【愛の◯◯】蜜柑さんを蜜柑さんに戻してあげるんだ!

蜜柑さんを元気づけてやってくれと、アカ子さんに頼まれて。

 

『男女1対1だと、何かとなあ』と、ためらっていたら、

アカ子さん、

『アツマさんが知り合いの大人の女の人に、一緒に来てもらうのはどうでしょうか?』って。

 

大人のおねえさんの知り合いなんて、思い当たりませんでした。

 

で、都合がつくのが、星崎姫ぐらいだった、という始末。

 

星崎。

こいつは断じて大人の女じゃねえ。

大丈夫なのか、蜜柑さんとの、相性ーー?

 

都内某商業施設

 

「こんにちは蜜柑さん。

 すみません、星崎ってヤツがあとから来るんですけど、あいつ、時間にルーズみたいで」

 

「(テンション低めに)いいんですよ。」

 

ほんとうに、元気がないみたいだ。

いつもとテンションが、真逆だ。 

 

「(うつむきがちに)すみません、あんまり眠れてなくて。」

「つ、疲れてませんか?」

「(小さくガッツポーズするようにして)へっちゃらです☆」

「ーー無理しなくてもいいんですよ。」

 

背の高い蜜柑さんが、小さく見えてしまう。

アカ子さんぐらいの大きさに見えてしまっている。 

 

おっはよーございまーっす

 

「げっ星崎」

「ドン引き? ひどいね、のっけから」

「さっきのおまえの挨拶、なんかキャラが違う…」

「やる気元気星崎♫」

「いやわけわかんねぇ」

 

ちらりと蜜柑さんの様子を見る。

おれたちのやり取りが微笑ましいのか、小さく笑っている。

ちょっと元気が、出始めたのかもな。

星崎も、捨てたもんじゃないじゃないか。 

 

「はじめまして、戸部くんの大学の同級生の星崎です」

「こちらこそはじめまして、永井蜜柑と申します。

 羽田愛さん、ご存知ですか?

 愛さんは、わたしが住み込みで働いている邸(いえ)の~(以下略)」

 

メイドさんってほんとうにいるんですね。

 でも、メイドさんっぽくないというか…とっても、カジュアル」

「メイド服はほんとうに限られた機会でしか使わないんです」

「ファッション誌のモデルさんみたい……」

 

…嬉しいです……。

 アカ子さん、普段そんなこと言わないから…

 

普通に感激してるよ。 

 

「じゃあ新しくできたっていう店でランチにしますか」

 

× × ×

 

・食後のティータイム

 

「おいしかったー。

 どうでした? 蜜柑さんは」

「あの、ここに来る前は、食欲があんまりなくて、それが、気がかりだったんですけど…不思議、食べられちゃうものですね。

 とはいえーー」

「とはいえ、?」

「(星崎の耳もとで何ごとかささやく)」

「ーーさすがw」

「これ、オフレコですからねw」

 

 

「じゃ、会計はぜんぶおれが持つから」

「え、い、いいんですか、アツマさん」

「バイトの稼ぎが思いのほかよかったんです。

 ま、よくなかったとしてもーーぜんぶ持ってますけど」

 

ーーアツマさんは、

 いいダンナさんになりますよ

 

な、なにいってんですかぁ

 

× × ×

 

「戸部くんってよくキョドってるね」

「おまえこそNGワード言ったらキョドるくせに」

「む~っ」

 

「なあ…蜜柑さん、さっきおまえの耳もとで、なにつぶやいてたのか、訊(き)いてもいいか?」

「ダメ。オフレコ。」

「ケチ。」

「ヒントはね、蜜柑さんのプライドに関わること」

「プライド…? 仕事に関係してるってことか? メイドさんの」

「野生の勘だけは鋭いのね」

「」

 

「で…このあとどうするか、決めてなかったという」

「突発的な企画だったみたいだから、仕方がないですね」

「あの…マズかったですか? 無理に元気づけようとするみたいで、」

まっさかあ!!

