【愛の◯◯】あの3人が、10連休に戸部邸にやってくる!!!

今度の大型連休、

海外にいる愛の家族が、

戸部邸にやってくることになった。

 

 つまりはーー、

 

おれ「『来日』?」

愛「(;´Д`)ちがーーーう!!

 

愛「日本人に『来日』は使えないでしょ」

おれ「じゃあこのケースはなんていうんだ」

愛「……き、『帰省』?」

おれ「しっくりこないぞ」

愛「(-_-;)じゃあ無難に『一時帰国』でいいんじゃないかしら……」

おれ「日本語ってむずいなw」

愛「(^_^;)うん」

 

おれ「うれしいだろ、おとうさんが帰ってくるからなぁ~」

愛「💢うるさい」

おれ「利比古も帰ってくるしなぁ~」

愛「💢💢うるさいうるさい」

おれ「おまえの母さん、けっこう美人だったよなww」

愛「💢💢💢うるさいうるさいうるさーーーーーーい!!!!!!

 

 

× × ×

おれ「あのー、愛ちゃん、このドイツ語、どんな意味だったか、わかんない?」

愛「(Д`)わかるけど教えない

おれ「……失言したから?」

愛「(Д`)謝っても教えない

 

おれ「わかったよ、自分で独和辞典で調べるよ」

愛「(Д`;)・・・素直すぎない?

おれ「だって失言しちゃったから」

 

 

【愛の◯◯】からかったり、ドキッとしたり

放課後。

 

わたしとアカ子、 

そして荒木先生の3人で、

音楽準備室の片付けをすることになった。

 

アカ子「荒木先生って、吹奏楽部の顧問なんですよね?」

荒木先生「うん。でもほら、ぼくはこの学校に入りたてだから――」

わたし「上司の阿久井先生がいばってるんですよね」

アカ子「えっ、それほんと、さやかちゃん?

 ひどーい、荒木先生、雑用係みたいじゃない」

荒木先生「べ、別に阿久井先生いばってるわけじゃないし、雑用係でもないよ」

わたし「ジョーダンですよ。」

 

からかいたくなっただけ。 

 

荒木先生「何だよ、からかわないでくれよ~」

 

その、期待通りの反応が、

わたしはうれしかった。 

 

× × ×

 

<ピンポンパンポーン

 

『荒木先生、荒木先生、阿久井先生がお呼びです。至急――』

 

荒木先生「いけね。ごめん、ちょっと行ってくる(スタスタスタ)」

 

思わず、アカ子と顔を見合わせてしまった。 

 

わたし「……パシリ?」

アカ子「阿久井先生って、若い先生をこき使うようなタイプだったかしら?」

 

 

♪(着信メロディ)♪

 

アカ子「あ、ごめん、わたしマナーモードにするの忘れていたみたい」

わたし「レミオロメン

アカ子「(ギクリとしたように)よ、よくわかったわね、世代が違うと思ったけれど…」

わたし「どうせなら『◯◯◯◯』や『◯◯◯』を着メロにすればいいのにw」

アカ子「か、からかってるの!?

 

 

 

ether[エーテル]

ether[エーテル]

 

 

 

アカ子「もしもし、蜜柑?

(準備室を出て)そんなことで電話してきたの? 急な用でないなら、こんな時間に――

 

そうだよね。

夏秋冬』や『景色』なんて、

 着メロにできないよね。

 

もう今は、聴くのすら恥ずかしい状態なのかも。

 

そしてわたしは――、

準備室でひとりぼっちに。

 

ひとりで片付けちゃおうか?

 

いや、やめた。

ちょうどいい具合に、CDラジカセが机の上に置いてある。

 

わたしはラジカセの真横の椅子に腰掛け、とあるCDを再生して、

目をつぶって聴き始めた。 

 

 

 

 

 

チャイコフスキーの『1812年』

「Σ( ;゚д゚)ドキッ!

