【愛の◯◯】千葉センパイのすてきなリボン

お元気ですか? 羽田愛です!

 

風邪、引いてませんかー? 

今冬(こんとう)の風邪は「しつこい」らしくて、症状が長引いてる人もいるみたいなので、気をつけましょうねー。

 

(例によって?)放課後です。

風邪に負けないからだ作りも兼ねて、わたしは校内プールで泳がせてもらっていました。

 

ーーきのう、アツマくんの大学の留学生ジュリアに、

『あなたとアツマはステディなのね』(大意)

と言われたこととは、なんの関係もありません。

 

でもーー

ジュリア、美人だったな。

髪の色、わたしと似てるけど、本家本元は、やっぱ違うや。

 

 

ーーいけないいけないっ、

泳いでいるのです、わたしは!

 

『ぷはぁっ』

 

・プールサイドに上がり、少し休憩する

 

「順調みたいね」

 

「千葉センパイ」

 

水泳部元部長の千葉センパイ。

部活を引退して、受験生である。

(そうは言っても、このプールには引退後も頻繁に泳ぎに来ていた) 

 

千葉センパイは大学では水泳をやらないらしい。

新しいことに挑戦したいという。

センパイ、いろいろ考えることもあったみたい。 

 

「水着じゃないんですね。きょうは泳がないんですか?」

「さすがに、ねw

 ずーーっと受験勉強、だよ」

「ずっと机に向かってると、かえって良くないのでは?

 泳いで、からだをほぐせばいいのに」

 

(遠くを見るような眼になる千葉センパイ)

 

「(^o^;)ど、どうしたんですかセンパイ……」

 

「羽田さん。

 ちょっと話そうか」

 

 

 

× × ×

 

自販機横のベンチ

 

「何飲みたい? 羽田さん。

 わたしメロンソーダにするけど」

 

「あ、すみません、炭酸、だめなんです」

「そうなんだ」

「ホットコーヒーでおねがいします」

「わかった」

 

 

「メロンソーダ

 葉山先輩が好きでよく飲んでましたよね」

「そうだよ。だからわたしも飲むの」

「?」

 

「ーー葉山先輩と会ったよ」

「いつですか!?」

「去年の12月」

「どこでですか」

「葉山先輩が学校(ここ)に来た」

「ええ……

 わたしに教えてくれてもいいのに、葉山先輩」

「羽田さんは、葉山先輩と仲良いよね。

 仲良し、というか、『あうんの呼吸』というか、

 見えない糸でつながってるみたいに、

 通じ合っていて、

 うらやましいかも…w」

「…千葉センパイをパシリにしてメロンソーダ買わせてたりしてたから、葉山先輩に、良い印象持ってないんじゃないか、って思ってましたけど」

「そんなことないよ~。

 12月に会って、感じたんだ、

 葉山先輩って、

 カワイイな、って」

 

「かわいいんですか…」

 

「茶目っ気というか、天然なところがあるというかーーでも葉山先輩、怒っちゃうかな、こんなこと言ってると。

 幼なじみのキョウさんのことになると、顔が真っ赤になりだしたり、そこらへんがーーかわいかった」

 

「むずかしい人ですけどね」

「あなたはうまく彼女を操縦(コントロール)できてるよね。

 秘訣でもあるの?」

「長いつきあいですからね…それを話すと、時間を食っちゃいます」

「そっか……

 漠然とだけど、特別扱いしないことってのは、ポイントなのかなーって」

「特別扱いしないのは大事ですけど、むずかしいですね」

 

 

 

「羽田さん」

「はい」

「あのさ…

 

 

 

 

 

 大学で水泳をやる気はないの?

 わたしの、代わりに。

 あなただったら、大学から競技で始めても、遅くないよ。

 もったいないとーーわたしは、思っちゃう」

 

 

「センパイが、そう言ってくれるのは、もちろんうれしいです。

 うれしいんですけど、

 

 やっぱり、スポーツは、趣味の領域にとどめておきたくって。

 

 ごめんなさい。」

 

「どうして趣味の領域にとどめておきたいの」

「……」

「って、訊(き)く流れなんだろうけど、

 羽田さんの気持ちを知りたい思いもあるけど…、

 わたしは、あなたの意思を尊重したいから、

 理由を訊くのは、やめる」

「ごめんなさい、センパイ。」

「あは。

 

 フラれちゃったw」

 

 

~沈黙~

 

 

「羽田さん。」

『ビクン』

「フラれちゃうだろうとは、思ってた。

 だけどさ。

 あなたに渡したいものがあるから。

 受け取って。

 拒否権ナシだよ、今度はw」

 

リボン…ですか?

 

 千葉センパイ、こんなすてきなリボン、持ってたんですか…。

 

 うらやましい」

 

「素直だねw

 

 あのね。

 それ、泳ぐときも使えるようになってるから。

 競技だとさすがにマズいけどさ。

 

 でも、使って。

 

 だって、あなた髪がどんどん伸びていくんだもん!w

 

 プールサイドで見ていてハラハラしちゃってたよ。

 

 でも、髪伸ばす理由も、あるんでしょ、きっと?w

 だったら、それが『女の子の嗜(たしな)み』ってやつだよ、

 羽田さんーー」

 

「ありがとうございます、受け取ります」

「使ってね。

 

 あー、

 あなたが髪を伸ばす理由、

 

 当ててあげようか、」

 

『ゴクン』

 

アツマさんのため」

 

 

どうしてわかるの、センパイ、どうして!!

 そもそもどうしてアツマくんのこと知ってるの!?

 

 

「有名だったんだよ、

 大会にいきなりエントリーしてきて、超速い記録残して、それっきり出てこないっていう、『戸部アツマ』っていう名前はーー」

 

「あんにゃろ💢 目立つ行動しないでよっ💢💢」

 

「(;^_^)り、リボンを握りつぶさないでw」

 

「帰ってから問い詰めです。

 

 どんどんわたしとアツマくんのことが白日の下に晒されていく。

 

 最近その繰り返しで…一種のマンネリですね」

 

「いいじゃん、大切な人がいるんだからさ。

 わたしもすぐそばに、大切な人がいてさ。」

 

「千葉センパイそれって」

 

「そ。

 

 わたしも、タカが好きだよ。

 

 

 

× × ×

 

わたしの部屋

 

すてきなリボンだなー。

 

大切にしなきゃ。

 

大切な人と同じくらい、このリボンも大切にしなきゃ。

 

どこにしまっておこうか?

 

ゴンゴン

 

 

「愛、今月号の『スイマーズ*1』読み終わったから、持ってきたぞ―」

 

「あとで読むわ。

 

 その前にーー、

 

 おすわり。

 

「!? は!??!」

 

 

「そこに座って。

 ちょーっと二言三言、問い詰めたいことがあるんですけどねえ…(ゴゴゴゴゴ)」

 

 

 

 

 

*1:わたしとアツマくんが共同で購読している水泳雑誌