放課後
はいどうも! あすかです。
いま、スポーツ新聞部の活動教室にいるんですが、
岡崎さん、
瀬戸さん、
桜子さん、
そして、わたし、
つまり、 中村部長を除いた全メンバーが教室に集結しているんですが、
ですが、
ですが……。
わたし「部長が」
瀬戸さん「い」
岡崎さん「な」
桜子さん「い」
桜子さん「ーーさいきんサボり気味ね部長。
めずらしく」
岡崎さん「さすがに受験生としての自覚が出てきたんじゃないの?」
瀬戸さん「あの部長がぁ!?」
わたし「あっ、よく見てください、机の上に小さなメモ書きが」
岡崎さん「またダイイング・メッセージもどきかよ」
わたし「いや、小さくて読みづらい字だけど、いつぞやのようにカタカナ4文字ではなく、文章になってます。
なになに?」
『呪術廻戦』がアニメ化するので、ぼくも旅に出ます。
中村
わたし「(-_-;)……」
桜子さん「(-_-;)……」
岡崎さん「(# ゚Д゚)結局少年ジャンプかよ!!」
瀬戸さん「(;-_-)しかも、ぼく『も』旅に出るって、『も』ってなんだよ、『も』って」
わたし「日本語としていろいろおかしいですね…」
桜子さん「旅に出るって、実のところ、ぜったいそのへんにいるでしょ」
わたし「探してきましょうか? わたし」
桜子さん「あなたがわざわざ行かなくても」
わたし「なんか…ヘンな胸騒ぎがするんです」
桜子さん「(胸を手で押さえる素振りをしているわたしを流し目で見て)
……ふーん」
わたし「さっ桜子さんのエッチ」
× × ×
茶番みたいな空気に耐えかねたわたしはたまらず教室を出て部長の捜索に向かった。
「…部長だったら、昨日のレイソル対サンガの試合のこと、ぜったい『号外』扱いで煽り立てまくるだろうって思ったのに」
「…ひとりごと? あすかさん」
「どひゃあ!! ぶ、部長が出た」
「野生のポケモン扱いは困るなー」
「す、すみません。わたしモンスターボール持ってませんからね」
「引っ張るのそのネタw」
「ひ引っ張る気はないです。それより部長、せっかくわたし昨日の『大事件』のこと記事にして書いてきたのに。
部長なら、号外にしてくれると思ったのに」
「(ぽかんとして)……大事件?」
「じぇ、Jリーグで、ほら、柏レイソルが13点取ったでしょ、オルンガがひとりで8得点」
「(ぽか~んとして)そんなことがあったの…」
「ももももしかして、最近テレビやネット見てないとかですか?! 部長」
「ーーーー」
(;´Д`)部長の反応が………ない!?
「 」
「ぶ部長、ジャパンカップあったでしょ、ジャパンカップ。愚兄がめずらしく競馬中継を観ていてーー」
「 」
部長がお馬さんの話題に食いつかない…!?
「
……ふぎゃ」
× × × × ×
保健室
「(息せき切って)ソースケがぶっ倒れたって!?」
「マオさん、しーっ」
「…………、
あすかちゃんが運んでくれたの」
「はい。
部長、どうも熱っぽいみたいで」
「(青ざめて)こ、この時期に熱出してどーすんのよ。
そ、それに、万が一あすかちゃんに熱がうつったりしたら、二次災害…」
「だいじょうぶですよ~!w」
「ーーあすかちゃんが運んだのね?」
「? さっきも同じことをーー」
「あすかちゃんが運んだのね。」
(やりきれないような、せつないような表情になるマオさん)
「マオさん」
「」
「マオさん、わたし、中村部長のこと」
(おびえたような表情になるマオさん)
「中村部長のこと、信頼してますから」
「……(トゲトゲしく)まぎらわしい言い方しないで」
「……ごめんなさい。」
お互いに目を逸(そ)らしたまま、気まずい沈黙が、
5分、
10分、
20分、
30分……。