ディープインパクトが死んじまった。
もっとも、おれは2001年度生まれだから、ディープの現役時代を記憶していない。
同じ三冠馬だと、オルフェーヴルのレースはリアルタイムで観てるんだけどな。
おれが競馬に目覚めるころ、YouTubeなんかでディープのレース映像が大量にうpされていたけれど、リアルタイムでのディープ体験がないもんだから、ただただ「強い馬」という印象でしかなかった。
ディープインパクトで競馬を知った世代が、エルコンドルパサーやサイレンススズカやナリタブライアンを「強い馬」としてしか認識していないようなものなのかも、しれないな。
(たとえば、サイレンススズカの金鯱賞や毎日王冠を後追いで見ても、リアルタイムで観た「衝撃」を分かち合えない。
おれたちの世代にとっての、ディープの若駒ステークスみたいなもので……あの若駒ステークスは、単なるレースアーカイブというだけの認識だから、リアルタイムで観た「衝撃」を分かち合えない…のか?)
「ソースケなに考え事してんの」
「マオか。部活は?」
「軽く切り上げたの。これだけ、暑いとね」
「マオ」
「なに?」
「近いぞ」
「!! (飛び退く)
わ、悪かったわね! 別に意識して接近したわけじゃないんだからね!!」
× × ×
「ディープインパクトって馬が死んじゃったそうじゃない」
「あぁ、可哀想に…」
「ねえなんで馬券買えないのに、そんな競馬にご執心なの?」
「競馬の半分はスポーツでできてるから」
「( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン」
「……でも、競馬なんかあんま興味なさそうなウチのお父さんが、スポーツ新聞の記事を、神妙な面持ちで見てたよ」
「それだけ偉大な馬だったんだよ。『競馬』って枠を超えてーー」
「そうなんだろうね、きっと」