【愛の◯◯】おれを言い当てた凄まじき美女が◯◯

 

夏祭り会場にやって来たんである。ブログの事情で夏祭りの名称や開催地は言えないんである。

そして、おれはおれの事情で、浴衣などを一切身にまとわず、普通のTシャツ……。

日暮れにはまだ遠い空の下(した)、人だかりを眼の前にしているが、やはり浴衣姿が目立つ。

そもそも和服の上手な着方(きかた)が本当に全く分からないおれ。『2人の姉ちゃんならば少しは知ってるのかな……』と思いながら群衆を眺めていたら、

『トヨサキ三太(サンタ)くんね!?』

という美しい声が、いきなり左サイドから聞こえてきたから、超ビックリ。

声がした方を向けば、浴衣姿の、この世の女性とは思えないほどの美しい女性が、佇(たたず)んでいた……!!

いや、マジで美人なのだ。美人過ぎるがゆえに、『この世の女性とは思えないほどの』という形容しかできない。

細いカラダを包み込む涼しげな水色系統の浴衣。ボリュームの多めな栗色の髪は大きめのリボンでまとめられている。何より、吸い寄せられるように美しいと共に、少女のような「あどけなさ」の名残も感じられるような顔立ち……!!

『なぜおれの名前を言い当てられたのか』という疑問よりも、『この女性(ひと)から『誰か』の面影が感じられる』という思いの方が先行して、

「あのっ、もしかして、羽田利比古(はねだ としひこ)さんのお姉さんの、羽田愛(はねだ あい)さんですか」

「大当たり~~」

嬉しそうに彼女が微笑んだ。凄まじい破壊力。

羽田愛さんは、

「利比古が、トヨサキくんの特徴をかなり詳しく教えてくれていたから、『たぶんこの子じゃないかな』と思って、近付いてみたワケよ」

おれは、

「でも、おれがおれだって、良く分かりましたね」

愛さんは、

「かしこいから☆」

と、またもや破壊力抜群の微笑み顔。

それから、

「タカムラかなえちゃんは一緒じゃないの!?」

と、おれの同級生女子に如何にも興味がありそうな声と表情で。

「最初から、『会場には別々に向かう』って、決めてたんで」

愛さんの迫力に圧(お)されながらも答えるが、

「かなえちゃんがツンデレなのかしら」

え!?

タカムラのコトを、早くも、ツンデレ認定!?

「同じクラブ活動なんでしょ? というか、あなたと彼女の2人だけのクラブなんでしょ? 合流するのを拒否るってコトは、彼女がよっぽどツンデレであるコトの証じゃーないの」

おれは困惑し始めながら、

「タカムラは、確かにツンツンはしてます。ですけど、デレるような素振りをおれに見せてきたコトは、1度たりとも……」

ここで、

『彼の言う通りだと思うぞ。なーに会ったコトも無い女の子を勝手にツンデレ認定しちまってるんだ』

という男のヒトの声。

気が付けば、羽田愛さんの背後に、身長180センチ近くと思われる、チカラ強そうな体格の若い男性が立っていた。和装ではない。おれと同じで、Tシャツだ。

「愛。おまえはココロの底からアホだな。初対面で緊張の解けてない子に、あるコト無いコトくっちゃべりやがって」

……背後の男性(ヒト)に振り向くコト無く、愛さんはピリピリピキピキし始めて、

「アツマくんコトバが汚い」

と、早口で鋭い声を発する。

「あれほど『アホ』なんてコトバは使わないように普段から言ってるでしょ、初対面の男の子をビビらせてるのはむしろアツマくんの方よ、わたしの教育が足りなかったみたいね、今ここで肘鉄(ひじてつ)でも食らわされたいってゆーのかしら、浴衣とかに見向きもせずに1万円以下のTシャツを着てくる体たらくだし、やる気がこれっぽっちも感じられないわ……!!」

一気に喋る愛さん、だったのだが、

「美人は喋り過ぎないモノだろーが」

と、『アツマさん』なる男性(ヒト)に言われると同時に、頭頂部を彼の右手で押さえつけられてしまった。

たしなめられて、折檻(せっかん)の如くに頭頂部を押さえつけられる。

彼女にとって、この男性(ヒト)は、おそらく……!

コドモのように喚(わめ)き立てる愛さんに向かって、

「――彼氏さんと、一緒に来てたんですね」

とおれが告げた瞬間、その美しい眼が丸く大きく見開かれ、顔面が一気に熱を帯びていった。

「ととととトヨサキくん」

尋常じゃない慌てぶりで、

「利比古が、アツマくんの存在のコトまで、伝えちゃってたの?!!?」

と訊いてくるから、

「彼氏さんと『ふたり暮らし』であるというコトぐらいは」

と答えたら、

「お仕置きし甲斐のある男子は、アツマくんだけじゃなかったのね……!!」

と、右手をかなりキツく握り締めた。

華奢な見た目とは裏腹な握力が感じられて、正直、少しコワい……。