 

わたし「(思わず目を見開いて)

 荒木先生……。

 おかえりなさい。

 ご明答。」

 

わたしも、他人(ひと)のこと、

言えないかもしれない。 

 

わたし「ラジカセ勝手に使ってました、すみませんでした」

荒木先生「いや~いいんだよ。こっちも待たせてしまってごめんねぇ。

 

 いいよね。『1812年』、こう、勇ましくってさ。

 

 青島さんらしい選曲だと思う

 

 

もし、

青島さんみたいな曲だ』って、

荒木先生が言っていたら、

 

わたしは、心臓が張り裂けそうになっていたかもしれない。

 

 

…さすがに、それはないか。

先生の認識からして。

 

 

帰ってきたアカ子「あ、チャイコフスキーだ。

 しかも『1812年』」

わたしと先生『さすが。』

アカ子「勇猛果敢でいいですよね。

 以前、蜜柑……うちのメイドが、寝坊して起きてこなかったときに、この曲を大音量で流して無理やり起こしたことがあって――」

 

荒木先生「(^_^;)か、片付けしよっか」

わたし「(;-_-)さっさとやっちゃいましょう」

 

 

【愛の◯◯】正しいぜんざいのおごり方

戸部邸

やぁ、居候大学生の流(ながる) です。

土曜だから、というわけではないのですが、講義もなく、ゆったりとしています。

今年度で卒業だもんねーー。

そのはず。

 

朝から、

アツマは大学のサークルに、

愛ちゃんは都立図書館に行くのだと、

出かけてしまい、

明日美子さんは、ブランチを自分で作って食べたら即座に眠りに行ってしまったので、

――昼ごはんを、あすかちゃんといっしょに作っているところ。

 

 

× × ×

 

あすかちゃん「(笑顏で)ふー、おいしかった」

 

ぼく「あすかちゃん、高校で何部に入ったんだっけ」

あすかちゃん「スポーツ新聞部です」

ぼく「…す、すごい部活だね」

 

あすかちゃん「流さん、本の話なんですけど」

ぼく「本か。なにか読んでるんだ、あすかちゃん」

あすかちゃん「織田作之助って作家がいるじゃないですか」

 

名前だけ知ってるなんて言えない。 

 

ぼく「(;・∀・)い、いるねー」

あすかちゃん「『夫婦善哉(めおとぜんざい)』っていう小説を、読み終えたんです! 今年は兄貴より絶対1冊でも多く本を読んでやるぞ、って、やる気出してるんですよ。

 流さんは、『夫婦善哉』、読んだことありますか?」

 

 

夫婦善哉 決定版 (新潮文庫)

夫婦善哉 決定版 (新潮文庫)

 

 

――うぐぅ 

 

正直なぼく「ない」

あすかちゃん「ウッソー、意外」

ぼく「ちょ、長編小説だっけ?」

あすかちゃん「やだなー短編ですよw」

 

うぐぐぐっ 

 

あすかちゃん「でも……」

ぼく「でも?」

あすかちゃん「『夫婦善哉』にはですね、続編の『続 夫婦善哉』が、なんと存在したんですよ……!!」

ぼく「エッ知らない」

 

× × ×

 

あすかちゃん「流さんは、知らない時はキッパリ『知らない』ってホントのこと言うから、ステキだと思います」

ぼく「(髪をポリポリしながら)そうかなあ? アツマのほうが、知ったかぶりをしないよ?」

あすかちゃん「謙遜しなくても~」

ぼく「ハハハ…それほどでも。ありがとうあすかちゃん、そう言ってくれるとうれしいよ」

 

よ、よし、たまには家族サービスだ。

 

家族じゃないけど、戸部邸のみんなは家族なんだっ。 

 

ぼく「あすかちゃん、夫婦善哉ぜんざい)を読んだ記念に、ぜんざいを食べさせてあげるよ。ほら、近所に、人気の甘味処が――」

あすかちゃん「スマブラやりましょう

 

 

【愛の〇〇】同じひとの被写体を何枚も――

1時限目があるらしく、

珍しく早く起きた兄と、

サシ向かいで朝ごはんを食べる羽目になった。

 

兄「そういやおまえ部活決めたんか」

わたし「決めたよ。当ててみてよ」

兄「クイズかよ」

わたし「ノーヒント」

兄「まさかサッカー部マネジになって藤村の後継者を狙うとか」

わたし「はい!? わけわかんないよ」

 