 アツマさん、

 わたし、

 もう一度前向きなわたしになれる気がします。

 

 もし、アカ子さんやメグやアツマさんや星崎さんが後ろ向きになっちゃったら、

 わたし恩返ししてあげたいなー、って」

 

「…そうこなくっちゃ。

 前向きな蜜柑さんが、蜜柑さんですよ」

 

(^_^;)『メグ』さんって誰なんだ。

まあいいや。

 

「じゃあ蜜柑さんがいまいちばんやりたいことしましょうよ」

「お、星崎にしてはいい提案だな」

「だってそうでしょ!? それっきゃないでしょ」

「賛成」

「中性」

アルカリ性

 

爆笑する蜜柑さん

 

「ーーでw

 なにがしたいですか? 蜜柑さん。

 せっかく知り合いになったんだから、もっと仲良くなりたい、わたし」

 

 

蜜柑さんは、

もうすっかり元通りで、

小さく見えない。

 

蜜柑さんが蜜柑さんに戻ったんだ。

 

 

「そうですねえ~w

 

 じゃあ星崎さん、わたしはーー」

 

 

 

 

 

【愛の◯◯】戸部くんの意気地(いくじ)がない依頼

今にはじまったことじゃない。

 

むかしから、一目惚れは多かった。

 

 

ーー時田さん、か。 

 

大学構内を歩いていた

 

ゴツン

 

ひゃああ!! ぶつかっちゃった!!

 時田さんごめんなさいっ」

 

「(目を丸くして)トキタさんってだれだよ」

 

眼の前にいるのは、時田さんじゃなかった。

 

わたし、戸部くんとぶつかったんだ。

 

なんでもないのっ、無意識のうちに

 

「顔真っ赤だぞ」

 

忘れて

 

「(しょうがないなあ、というふうに笑って)

 ーーわかったよ。

 

 ところでーー」

 

「ところで?」

 

おれにつきあってくれないか、星崎」

 

 

 

「なに…いってんの…わけがわからないよ……戸部くん」

 

 

 

「アホか星崎、『助詞』が違うだろ、『助詞』が」

「じょし???」

「だーかーらー、

 おれ『』つきあってくれ、って言ったんじゃねーんだよ。

 おれ『』つきあってくれ、って言ったんだよ。

 

 明日の昼から、ついてきてほしいところがあるんだけど。

 

 断じてデートとか、そういうのじゃないから、女の人がもうひとり来るから」

 

「……まぎらわしいの、ヤダ」

 

「(スマホの画面を見せて)こんな店がオープンしたんだと。

 星崎、こういう雰囲気のとこ、好きじゃないかなあと思って」

「うん、好き」

「おごるよ」

 

(ノ≧∀)ノほんとに!? ここのモールしばらく行ってなかったんだ~!!

 行く行く行く!!!

 

 

「(^_^;)……。

 

 じつは、なぐさめてほしい人がいるんだ」

「もうひとり来るってひと?」

「そう。おれらよりひとつ年上の、メイドさん…なのかな」

「戸部くんどういう人脈があるの」

 

「それになぐさめるって言ったってわたし初対面よ」

「わかってる…おれもなぐさめるから」

「ははぁ」

「なんだよ」

「そのメイドさんとふたりきりだと、危険だから、もうひとり女の子がほしかったんだ」

「ふたりきりだと誤解されるだろっ。

 それに平日動ける人間は限られてたから…」

「戸部くんもいくじなしねえ~w」

「…もう一度訊くけどトキタさんってだれだよ。答えられなきゃ、おまえもいくじなしだぞっ」

(*'д';c彡☆))Д´)パーン

【愛の◯◯】持つべきものはメグ

蜜柑です。

 

少し、調子を崩して、

お嬢さま…アカ子さんに甘えてしまって、

それで、アカ子さんが、

『今週はいっしょに寝てあげる』

って言い張るものですから。 

 

朝が来た

 

「むくり」

 

「い、いけない、もう起きなきゃーー」

 

 

 

『蜜柑』

 

そこには、

制服に着替えた、

アカ子さんが。

 

「蜜柑…しばらく、家のことは、わたしたちでなんとかするから」

「(;´Д`)しばらく、って…いつまでですか」

「もうっ、野暮なこと訊かないで、ちゃんと休んでなさい!

 朝ごはん、用意してあるから、もう少し寝るなら、あっためてね」

 

「(;´Д`)……」

 

 

× × ×

 

起きるのが億劫(おっくう)で、

ようやくベッドから出られたときには、

信じられない時間に。

 

どうしちゃったんだろ、わたし。

でも、からだは正直だ。

休みたがってるんだーー 

 

い、いや、それじゃダメでしょ、わたし。

 

でも、からだがうまく動かない。

着替えるのにすごく時間がかかって、

作ってくれた朝ごはんをあっためていたら、

コーヒーがある場所すら忘れてしまって、

ラチがあかないから、代わりに冷蔵庫のコーヒー牛乳を飲んだ。 

 

で、なにもできなくなったわたしは、どうすればいいんだろう。

読書?

