「お兄ちゃん、ブログのスケジュールのコトなんだけどね」
「いきなりなんだ」
「明日の更新は、お休み」
「なんでだ? 管理人にサボりぐせが付いたのか?」
「そんなんじゃないよ。管理人さん言ってたんだよ、『自分の務めを果たさなきゃいけないから』って」
「オイオイどーいう責任感だそりゃ」
わたしはわたしの右隣の兄から少し顔を逸らして、
「管理人さんだって……オトナなんだよ」
× × ×
都内某区某所。夕方のニュース番組が終わろうとしている頃。
とある駅前に、兄とふたりだけで佇んでいる。これから兄妹で夕ご飯を食べるんだけど、まだ、お店が決まっていない。
「この時間帯でもまだあったかいなあ」
呑気に言う兄に、
「夕ご飯、どのお店で食べるの? 話し合って、決めようよ」
と促しのコトバを言い、兄のシャツの左袖を軽く握る。
わたしは、中央競馬担当記者という職業であるがゆえに、月曜と火曜が休日になる。月曜の夜は、兄と出会って一緒にご飯を食べられる貴重な夜なのだ。
……恥ずかしいから、『お兄ちゃんと過ごせる月曜の夜を大事にしたいの』なんて、口から出せるワケも無いんだけど、ね。
静かな目線をジトッ……と兄の頭部目がけて送る。
「この近くに、お好み焼きが美味い店、あったような気がするんだが」
兄はそう声を発するのだが、
「わたし、ハッキリ言って、お好み焼きって気分じゃない」
「エーッなぜに」
「いろいろあるんだよっ、女子にはっ」
そう言いつつも兄の顔面方面に目線を寄せていったら、ヘラヘラとした笑みが食い込んできた。
兄貴、ココロの中で、『逃げたな~~??』とか思ってそう。
幾つになっても、妹のコトをバカにするような真似、してくるんだから。
25歳にもなって、ホントにもう。
「あっちを見ろ、妹よ」
若干キモい口調で告げながら、兄貴が駅前通りの一角を指差す。
「某・定食屋チェーンがあるのが分からないか?」
兄貴のコトバを受けて眼を凝らしてみたら、ご飯お代わり自由で有名な某・定食屋チェーンのお店が見つかった。
わたしは素早くスマートフォンを取り出して、某・定食屋チェーンの公式サイトにアクセスし、メニューを確認する。
「――唐揚げ定食が、この時期のおすすめメニューか」
兄貴がいきなり言ってきた。わたしのスマートフォンをいきなり覗き込んできて言ってきた。
わたしは瞬時にスマホをズボンのポケットに突っ込んで、
「妹のコト、なんだと思ってんの!? プライバシーを侵害するような真似をして」
「んっ」
『んっ』じゃ、ないよっ。
「わたしのスマホを覗き込んでこないでっ!! もう1回スマホの画面に視線を当ててきたら、ご飯のお代わり禁止だよ!?」
「んーーっ」
わたしをドン引きさせてくる寸前の声音で反応してくるから、再び顔を逸らしてしまうんだけど、
「あすか、おまえ、あの定食屋チェーンの店に入るのに、前向きみたいだな」
と、無駄に的確な発言が……右耳に届いてきてしまう。
「よくわかったねっ!」
素直になれず、突っぱねちゃう。
叫ぶように突っぱねたあとで、自分自身が恥ずかしくて、カラダの温度を上げてしまう。
右手を強く握り締め、兄貴の大きな背中にストレートパンチを直撃させる。
22歳にもなって……ワンパターンな反抗しかできない、妹のわたし。
くやしい……!!