、アツマくんに使ったこと、あんまりない気がする。
あーー、
ウソウソ。
最近あったなw
でも本当に特別な時だけ。
わたしが「あんた」って言おうが「あなた」って言おうが、アツマくん、べつに気にしてないけど……、
それなら、はやく大学に受かって、第二外国語の科目で、『ドイツ語には二人称がふたつある』とか勉強してほしい。
「そんなこともあったっけ」っと、あの日の出来事を早くも忘却してしまった様子のアツマくん。
すごくアツマくんらしかったから、「つい最近のことなのにw」と、声を出して笑ってしまった。
アツマくん、わたしがこのお邸(やしき)に来てから、わたしの部屋に通算で何回入ったっけ?
数えきれない?
ーー特別なことじゃ、なくなったのね。
わたしがアツマくんの部屋に入った回数も、もう数えてなんかない。
ーー初めてのときは別。
初めてアツマくんの部屋に入ったときのことは、たぶん……もう一生忘れないと思う。
わたし「(右手を差し出して)見せて。」
アツマくん「ほい。(と言って問題集を渡す)」
「……ふーん。」
あえて、突き放してやろうかしら。
こう言って。
わたし「自分で考えようとしない男の子って、カッコ悪い」
カッコ悪い男の子「( ゚д゚)」
自分で考えようとしない男の子の苦しまぎれ「なに……が、いいたいんだ?」
「まず、わたしの学年の世界史Bは、ここまで進んでいません」
「え」
「でもわたしは知識として知っていたから問題の答えがわかった。よかったわね、偶然よ」
「偶然」は言い過ぎだったかも……。
ごめんなさいっ
「(; ゚д゚)……で?」
「モンダイはここからよ!! これ、選択肢のなかで『正しいのを選べ』って設問よね? しょー・きょ・ほー、って聞いたこと無いの!?」
💢「ある」
あのねえ……!
「じゃあなんで消去法を使おうとしないの!? 極端なはなし、4つの選択肢のうち3つが誤りだってわかったら、のこり1つの選択肢についてなんにも知らなくても、その選択肢が正解だってわかるじゃないの!! しかもこの設問、誤りの選択肢3つとも、わたしが学校で今までで習った範囲の事項なんだけど。
もっと頭使いなさいよ!!」
もっと頭使いなさいよ、スカポンタン!!!
問題集をわたしから奪い取って、ページを凝視するアツマくん。
ムダよ。
「愛」
「これからは、すぐに他人(ひと)に答えを訊かないよう、心がけることね」
ーーまったく。
突き放すのも、ショック療法。
「いや……そうじゃないんだ」
「は?!」
えっ?!
衝撃発言「この問題の選択肢ーー、
ぜんぶわかんにゃい」
♪正午のチャイム♪
「アツマくん……、
昼ごはん抜き。」
(-_-;)
突き放すのも手だ、とか、わたしが間違えていた。
昼ごはん抜きで、日が暮れるまで勉強教えてあげないと、
アツマくん……たぶん、大学全部落ちる。