本を読む気がまったくない。

テレビ?

なにも観る番組がない。 

 

仕方なく、自分の部屋でCDを流してうだうだしていた。

時間が経過するのが、とてつもなく遅い。 

 

ふと、高校時代の、友だちのことを思い出した。

卒業してから、まともに連絡をとっていない。

もう忘れられてるのかもしれない。

 

わたしは天涯孤独なメイドになってしまった。

支えてくれるのは、この家のひとだけ。

 

持つべきものは友。

苦しい時に、支えてくれるはずの友人が、わたしには…。 

 

<ブルッ

 

LINEのバイブ音。

 

 

 

 

 

 

 

メグ!??!!? 

 

メグから連絡が来た。

望月恵(もちづき めぐみ)、

高校時代の、わたしのいちばんの親友だった。 

 

『なんか調子崩しちゃったんだって? 蜜柑』

『どうしてわかったの……』

『アカ子ちゃんから、ねw』

『いつの間に』

『ねえ薄情だよお蜜柑。もっと連絡よこしてくれてもいいじゃあん。

 もっと頼ってよ』

『ごめんなさい…。

 でも、ありがとう』

『で、いま、あんたんちの前にいるから』

 

(ベッドから飛び起きるわたし)

 

× × ×

 

『おじゃましま~す』

 

「メグ、ごめんけど、きょうは紅茶、入れられない」

「わかってるよ、つらいんでしょ。

 服の着かた、見てたらわかるw

 ダメダメだもんね、きょうのあんたのファッションw」

「(・_・;)ーーそんなに私服を見せる機会があったかな」

「目撃談」

「へ?」

「目撃談、けっこうあるんだよ、あんたのw

 あんたの知らないところで」

(・_・;)

 

「…お昼、過ぎちゃったね。なんにも用意がない……」

「出前とればいいじゃん」

「たしかに。その発想はなかった」

 

「どうせKくんにフラれたトラウマでも掘り返しちゃったんでしょ。

 それで、変な夢を見たりして」

 

どうしてわかるの、メグ…

 

「空回りしてたもん、あの頃のあんた。

 失恋がつらかったら、もっと寄りかかってくれてもよかったのにね。

 慰安旅行にでも連れてってあげたのに」

「慰安旅行って、高校生だったでしょ、わたしたちw」

「わたしアルバイトしてるって言ってなかったっけ? 高校だけどけっこう貯金もあったんだよ」

「バイト、してたっけ、そっか。

 ーーわたし、薄情だ。

 メグがバイトしてたかどうかも、忘れちゃってた」

「やけにネガティブだね、きょうの蜜柑」

「そうかなあ」

「ーー前向きなことばっか言ってたじゃないの。

 前向きなことをひたすら言ってるあんたが好きで、親友になった」

「前向きーー? わたしが」

「だから、今みたいにしょげてるのは、気に食わない」

「気に食わない、って、ずいぶんハッキリと」

「だってあんたがあんたじゃない気がするもの!!w

 引きこもりがちなんじゃないの!?w」

「そんなことないよ」

 

そんなことない、けど、

たしかに、

公共交通機関に乗ったりすることは、

ここ1年、滅多になかった。 

 

「ねえ、ほんとに慰安旅行に連れてってあげてもいいんだよ。今ならーー」

「ありがとうメグ。

 気持ちだけ受け取っておく」

「あちゃあ」

「ほんとうにありがとね。

 でも、この家で、待ってるんだから、わたし、」

「アカ子ちゃんを?」

「そう、彼女が、『ただいまー』って、帰ってくるのを」

 

「また美人になったんでしょ、あの子w」

「そうね…妬(や)いちゃうぐらいに

 

「蜜柑だってスタイルいいじゃんよ」

「それで寄ってきたオトコは全員振ってたから」

「(;^_^)…そうだったんだ」

 

 

 

【愛の◯◯】悪い蜜柑の夢

はいこんにちは! アカ子です!