兄「でもノーヒントだとサッカー部ぐらいしか思いつかない」

わたし「なんで?」

兄「接点」

わたし「藤村さんやマオさんとの?」

兄「そう」

 

わたし「サッカー部にも、マオさんから誘われたんだけどね…」

兄「断ったん?」

わたし「(コクン)」

 

兄「いやな悪寒がする」

わたし「どんな悪寒?w」

 

フフフ……。

 

兄「すっ、すっ、スポーツ新聞部

わたし「ファイナルアンサー?」

 

兄「お、おまえがそんなニヤケ顔するっつーことは…!」

 

わたし「正解」

 

兄「○| ̄|_だめだぁ…。

 スポーツ新聞部かよ、よりによって…!

 その部活の名前は、もう耳にしたくなかったあ……」

わたし「なんで?

 お兄ちゃんのおかげで、スポーツ新聞部できたんじゃん」

 

そう。

スポーツ万能の兄が、

いろんな部活に「助っ人」として駆り出されたことで、

うちの高校の運動部の成績が軒並み向上し、

言わば、兄は『スポーツの功労者』として、

母校の歴史に残ってしまったのだ。

 

「卒業した先代の部長が戸部センパイのファンでね…、

 部活というよりも『戸部センパイの活躍』をたくさん記事にすることで、わがスポーツ新聞部も、校内に浸透して行ったんだよ」

 

こう語ってくれたのは、

スポーツ新聞部新部長の中村創介(そうすけ)さん。

 

――何やってんの、お兄ちゃん。

 

「兄は有名人だったんですね…」

 

 

ある日の放課後、

誘い込まれるように、

スポーツ新聞部のドアを叩き、

中村さんの熱弁を聴いて、

わたしはなぜか、『そこ』に引き込まれていった。

 

上級生が卒業して、

スポーツ新聞部は現在4名、

部長の中村さんのほかは、

2年生が3人いて、

 

  • 岡崎竹通(たけみち)さん
  • 瀬戸宏(こう)さん
  • 一宮桜子(いちみやさくらこ)さん

 

桜子さんは、女子部員が増えるからと、とりわけわたしの入部に熱心で、

 

「いま、球技担当がいないの。

 わたし? わたしは格闘技の担当。

 分担とかは、フレキシブルだけど」

「フレキ…シブル?」

「あ、だれがどのカテゴリーの担当かはアバウトってこと」

「はぁ……」

「ねぇ、戸部さん、あなた球技担当にならない?

 あなたなら、なれるわ…

 

桜子さんは、不可解なことをつぶやいたかと思えば、

わたしの手を取って、

サッカー部の練習場に連れていった。

 

「サッカー興味ある?」

「み、観るのは好きです…」

「海外?」

「いえ、最近はJリーグです、うちDAZN入ってるので」

「へぇー! すごい! 

 どこのファン?」

サンフレッチェ広島

「え!? どうして?」

「知り合いの人の影響で…そのひとは、グランパスよりも西のクラブにしかほとんど興味がないみたいで…今一番アツいクラブはV・ファーレン長崎だって言ってました」

「そのひと、西日本のひと?」

「いいえ、東京のひとです」

 

そしてわたしは、

桜子さんにデジカメを手渡され、

OG藤村さんのあとをついだ、マネージャー長・笹島(ささしま)マオさんの許諾を得て、

サッカー部の練習風景を写真におさめた。

 

 

 

 

 

 

 

平等に撮影したはずだったのに、

気づけば、

何枚も同じひとの背中が、

被写体になっていて、

ユニフォームの背中に、

 

HARU

 

ってアルファベットで書かれていて、

 

 

 

――絶対に兄には秘密にしてやる。

 

そう決意して、

わたしはスポーツ新聞部に入部したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

【愛の〇〇】自分のお金で……

JR御茶ノ水

戸部「おっす」

わたし「おっそーい」

戸部「はっやーい」

わたし「‪( ' ^'c彡))Д´)パーン‬」

 

マクドナルド

わたし「(˶・ᴗ・˶)あんたこれまでに講義何回サボった?」

戸部「(; ゚д゚)はぁ? サボるのが前提ってか?

