葉山家
AM11:00
「ヽ(`Д´)ノ あーっもう💢
なんかい同じところの問題間違えるのよ!!」
「……( ;゚д゚)むつみちゃん!?」
「(・_・;)……ご、ごめん、
わたし、イライラしてた。」
(困惑したキョウくんをよそに、ベッドに転がり込む)
やっちゃった。
キョウくんにキレちゃった。
やばい。
やばすぎ。
暑すぎて、気だるくて、
家庭教師やりながら、イライラが募っていってた。
× × ×
家庭教師役を放棄して、ベッドで不貞寝(ふてね)してた。
時計の鐘が、正午を告げたーー。
PM0:30
『むつみちゃん』
『むつみちゃん!』
『むつみちゃん、ごはんだよ!』
「(むくり、と起きて)えっ」
「冷やし中華、買ってきたよ」
わたしが何もしようとしないせいで、キョウくんに、 わざわざコンビニまで冷やし中華を買いに行かせてしまった。
こんな暑い中を。
なんて最低なの、わたし。
最低最低。
「ごめんね、おれ、デキが悪くて」
「……」
× × ×
PM1:30
休憩という名目で、勉強教えるのサボって、ア◯ック25の高校生大会を食い入るように観ている。
最低最低最低。
× × ×
…勉強を教えるのには復帰できたが、なんだかキョウくんに「ごめん」では済まされないようなことをしてしまった気がして、陰鬱な気分だった。
どうすればいいの……。
× × ×
PM3:50
「(休憩という名目で、フジテレビを観ながら)白毛馬が勝ったーー、
って、そうじゃなくってっ!!
(パンパン、と両頬を叩く)」
キョウくんにどんなお詫びすればいいだろう。
彼は部屋で勉強してる。
キョウくんに隠れて、リビングで八木八重子にこっそりLINEメッセージを送る。
『好きなひとにひどいことを言ったり、悪いことをしてしまったとき、八重子ならどうやって仲直りしますか。』
・・・・・・
『うーん、
そのひとの「好きなこと」に関わることを、する?』
えっ…。
八重子、なにその返信w
でも……、
キョウくんの、好きなことといえば……、
好きなことといえば……。
PM5:15
玄関
「ただいま」
「むつみちゃん!?
どこまで行ってたの!?
そんな汗だくになって、おれ心配してたんだよ、」
「心配させてごめんね。
汗だくになったのは、外が暑いから。
ーーキョウくんに『買ってきたもの』があるんだけど、とりあえずシャワー、浴びるね…」
× × ×
わたしのへや
「はい、キョウくんにプレゼント。これ、あげる」
「買ってきたものって、時刻表!?
なんでまた…!
それに、悪いよ、代金払うよ、おれ」
「それはツケといて」
「ええっ」
「……」
「……」
「……代金もらうほうが、『ツケといて』なんて言うのもヘンだよね、でもーー、
突然頭ごなしに怒って、冷やし中華まで買いに行かせて、家庭教師放棄して、きょうはキョウくんに対して悪いことばっかりしてたから、だからお詫びにっ」
「ーーありがとう。
むつみちゃん、顔、上げてよ」
「はい。」
「ハンカチーーいる?w」
「きょ、キョウくんだって、かおあかいじゃないのっ、わたしなきむしじゃないから、キョウくんのまえではぜんぜんないてなかったんだからっ」
「ーーいるんだね、ハンカチww」