もういくつ寝るとクリスマス、もういくつ寝るとお正月、

そんな季節でしょうか!? 

 

まっすぐ家に帰った

 

「ただいま~」

 

おかえりなさいませ、おじょうさま

 

「(゜o゜; ど、どしたの蜜柑!?!?

 元気ないわよ、風邪ぎみなの?」

 

そうかもしれません。

 あるいは、ちょっとくたびれてるのかも

 

「どっちにしろ、体温をはかりましょうよ。

 体温計、体温計……」

 

× × ×

 

「微熱でよかった。

 風邪のひきはじめ、ってところね。

 そんな体調で、あちこち動き回っちゃダメじゃないの」

 

「そんな…家のことをしていないと、わたしの存在意義がーー」

「バカ言うんじゃないわよっ、

 1日ぐらい家事を休んだぐらいで、この家がグチャグチャになるわけじゃないでしょ?

 

 …わたしも悪かったわね、

 蜜柑に全部、家のこと、任せっきりみたいにしてた。

 

 だからーー蜜柑、

 わたしが、蜜柑の家事を代行してあげるわ」

 

× × ×

 

というわけで、

蜜柑を寝かせて、

掃除・洗濯の代行サービスを始めた。 

 

たしかにーー 

蜜柑も、くたびれても仕方がない。

わたしの邸(いえ)、なんだかんだで広いし、

掃除機をかけるだけで、かなり骨が折れた。

 

蜜柑も大変なのね。

慣れとかあるのかもしれないけど、

体力が無尽蔵(むじんぞう)にあるわけではないし。

 

・洗濯機を回した

 

「ーーさて、次はお夕飯かしら」

 

「その前に、蜜柑の様子を見なくちゃ。

 ちゃんと寝てるかしら」

 

 

@蜜柑の部屋

 

「!! 

 

 コラっ、蜜柑、起き上がってちゃダメでしょっ?

 

 

 

 …蜜柑!?

 どうしたの、

 そんなつらい顔して…」

 

「アカ子さん……

 夢を…見ました、

 もちろん…とびきり、

 悪い夢を」

 

× × ×

 

いろんな人が、

遠ざかっていく夢を見たらしい。

 

たとえば、高校時代に好きだったけどフラれた人。 

捨てられた蜜柑を育ててくれた、お父さんとお母さん。

そして、最後に、わたしが、視界からーー。

 

「死ぬほどコワい夢、見たのね」

「(しょげて)はい…」

「でも、それは、絶対に正夢じゃないから。

 絶対に夢のままで終わる、

 わたしが夢のままで終わらせてあげる、

 そんな悪夢、葬り去ってあげる」

 

「(うつむいて)アカ子さん…

 アカ子さんは、強いですね。

 

 わたしは、弱い」

 

「バカねっ、強いとか弱いとかじゃないのよ。

 

 ーー家族でしょ!

 

 お父さんとお母さんに、早めに帰るように連絡しておくから。

 蜜柑、なにが食べたい? わたしが作ってあげる」

 

「(わたしに泣きついて)

 

 

 

 

     …オムライス」

 

 

【愛の◯◯】ありがとう、ありがとう、タカ…!!

こんにちは。

水泳部の千葉です。

 

あ、

正確には、引退したから、

元・水泳部か。

どっちでもいいや。 

 

ところで、大学入試シーズンが近づいております。

入試に向けて(?)、

雑念を振り払い、無心になるため、

きょうもわたしは放課後、学校の室内プールで泳ぎ続けていたのでした。

 

そしたらーー 

 

千葉ちゃ~ん♫

 

(;´Д`)は、葉山先輩!??!

 

 

× × ×

 

「突然来ないでください。

 

 どうしたんですか、大学を受けるんですか?」

「ん…、

 

 ふらっと来たw」

「ヒマなんですね」

 

深刻な表情になる葉山先輩

 

「す、すみません、言葉がトゲトゲしくって。

 傷つきましたか…? 

