【愛の◯◯】侑の名前を出したら悶着

 

「大学が始まったワケだけどね」

「うむ」

「わたし、学ぶ喜びに満ち溢れているわ」

「へー」

「ちょっとアツマくん!! そういう相づちはダメじゃないの!? 『へー』だとか」

「ごめんちょ」

「あのねぇ……!!」

「おいおい、愛、土曜の朝から殺気立つなよ」

「わたし本当に勉強が楽しいのよ。今週は1日平均4時間、図書館に滞在していたし」

「そりゃー、図書館に弁当持ち込む勢いだな」

「なにをボケてるの!? 図書館は食事禁止よ」

 

× × ×

 

「サークルの方はどうなんか? 愛は幹事長してるんだろ?」

「すこぶる楽しいわよ。1年生のピチピチ女子も2人居るし」

「ピチピチ女子、ねぇ……」

「何よ。ピチピチ女子って言ったらダメなの」

「たくさんの本を読んでる割りには、コトバのセンスがイマイチだよな」

「……悪かったわね、読書で言語のセンスを磨くコトができなくて」

「ま、おまえはおまえで良いと思うぜ?」

「きゅ、急にあなた、わたしに近付いてきてるわね。少しドキドキしちゃう……。わたしの頭をナデナデしたりとか……したいワケ?」

「ナデナデされたいんか?」

「そ、その前に」

「んっ」

「サークルの女子は3人だけじゃなくて。もちろん、大井町侑(おおいまち ゆう)も居るワケで」

「だなー。侑ちゃんの存在も、大きいんだよな」

「わたしはね、あなたにね、侑の画像を見せたいのよ」

「なぜに」

「あの娘(こ)は、あなたにとって、『弟子』みたいな存在でしょ?」

「まぁ、尊敬はされてるよな」

「これから、侑が可愛く撮れている画像を、あなたに見せる」

「見せてどーすんの」

「侑の魅力をもっとあなたの眼に焼き付けたいのっ!!」

「……なぁ」

「?」

「侑ちゃんって、大学に、高校生みたいな服装で来るコトある?」

「……?」

「高校の制服と見間違えてしまう、みたいな」

「あ、あなた、おかしなシュミがあるみたいね。もしや、高校時代の制服を来た侑が見たいんじゃ……」

「アホか。そんな願望はナッシングだ」

「だったらだったら、どうして『高校の制服と見間違え……』とか言い出したのよっ」

「愛。それはだな。『ひみつのアツマくん』なのさ♫」

「あなた、往復ビンタされたいの!?」

「往復ビンタはヤダ」

「それなら、お昼ごはん抜きのペナルティ……」

「エーッ非情な」

「……侑は、苦学生なのよ。侑の師匠として、苦学生の生活の大変さを実感してほしい……」

「いやいくら苦学生でも昼飯ぐらい食うだろ」

「無神経ッ!!!」

「どなるな、どなるな」