 サボったことねーよ!!」

わたし「(・д・)チッ」

戸部「藤村はどーなんだよ」

わたし「『切る』わけないじゃん」

戸部「髪を?」

わたし「‪( ' ^'c彡))Д´)馬鹿じゃないの!? 文脈からいって講義を『切る』『切らない』のことに決まってるでしょ」

 

戸部「そっか、根は真面目だもんな、藤村」

 

えっ?

戸部、そんなこと高校時代言ったことなかったじゃん。

 

戸部「でも、マックの2階で男の顔をビンタするのはやめような」

 

😡💢

 

わたし「戸部が単位を落としますよーにっ」

戸部「ひでーなおい」

わたし「二外(にがい)落として留年しますよーにっ」

戸部「しねーよっ」

 

戸部「おまえ二外なんだったっけ」

わたし「ばかね、フランス語に決まってるじゃん」

戸部「ああ、専攻がフランス語とかフランス文学とか、そっち方面になる予定なんだっけ。

 いいなぁ、葉山が高校時代フランス語の授業受けてたんだろ? 教わり放題だ」

 

わたし「はーちゃんには教わらないよ」

 

ふふふ、

戸部、目が点になってるw

 

戸部「それは…葉山の負担も考えてのこと、とか」

わたし「それもあるけど、もう大学生だしさ。

 自分の学問は自分で修(おさ)めるのだ」

戸部「(だんまり)」

わたし「塾講のバイト始めるんだよ? わたし。

 自分の服も、

 自分の靴も、

 自分のカバンも、

 自分のお金で買わないとね、

 やっぱり、大学生にもなったら――」

 

戸部「それ、葉山には絶対言うなよ」

 

(・_・;)

 

戸部「おまえの信条を見せびらかして、葉山をナーバスにさせるんじゃねーよ」

わたし「い、言うわけないじゃん、

 まだ言ってないんだし、はーちゃんナーバスにさせてないし」

戸部「そうか、ならよろしい」

 

(´•_•` )

 

わたし「……いま、わたしたちが、高校生だったらさ、この場で大ゲンカになってるよね。

 1週間ぐらい、口聞かなくて、さ。

 

 ほら、

 あったよね?

 そんなことさ……」

 

ああ……。

言いすぎた、って表情に、

戸部、なってる……。

 

戸部「(・∀・;)…藤村?」

わたし「ごめんなさい。

 ごめんね、戸部。わたしトイレ」

 

× × ×

洗面所で顔を洗って戻ってくると、

戸部がなんとわたしのポテトを全部平らげていた。

 

戸部「藤村、ラーメン食いに行こう」

わたし「!?

戸部「サークルの先輩に美味いラーメン屋さん教わったんよ。女性でも入りやすいし。おまえの胃袋だったら、マックのあとでも食えるはずだから」

わたし「……仕方ないなぁ。

 

 

 あ、あ、ありがとう」

 

戸部「( ^_^ ;)素直なのか素直じゃないのかはっきりしないなー」

 

 

 

戸部に連れられて入ったラーメン屋さんは、ほんとうに美味しくて、

わたしは、塾講で稼いだお金で、

はーちゃんに本をプレゼントしようかなあ……とか考え始めて、

どんな本がいいのかな。

どんな本が……。

 

ま、後で考えりゃーいいか。

課題。

【愛の〇〇】ふたりの距離とロッテリアとの距離の概算

ギン……

ギン……?

おいてかないで、

おいてかないで、ギン!

 

『……ギン、あたしのほうも見て…』

 

『( ゚д゚)ハッ!』

 

夢だった。

居眠りしてた。

 

戸部アツマくん「おはようございます」

あたし「こんにちは」

 

寝ぐせ。

寝ぐせついてる、

恥ずかしい。

 

戸部くん「ギンさんからの差し入れです」

 

Σ(OωO )

 

あたし「あっ、そう」

 

袋を受け取った。

ロッテリアのリブサンドが入っている。

 

戸部くん「うれしそうですね」

あたし「べ、別に……、

 平成いっぱいでリブサンド終わるから、食べとかないともったいないから――」

 

悟られた。

あたしの好物が、

ロッテリアのリブサンドだってこと。

ギンだけが知っている。

 

戸部くん「じゃあおれはこれで」

 

あたし「ちょっと待って!」

戸部くん「へ?」

 

あたし「あなた、両想いのひとがいるのよね」

戸部くん「……この前、ルミナさんに往復ビンタされたときのことですか。

 片思いされたことがあって、

『いまは両想いだ』って言ったら、

 ルミナさんに肉体言語を食らって――」

あたし「肉体言語!?