 ほんと、ごめんなさいっ」

「いいんだよ。

 

 謝るのは、わたしのほうだから」

ごめんね千葉ちゃん…、

 メロンソーダ買いに行かせたりして

 

「そ、そんな些細(ささい)なことで謝られても、困るんですけど」

「厳しいね、千葉ちゃんはw」

 

「葉山先輩」

「なぁに」

「その…体調とか…あと……こころの調子とか……どんな感じですか」

「いいじゃん、そんな口ごもらなくても。

メンタルヘルスどうですか?』って言えばいいじゃないw」

「(-_-;)……」

 

「ちょっとね、くたびれてるかな。

 わたしの病気ね、

 調子に波があるの」

 

病気、

と、

先輩ははっきり言った。

 

「でも、誕生日祝ってもらって、矢印上向きかな」

「…こわくないんですか、

 矢印が、下向きになるの」

「んー、むかしは暴れたりしてたけど」

「けど…?」

「いまは、支えてくれる人が増えたから。

 わたしの事情、オープンにして良かったって思ってる。

 

 (わたしの腕を取って)千葉ちゃん、あなたもそうだよ」

 

「…先輩の支えになってますか、わたし……?」

「うん。」

「(・_・;)」

「悩まなくてもいいじゃんw」

 

「(・_・;)め、メロンソーダ買ってきます」

 

× × ×

 

 

「そっかー。

 千葉ちゃんも千葉ちゃんで、くたびれてるんだねえ」

「ーータカが納得してくれるかどうか」

「新しいスポーツを始めるってこと?」

 

(うなずくわたし)

 

「きっとだいじょうぶだよ」

「り、理由はーー」

「お互いに信頼してるんでしょ?

 

 千葉ちゃんはタカくんのことを、

 タカくんは千葉ちゃんのことを。

 

 じゃあ、うまくいかないわけないよ」

「ずいぶんポジティブな言い方しますね、先輩」

「あのね…」

「…はい」

「わたしにも、幼なじみの男の子がいて。

 キョウくんっていうんだけど」

「知ってます(←即答)」

 

少し顔を赤らめる葉山先輩

 

「わたしはキョウくん信頼し切ってるし、

 キョウくんもわたし信頼し切ってる、

 

 だからわたし、キョウくんの前だと、なにも怖くない」

 

「ーーもう結婚しちゃえばいいじゃないですか。」

「(まともにうろたえて)ば、バカっ、千葉ちゃんのバカバカ! じょ、じょうだんゆーんじゃないわよ、いつからそんなナマイキになったのよっ

 

「…ふふw

 

 ありがとうございます。ちょっと勇気が出ました。

 

 あとーー、

 さっきの先輩、ちょっと可愛かったですww」

 

「もう。

 可愛くない後輩持っちゃった。

 

 …あはは。

 

 お互い元気出しましょうね。

 約束よ。」

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

@タカの家

 

♫ピンポーン

 

「タカ、いますか?」

「いるわよ。

 なに、あらたまってw」

「…話があるんです」

 

 

@タカの部屋

 

真正面にタカがいる。

 

わたしはタカをまっすぐ見つめる、

見つめることができる。

 

 

「タカ、

 わたし大学では水泳やらない。

 新しいスポーツ始める。

 具体的には…バスケとか、興味がある。

 水泳は個人的に続ける。

 でも、高校で、わたしのスイマー人生は、ひとつの区切り。

 

 ……、

 いますぐに、『納得して』とかは、もちろん言わない」

 

「いや」

 

「(少し驚いて)ーータカ!?」

 

「おれは納得した。」

 

「ど、どうして、そんな簡単に」

 

簡単に納得したんじゃねーよ!!

 

『ビクン』

 

「…素直に。

 

 素直に、納得できたんだよ。

 

 おまえの眼に、迷いがなかったから

 

「眼!?

 

 ……どうしてわかるの、タカ…………」

 

わかるんだよ。

 何年となりに住んでると思ってんだ、ばか。

 

 

 

自然と、

わたしは、タカに抱きつきながら。

 

 

ありがとう、ありがとうタカ!!

 わかってくれて、わかってくれて…!!!

 あなたがいてくれてよかった、タカ!!!!

 これからも、ずっとずっとよろしくね……

 

 

 

 

 

 

 

【愛の◯◯】抱かれるのと、抱くのと、どっちが先だった?

