【愛の◯◯】GRAPEVINEの「白日」をめぐる想い出

 

とあるサブスクリプションサービスのとあるプレイリストをシャッフル再生していたら、聴き憶えのある楽曲が流れてきた。

ベッドにゴロ寝(ね)状態だったあたしは、右耳の近くに置いたスマートフォンに思わず顔を向ける。

GRAPEVINE(グレイプバイン)の「白日(はくじつ)」という曲。

瞬く間に、11年前の記憶が蘇ってくる。

 

× × ×

 

高校2年になったばかりの時だった。

ゴールデンウィークに突入する直前だったと思う。

土曜日の補習授業を終えたあたしは、購買でパンと紅茶を買ってから、自分の組(クラス)の教室に行こうとしていた。

その道中で、丸太(まるた)を割ったベンチに寝そべっている山田(やまだ)ギンに出くわした。

ギンは、あたしの、産まれた時からの幼馴染。幼稚園も小学校も中学校も高校も全部いっしょ。

後(のち)には大学までもいっしょになるのだが、これは互いに高校の制服を着ていた時のお話である。

グリーンのブレザーを着てグリーンのスカートを穿(は)いていたあたしは、グリーンのブレザーをだらしなく着てグリーンのズボンをだらしなく穿いていた幼馴染男子の情けない寝転び姿に近付いていった。

『ルミナかよ』

あたしの存在に気付いて、ギンが右耳のヘッドホンを外した。

『補習が終わった途端に、そんなトコに寝転んで、音楽聴きながら自分の世界にドップリ浸かるだなんて。幼馴染女子として、情けなさ過ぎて泣けてくるよ』

『ふうん』

あたしの厳しいコトバをギンが聞き流したから、

『今聴いてる曲の曲名を教えてくれなかったら、あんたの上半身を踏み潰す』

『新学期早々、バイオレンスな』

ムカつく声音でそう言ってからギンは、

『GRAPEVINEってバンドの「白日」って曲だよ』

もちろん、KingGnuの「白日」が大ヒットする前のコトである。

『いつの楽曲なのよ。どーせまた、あたしたちがヨチヨチ歩きの頃の楽曲だったりするんじゃないの』

『よくわかったなルミナ。1998年リリースのシングルだ』

あたしとギンが産まれた年のリリースであるのが判明したので、

『うわっ、懐メロ』

と声を上げるあたしがいた。

『おまえ、10年以上前の楽曲だったら何でもかんでも『懐メロ』って言いそうだな。そういう癖(クセ)、良くないと思うぞ』

微笑みを表情に混ぜ込ませながらそう言ってきたギンが、眼を閉じた。

挑発的なコトバを言われたあたしは、このままでは終われなかったので、ギンの寝転ぶベンチにさらに歩み寄り、カラダを前に傾けてカラダを見下ろし始めた。

いきなり、ギンの閉じていた眼が開かれた。

あたしは一気に後(あと)ずさった。

少し身を起こしたギンが、

『なんだなんだそのリアクションは。間近でおまえの気配がしたと思ったから眼を開けたら、一気に遠ざかりやがって……』

カラダとココロのいろんな場所が発熱しまくっていたあたしは、

『タイミングってモノがあるでしょタイミングってモノが!! あたしが不都合なタイミングで眼を開けたりしないでよ!!』

と絶叫し、

『ギンの、むっつりスケベ!!!』

と絶叫でもって罵倒したのだった……。

 

× × ×

 

回想を終えてベッドから身を起こしたあたしは、グリーンのブレザーとグリーンのスカートが未だに保管されているクローゼットを眺めながら、

「今では、恥ずかしい想い出というよりも、いい想い出なんだけどね」

と呟く。

高校時代の制服は今年度中にどうにかしようと思う。

理由は、次回以降のお楽しみ。

 

音楽再生を終えたスマートフォンがぶるぶると震えだす。

やっぱりギンからの着信だった。

もしかしたら、

『土曜なんだから、いっしょに昼飯食わないか?』

とか言ってくるのかもしれない。

――胸の奥の中心部が暖まってくる。