【愛の◯◯】彼氏への『約束』と、彼氏に必要な『覚悟』と

 

SUPER BUTTER DOGのライブ・アルバムの再生が終わって、

「アツマくん。あなた、とっくに『御存知』よね?」

「へっ?? 『御存知』って何が」

「とぼけないでよ」

「とぼけてないが」

「とぼけてるっ!」

アツマくんの厚い胸板を右手で強気にパンチするわたしは、

「もう5回ぐらい伝えたはずなんですけど。来月の上旬が教員採用試験の1次専攻だって」

「あっ」

気付いたのはいいけど、口から出てくるのはおマヌケな声。

彼氏の厚い胸板に右拳を食い込ませ続けざるを得ず、

「試験が間近に迫ってるってコトよ。――ま、わたしの実力ならば、『今度は』軽く突破できるでしょーけれど」

「……よっぽどおれに言わせたいのか、『油断は禁物』って」

胸板から瞬時に右拳を離すわたし。その右拳を彼氏の冴えない頭頂部に移動させ、グリグリ攻撃を開始。

「やめーや、愛(あい)。暴力ヒロインは、もう古い。おまえも、もう幾つ寝ると24歳にもなるんだし……」

「わたしの誕生日は11月14日なんですけどっ!! 約5ヶ月後なんですけどっ!!」

何よ、『もう幾つ寝ると』って。

フザケてるの。

テキトーなツッコミばかり入れてきて……!!

 

× × ×

 

爆速で淹れたホットコーヒーをリビングの丸テーブルに叩きつけて、

「『約束』を忘れてるだなんて言わせないわよ!?」

ホットコーヒーとわたしのコトバを突きつけられたアツマくんは、さすがに狼狽(うろた)え顔になっていく。

「昨年末、あなたに告げた。『教員採用試験に合格したら、あなたにプロポーズする』って」

畳み掛けるわたし。口を引き結ぶ彼氏。

「覚悟しておくコトね」

そう言ってから、柔らかで愛情溢れる微笑を一気に作り上げて、彼氏を翻弄していこうとする。

目線を下げる彼氏は、マグカップの取っ手を右手で掴み、中身のホットコーヒーをずいっと啜っていく。わたしの上品な啜り方には遠く及ばない啜り方。

呆れつつも微笑を継続してあげていたら、

「これ、キリマンジャロか?」

と、あり得ない『不正解』を言ってくる彼氏に直面してしまった。

……アツマくんあなた、喫茶店員でしょーがっ。