わたし、香織。

文芸部の、部長。

でも、

もうすぐ、卒業。 

 

 

「香織センパ~イ!」

「あ、羽田さん」

「珍しくないですか、センパイがガーデンにいるなんて」

「そんなことないよぉーw

 

 ただ、ちょっと…ね」

 

「ど、どうして黄昏(たそが)れてるみたいになってるんですか…」

 

「次期部長ーー」

「はい」

「羽田さんが、いいと思う」

「はい…」

「みんなも、納得するでしょ」

「そうでしょうか」

「もうちょっと肩の力抜いて、がんばってみて、羽田さん」

「はい…」

 

× × ×

 

「あの……」

「なーに?」

「どうでしたか? …センパイは、6年間この学校に通ってみて」

 

長かった。

 

 ーーだけど、あっという間だった。

 

「………そうですか。」

 

 

「ねっ、羽田さん」

「(背筋を伸ばし)は、はい!」

「…わたし、恋愛小説、書き続けてるんだけど」

「……」

「………、

 

 男の人に抱かれるって、どんな感じ?」

 

「ど、ど、どうして、そんなこと、きくんですか」

 

「試しにさ、

 

 わたしを抱いてくれない? 羽田さん。

 

「わたしがーーセンパイを、抱く、んですか?」

「うん。

 抱かれる感触を、知りたいから」

「まさかそれを執筆に活かしたいとか」

「その、まさか」

「わたしでいいんですか?」

「いいじゃん、だれも見てないし、どうせ」

 

(眼を閉じて深呼吸する羽田さん)

 

むぎゅっ、と、

羽田さんに抱きしめられる。

 

やわらかい感覚ーー。

 

「これでいいですか」

「うん、

 じゃ、今度はーー、

 わたしが、羽田さんを抱く番。

 

 抱かれるのと、抱くのと、

 両方、感触を確かめたいから。」

 

「センパイーーいちおう言っときますけど、わたし、女の子ですよ。

 あしからず」

「もちろんわかってるよw」

 

「じゃ、いくよ」

「どうぞ」

 

ふぎゅっ、

と、 

正面から、羽田さんをハグ。

 

やわらかい感覚ーー、

そして、身が火照(ほて)ってくる。

 

羽田さんと、わたしの体温、どっちがあったかいのか、

わからない。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーありがと。」

「さ、参考になればいいですけど、でもホントにわたしでよかったんですか?」

「ーー羽田さんに、訊きたいことがあるんだけど、」

 

(身構える羽田さん)

 

「抱かれるのと、抱くのと、

 どっちが先だった?」

 

「ーーわたしが、気づいたら、抱きついてました。」

 

「そっか。」

 

「こ、これは、い、言っときますけどっ、男の子のカラダって、女の子とは、やっぱり違って」

「ーー知ってる。」

「…センパイ……」

「あんまりケンカしちゃだめだよw

 ケンカするほど仲がいい、っていうけどさww」

 

「どうしてアツマくんとのこと、そんなに…?」

 

ーーごめん、わかっちゃうのw

 わたしがあなたより、ひとつおねーさんだからかなw

 

 

 

【愛の◯◯】羽田先輩の「愛情表現力」

こんにちは皆さん。

川又ほのか、と申します。 

 

文芸部の羽田先輩のようすが、きのうなんだかおかしかったので、

気がかりだったのですがーー 

 

わたし(1年)の教室

 

『川又さん、2年の羽田先輩が呼んでるよ』

 

「( ゚д゚)えっ」

 

ほんとだ。 

控えめな感じで、羽田先輩が教室の入り口に。

 

 

「どうしたんですか、わざわざわたしの教室まで」

「あの…お願いがあるの…」

「な、なんですか? お願いって」

邸(いえ)までいっしょに帰って

「(; ゚д゚)」

 

先輩はこんなふうに事情を説明した。

 

メルカドでコーラ飲んじゃったの。

 ほんとは、わたし炭酸飲料飲んじゃいけないの。

 なぜかっていうと、炭酸飲んだら酔っぱらったみたいになっちゃうから。

 でも、気持ちがささくれだってたから、ついコーラ頼んじゃったの。

 それで、一気飲みしたから、伊吹先生の前でグデングデンに酔っぱらって…

 

 わたしは『戸部邸に帰りたくない、伊吹先生のところに泊まらせてください』って言ってきかなかったみたいなのね。

 でも『着替えの服とか下着とかどーすんの?』って先生に諭(さと)されて、先生に介抱(かいほう)されたままタクシーで戸部邸に帰らされて。

 

 それで、わたし先生の目の前で、アツマくんに説教されて……。

ひとに迷惑かけやがって!!』ってーー怒られて。

 

