穂積陳重『法窓夜話』 #2

53 国際私法

 国際私法という名前については、1864年に清でウィリアム・マーティンが中国語に翻訳した『万国公法』の中に「公法私案」という名前で用いられたのが端緒である。

 1866年に西周先生が某教授の講義を翻訳して『万国公法』として出版したが、その本の中では国際私法に「万国私権通法」という訳語があてられている。

 1868年に開成学校から出版された津田真道先生訳の『泰西国法論』では、「列国庶民私法」という訳語となっている。1874年の東京開成学校の規則では、「列国交際私法」という訳語となっている。でも、津田先生の「列国庶民私法」のほうが適切だと思う。

 1881年までは東京帝国大学では「列国交際私法」といっていたが、この名前だと、国家と国家が交際するときの私法規則のように聞こえるから、同年東京帝大はこの名前を「国際私法」と改めた。