 あんたオタク!?」

戸部くん「ちがいます」

 

そしてあたしはそのあと、

戸部くんの説明を聞いて、

羽田愛ちゃんという娘の存在と、

彼女と戸部くんの関係にまつわるいきさつを詳(つまび)らかに知った。

 

戸部くん「しょうじき、『両想いだ』なんて、思ってもみないことを言ったもんです」

あたし「あんまり人前で、『片思い』『両想い』とかあけっぴろげに言わないほうがいいわね、たしかに。」

戸部くん「でも言っちゃったんです」

 

あたしは39秒くらい考えたあとで、こう言った。

 

あたし「『距離感』が、つかめない…?」

戸部くん「そうですね、距離感がわかんないです。

 いきなり人前で愛のことを、

『おれの大切な人!』

 とか言っちゃったり――。

 

 おれ、多分、『彼氏』とか『彼女』とか、そういうことばが嫌いなんです」

 

あたし「じゃあ、彼女が『彼女』じゃなかったら、『彼女』以外のなんなの?」

戸部くん「なんなんですかね……。

 それこそ、あんましそういう話、人前でするもんじゃあないんじゃないですか」

 

<ドタドタドタ

 

ギン「おぅい、アツマくんがあんまり遅いから連れて帰りに来たぞい」

戸部くん「あ、ギンさんすんません」

 

取り込み中だったのに……。

 

あたし「取り込み中だったのに……。」

 

ギン「冷めないうちに食えよルミナ」

 

取り込み中だったのに……。

ギンのアホっ

 

あたし「戸部くん、ギンの弱点教えてあげる」

戸部くん「何ですか?」

あたし「ギンはエビバーガーが上手く食べれない」

ギン「(´・∀・`)ハハハ…」

 

あたし「こ、こんど、そっちの部室で、公開エビバーガー処刑してやる……」

 

ギンと戸部くん「?」

 

あたし「ギンがエビバーガー食べるの失敗するとこ見せて拡散してやるんだから!

戸部くん「いや、食べ物で遊ぶのはよくないと思いますw」

ギン「…今度両サークル合同でSNSの使い方教室でもやるか?w」

 

あたし「拡散! 拡散!!

 

 

【愛の◯◯】恋愛小説家の悟り(?)

文芸部の部活中――

 

伊吹先生「♪~(´ε` )」

 

わたし「せんせい、読書会やってるワキで、鼻歌歌わないでください…」

伊吹先生「Σ( ;゚д゚)アッ!!」

 

香織センパイ(部長)「チャットモンチーの『恋の煙』ですよね」

わたし「か、香織センパイが、乗っていった!?」

 

 

恋の煙

恋の煙

 

 

伊吹先生「そうだよ~よくわかったねえ、あたしが高校生の時の曲なのに」

香織センパイ「”歌詞”が好きなんです」

伊吹先生とわたし「へぇえ~」

香織センパイ「羽田さんまでハモらなくともw」

 

 

 

部活終わり

帰り道にて

わたし「あの……香織センパイ」

香織センパイ「『恋の煙』のこと?」

わたし「はい、”歌詞”が好きだ、ってセンパイが言ってたのが気になって」

香織センパイ「(自嘲気味に)やっぱりw」

 

香織センパイ「わたし恋人いない歴17年で……ことしで18年か」

わたし「(;´Д`)あ、あの、わたし、やっぱりへんなこと訊いちゃったみたいです」

香織センパイ「(なぜかスルーして)恋愛小説書いてるの。恋人いない歴17年以上なのに。なんども原稿用紙丸めてるから、ぜんぜん完成しないけど」

 

手書きなんだ。 

 

香織センパイ「(なぜか語り口がなめらかになって)でもね……恋愛小説書き続けてると、『恋の煙』の歌詞が理解できるようになったの。

 ほら、リアルな恋愛体験しないと、恋愛小説にしても恋の歌にしても理解できない、ってよく言うじゃない?