 わたしは素直に謝ったけど、まだ、アツマくんとギクシャクしてて、まともに会話もできてないの」

 

「それで、邸(いえ)に帰るのが、怖いんですね」

「そういうこと。

 でも、川又さんといっしょに帰ってきちゃったら、また『迷惑かけやがって!!』って怒られちゃうかも、ね」

「だいじょうぶですよ。

 わたしは迷惑じゃないですから。

 それに先輩のお邸(やしき)、どんななのか、一度見てみたかったんですw」

「(肩をすくめて)わたしのお邸じゃないけどね。

 ただの居候(いそうろう)だから」

 

 

× × ×

 

『戸部邸』

 

「ーーすごいお邸(やしき)ですね…」

「大きいでしょ」

「豪邸、っていうんですかね」

「いうのかなあ」

 

・玄関

 

「…アツマくんもう帰ってるのかなあ…」

「大学に通っておられるんですよね」

「そうだよ、この時間帯に講義入れてなかったら、もしかしたら早く帰ってるのかも…」

「あの」

「?」

「そもそも、アツマさんから、『今日は何時ぐらいに帰る』とか、知らされてなかったんですか」

 

あ…

 ケンカしてるから、アツマくんの予定、きいてない…

 

「じゃあとにかく邸(いえ)に入りましょうよ」

「ちょちょっとまって、心の準備がーー」

「ダメですよー先輩。こんなときに『心の準備』なんて。

 自分の邸(いえ)なんでしょう?」

「わたしは…ただの居候だよ…川又さん……」

「でも、この邸(いえ)の一員だっていう意識、持ってるはずです、先輩は」

「それは……そうだけどさっ」

 

ガチャ

 

「なにやってんだよっ」

 

「(おびえるように)あ、あ、アツマくん」

 

「揉(も)めごとなら、外じゃなくて、ウチでやってくれ」

 

× × ×

 

・リビング(?)

 

ひ、広い。

 

この広間、広すぎ。

広すぎるし、天井がすごく高い。 

 

「はじめまして、羽田先輩の1年後輩の川又です」 

「愛のバカがわがままですまんかったな。

 ま、川又さん、ゆっくりくつろいでいってくれよ」

 

背が高くて、

すごく、たくましそうな人。

スポーツマンみたいな。

 

ーーでも、

 

「せ、先輩は、バカじゃないし、わがままでもないと思います。

 

 わたし、先輩を、そのっ、そ、尊敬しているんです

 

「そうかーーそれはよかった」

 

「ちょっと、アツマくん、川又さんにつっかからないでよっ」

「そんなつもりねーよ」

つっかかってるじゃん! わたしを悪く言うのはいいけど、川又さんをいじめないでよっ!

「いじめてなんかないだろがっ💢」

「ーー川又さんは、わたしを尊敬してるって、言ってくれたけど、

 わたしがだれを尊敬してると思ってるのよっ」

「おまえの尊敬してる人~?w」

あ・な・た・よ!!

 

「愛、おまえーー」

「(泣きそうになって)尊敬してるんだから、好きなんだから、いっしょにいたいんだから、現在(いま)のままじゃイヤ。

 

 仲直りしたいよ。

 

 川又さん、どうしたらいいのかな」

「わ、わたしに振られても、困るんですが」

「そうだよね。

 

 アツマくんーー、

 わがままで、バカでごめんね。

 こんな性格ブスで。

 

 たかがCDケースが割れたぐらいで、こんな大ごとに発展しちゃって」

 

「ーーもうすぐ届くころかな」

「な、なに言い出すの」

 

ピンポーン

 

「ほら、来た」

「まさかーー、

 宅配便!?」

 

× × ×

 

「おまえのために買った。

 開けてみろ、

 おまえがおとうさんにもらったのと同じCDがーー」

 

「……開けなくてもわかるよ。

 

 (泣き笑いで)どうしてそんなに行動力があるのかな、アツマくんは……

 

「旅行の予算が少し減るぞ。

 CD注文した代金のぶん。

 わかったな」

 

「うん…わかってる……ごめんね、わざわざ」

「こういうときは、どう言うんだ?

