戸部邸
よーし、きょうは、大学から早く帰れたぞ。
愛のやつ、『なかなか一緒に晩ごはん食べれない』とか言ってたからな。
きょうは一緒に食べれるぞい。
「ただいまああああああっ」
「♪~(´ε` )」
「おーい、愛、お兄ちゃん早く帰ってきたぞ~」
「……『お兄ちゃん』って言わないで」
「んっ」
「(>_<;)…『お兄ちゃん』って言わないでっ!! 普通に話して」
愛の野郎、
なんかつらそうだ。
うつむいてる。
ちょっとしたことで、落ち込んだりしちゃうもんな。
案外センチメンタルなんだよ、こいつは。
「ほ~い、アツマくんですよ~」
「自分で自分の名前を言わないで」
「……ちょっと、気が滅入ってるところに、高すぎるテンションで帰ってきて、うるさかったかな。
ごめん。」
「(-_-;)」
「ーーで、なにがあったか、おれに話してごらん」
「90点……」
「はぁ!?」
「中間テストで90点取っちゃった!
いつもは96点か97点取ってたのに!!!!!!」
「( ゚д゚)」
「ごめん…きょうの晩ごはんの当番わたしだったけど、ちょっと作る気力も体力もない……ごめんね」
× × ×
ピンチヒッターで、あすかが晩ごはん当番になった。
おれはあすかを手伝っている。
「母さんと一緒に寝るって?」
「うん。
贅沢な悩みに思えるけどね。
わたしたちじゃ想像できない世界。
おねーさんのプライド……ってやつが傷ついてるのかな」
「母さんに一緒に寝てもらうのか……。
そうとう、まいっちゃってるときだな、そういうときの愛は」
「お兄ちゃん」
「?」
「まさか、『おれと寝てほしかった』とか思ってないよね💢」
「アホか(コツン、とあすかの頭を軽く叩く)」
「たたかなくてもいいじゃん💢」
「いいんだよ、こういうときは、母さんにまかせとけば」
「……いつまでも、お母さんに任せとく気、こういうときのアフターケア」
「ん……そこは……スローペースで……」
愛のおとうさんに、「支えになってやってくれ」と言われた。
愛に、どうやって寄り添っていくのか、
おれは試行錯誤だ。
ただ、愛は素直だから。
気持ちの表現がわかりやすい女の子だから。
だからーー、
こういうときは、母さんに寄り添ってもらえばいい。
おれの出る幕は、まだ、ない。
「おれ、高校時代、90点なんて取ったことあったかな」
「お兄ちゃん、賭けてもいい? 絶対ないから」
「(;-_-)証拠がねーだろ…」