 わたしも恋愛小説書き進めて、何度も原稿用紙丸めるようになるまでは、そうなんだろうな、って思ってた」

 

風がそよぎ、

枯れ始めた桜が揺れ、

香織センパイのスカートも揺れた。 

 

香織センパイ「でもーーあれ、ウソだったんだよ。」

わたし「あれ、というと、つまり?」

香織センパイ「恋愛体験云々の俗説」

 

リアルな恋愛体験しないと、恋愛小説にしても恋の歌にしても理解できない

 

……なるほど。

↑の『俗説』を、うさんくさいとはいわないけど…、

一理ある。

 

香織センパイ「(笑って)だって、ひとは恋愛体験を、つくり出せるんだもの」

【愛の〇〇】ルミナさんの『Shapes Of Love』

おれ「(´∇`)なんだか変な感じだなぁ、平日のこの時間帯に勉強してないって」

ギンさん「慣れるまでに時間がかかるかもね」

 

鳴海さん「――それで、きょうは何時からプールに行こうかね」

 

 

ドドドドド

 

ルミナさん「ちょっと! なに大音量でジャズ流してんの!? こっちのサークル部屋まで響いてくるじゃない、音、絞ってよ…」

ギンさん(チラッ)

ルミナさん「ギンのアホ!

 なにあたしのスマホ覗き込んでんのよ!!

 ひとのスマホ覗かないでよ、なぐるよ!?」

ギンさん「Every Little Thing

ルミナさん「(っ・д・)=⊃)゚3゚)'∴:.」

 

ギンさん「これ、おまえが産まれる前の音源w」

 

 

Time to Destination

Time to Destination

 

 

ルミナさん「(> _ <    )お互い様でしょ、産まれる前なのは!!」

 

ルミナさんが、スマホをポロり、とおれたちのサークル室のソファに落とした。

 

ギンさん「わかったわかった、いま音量下げるから」

ルミナさん「((( ̄へ ̄井) フンッ!!」

 

『スタスタスタ』

 

おれ「あのー」

ルミナさん「なに」

おれ「たまにはルミナさんの児童文学サークルも見学したいかなー、と思いまして」

 

× × ×

 

ルミナさん「ふーん、あたしらのサークル名の由来、わかったんだ、えらいえらい」

おれ「それで本題ですが。

 

 さっきルミナさん、おれらの部屋に殴り込みかける前に、Every Little Thingの――『Shapes Of Love』聴いてたでしょう」

 

ルミナさん「(呆然として)どうしてわかるの……」

 

おれ「ルミナさんが落としたスマホからかすかに聴こえてきて。

 落としたはずみに、また、再生されちゃったんですね。

 母がむかしよく聴いてたんですよ、『Shapes Of Love』」

 

ルミナさん「(わざとらしく本棚の整頓をしながら)ふーーーーーーん、それで?」

おれ「片思いの曲ですよね

 

ルミナさんの本棚をいじくる手が急にピタリと止まった。

 

固まり始めてしまうルミナさん……おいおい。

 

ルミナさん「他人の色恋沙汰、すき!?」

おれ「( ˊᵕˋ ;)いや、そういう意味じゃなくて、意外だなあと思って」

ルミナさん「意外ってなによ」

おれ「( ˊᵕˋ ;)か、歌詞と、ルミナさんの勝ち気な性格のギャップが」

ルミナさん「勝ち気!? あたし、勝ち気!?」

 

地雷踏んだよぉ。

だれかおたすけ…

 

ルミナさん「と、戸部くんは、片思いしてる女の子とか、いま、いるの?

 そこまで過剰反応するってことは!!」

おれ「( ˊᵕˋ ;)💦片思いされたことならあります」

 

ルミナさん「………………………」

 

ルミナさん「す、スポーツできる男子は、やっぱモテるのね」

 

おれ「いまは両想いだけれど

 

そしておれは――、

逆上したルミナさんに往復ビンタされた。