どうもです。
戸部あすかです。
高校1年生です。
ーーところでわたしの兄は都内某大学に通っているのですが、
偏差値はそこそこだけれど、とりたてて名門というまでもないーーというのが、世間の評価であるようです。
思えば、むかしから、兄はとくべつ学業が優秀というわけではありませんでした。
同級生の藤村さんのほうが成績はよかったみたいです。
えっ?
『おまえはどうなんだ』って?
…今のところ、高校時代の愚兄よりは、成績優秀です。
あくまで、わたしが通ってる高校という枠内(わくない)での話ですけど。
まだ、おねーさんと20ぐらい偏差値の開きがある。
超名門女子校と比べたら、月とスッポンですよ。
さて、わたしよりも学業の芳(かんば)しくない愚兄に話題を戻しますが、そんな愚兄にも、たったひとつの取り柄(え)があるんです。
それは、『スポーツ』です。
抜群の運動神経を買われ、高校時代兄はあらゆる体育会系部活の「助っ人」に駆り出されていました。
そこで目ざましい活躍をした兄は、『伝説のOB戸部先輩』として、わたしも通っている母校にその名を刻んでいるのです。
ーーで、『伝説のOB戸部先輩』の運動部における活躍の影響で、『スポーツ新聞部』という得体のしれない部活が誕生して、
どういうわけか現在わたしは、『スポーツ新聞部』の部員になっている、という流れーー。
それにしてもさぁ。
お兄ちゃん、水泳大会に勝手にエントリーするのはマズいでしょ。
エントリー「する」というより「させられた」といったほうが適切な表現では、あるけれども!
たとえ人数合わせとはいえ、『戸部アツマ』という名前とタイムが記録に残ってしまった。
いいんですかね、これ!?
ブログだから許されるんですかね??
そこんとこどうなんですか、某組織のお偉い方!?
ーーまあ、このブログはフィクションということで、なんとか許容してくれたら…と思います。
ただ、本当にマズかったのは、おねーさんの学校の水泳部部長だった「千葉センパイ」が、『戸部アツマ』の泳ぎとその名前を記憶に焼き付けてしまっていたこと。
つまり「千葉センパイ」経由で、勝手に兄が大会に出てなおかつ大活躍していたという事実がおねーさんに露見し、
「どうしてそんなことしてんのよ!?」と先週、哀れなる兄はおねーさんにこっぴどく叱られた、
というわけです。
だけどーー。
夜
浴場の、脱衣所
「ちょっとぐらいいいじゃないですか」
「Σ(・・;)!? 何が!?」
「すみません、ひとりごとだったんですけどw
ーー兄の水泳大会への参加は、勝手なマネだったかもしれません。
だけどその反面、ちょっぴし、誇らしくも、ある」
「(-_-;)なんだかんだいって、お兄さん、だもんね、アツマくん」
「そう! なんだかんだいっても、お兄ちゃんが活躍するのは、頼もしく感じるのです」
「(-_-;)ごめんね、ちょっと過敏に反応しすぎた。
説教なんか、するもんじゃなかったかもしれない…」
「わたしにあやまってもしょーがないじゃないですかーww」
「(^_^;)いじわるw」
(カッターシャツを着たまま、ため息をつくおねーさん)
「ーーどうしたんですか?」
「(・・;)い、いや、いろいろと」
(シャツを脱ぐわたし)
「(--;)あすかちゃん、きょうは勢いあるね。
自信満々、って感じ」
(カッターシャツのボタンに手をかけるおねーさん)
?
なんで、ボタン外すのにまごついてるんだろう。
(脱ぎ終えたカッターシャツを丁寧に棚にしまうおねーさん)
(おもむろにこっちを向いて、うつむきがちにため息するおねーさん)
「……、
あすかちゃん、
新しいブラ、買ったほうがいいかもしれない。
それ、2年くらい前から、もってるやつでしょ」
× × ×
@お風呂
・ぷくーっ、とほっぺたをふくらませるわたし
「ごめんごめんw ヘンなこと言って」
「こっちはこっちで恥ずかしいんですからね💢」
「コンプレックス?」
「久里香(くりか)にLINEで指摘されたあたりから。
去年の8月でしたっけねぇ!」
「まあ…同年代の女の子は、そういうところ、敏感なのかしらねえ」
「おねーさんだって」
「(わざとらしく)ぎくっ!」
「(;-_-)…言及する子としない子がいます。
でもむしろ、気にするのは歳上のヒトが多いみたいで…」
「わたしとか?」
「とか。」
「アカちゃんは?」
「なにも」
「さやかは?」
「…どうでしたっけ」
(おねーさん、クスリと笑う)
「と、とにかくおねーさん、脱衣所で不審な挙動になるのはやめてください!!」
「わかったわかった、もう子どもじゃないもんね」
「お互い?」
「よくわかってるじゃない。お互い、よ」
× × ×
「あの、先週、兄の誕生日だったじゃないですか」
「うん」
「そのとき、兄にもーーお兄ちゃんにも、直接言ったんですけど、
『お兄ちゃん、前よりずっと頼れるようになった、頼もしくなった』ってーーそういうことは、伝えなきゃと思ったので、勇気を出して、伝えました。
お兄ちゃん、ほんとうにたくましくなったんです」
「わかる、わかる」
「肝心なのはですね」
「?」
「きっとーー、
おねーさんがこの邸(いえ)に来てなかったら、お兄ちゃん、こんなふうにたくましくはなってなかったと思います。
おねーさんがいたから、お兄ちゃんは成長できたんです」
「…わたしだけじゃないよ」
「ーー」
「アツマくんの成長は、あすかちゃんのおかげでもある」
「ど、ど、どこ触りながら言ってんですか!!!
おねーさんのヘンタイ!!!」