 

 謝るだけじゃ、ダメだろうが。

 な?」

 

次の瞬間ーー、

先輩が、

アツマさんに、

正面から抱きついた。 

 

「(うろたえ気味に)ばっきゃろ、言葉で態度を示せよ」

「ーー肉体言語。」

 

 

× × ×

 

「いつまで抱きついてんだよっ」

「だめ。離さない」

「川又さんが、唖然としてるのがわからんのかっ」

「わかってる。だから、離さない」

「意味わかんねーよ」

「…じゃあ、こうする。

 アツマくんに、わたしの感謝の気持ちが伝わり切ったら、離すから」

 

 

 

先輩は、

アツマさんの行動力に驚いていたけど、

先輩の行動力のほうが、

驚きーー。

 

先輩の愛情表現って、こんななんだ。

スキンシップ。

 

ーーわたしには、まねできない。

だからわたしは、羽田先輩を、ますます尊敬してしまう。

 

 

 

【愛の◯◯】禁断のコカコーラ

あたし、伊吹!

伊吹は旧姓で、ほんとは「白川」だけど、

みんな「伊吹先生」って呼んでくれるから、

伊吹!! 

 

放課後

図書館

文芸部

 

羽田さん(高等部2年)「あっ、伊吹先生が読書してる

川又さん(高等部1年)「ほんとだ、珍しいですね

 

あたし「orz あのねえ……

 あたし、文芸部の顧問なんですけど」

 

川又さん「そうでした、すみませんでした」

羽田さん「……」

川又さん「は、羽田先輩もあやまるべきでは」

羽田さん「……荷風の『断腸亭日乗

 

摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)

 

あたし「そうよん♫」

羽田さん「図書館にありましたっけ?」

あたし「(;・∀・)し、しつれいなっ。わたしの所有物に決まってるじゃないの」

川又さん「そ、そうですよ先輩、先生に失礼ですよっ」

羽田さん「すみません。

 そういえば先生は、荷風の『濹東綺譚』で卒業論文を書かれたんでしたっけ」

 

あたし「…どうして知ってるの…」

 

羽田さん「前に先生が自分からおっしゃっていたじゃないですか」

あたし「ウソっ

 

 

bakhtin19880823.hatenadiary.jp

 

羽田さん「読者の皆さんは証拠があるので↑を閲覧してください。

 

 ーーCMでした」

 

あたし「…(;・∀・)羽田さん、なんか、フキゲン?」

羽田さん「(ムスッとして)……別に」

あたし「さ、沢尻エリカのモノマネ、うまいねw」

羽田さん「……誰ですか?

 

 

 

× × ×

 

茶店メルカド

羽田さんのテンションがおかしい。

甘いもので手懐(てなず)けるわけじゃないけど、

教師として心配なので、

案の定『メルカド』で緊急面談を行うことに。

 

「羽田さん、ドリンクはホットコーヒーだったよね?」

コーラがいいです」

 

Σ(;・∀・)え、ええっ、どうしちゃったのこの子 

 

 

「し、知ってる? 羽田さん、きょうは永井荷風の誕生日なんだよ。

 それで『断腸亭日乗』を学校に持ってきて、読んでたの」

 

「(知らなかったのが心底悔しそうな顔で)

 そうだったんですか……

 

・コーラが運ばれてくる

 

ジュゴゴゴゴ…とストローでコーラを一気飲みする羽田さん。

やっぱり、変。

 

なんか、コーラ飲んだら、彼女の顔が、次第に赤くなってきたし。

まるで、お酒を飲みすぎたみたいに……

 

まさか…… 

 

アツマくんが!!!!!!

 

 アツマくんが、わたしが貸したCDのケース割った!!!!!!

 

 おとうさんからもらったCDだったのに!!!!!!

 

「( ゚д゚)ポカーン

 

 ーーもしかして、アツマくんとそれ以来クチきいてない、とか?」

 

そうなんです!!!!!!!

 

 アツマのバカ、バカ、大バカ!!!!!!!

 

「それでご機嫌斜めだったのかー。

 で、でも、少しおちつこう?w」

 

…羽田さんって、

こんな大きな声、出せたんだ。

 

いぶきせんせえ~ こんばんいぶきせんせえのいえにとまらせてください~ アツマくんのかおみたくない~ なんでもしますから~りょーりだっておそうじだってせんたくだって~ ダンナさんのじゃまはしませんから、なんならふーふせいかつのじゃまだってしませんから~ わたしがごほうししてあげますから~いぶきせんせえのかぞくになったっていいんですから…

 

「(; ^_^)…出ようか。」