【愛の◯◯】ハルくんの落としもの

 

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(↑ のつづき)

 

 

アカちゃん「じゃあ、ポニーテールにしてみようかな」

わたし「あ、それいい!!!」

 

アツマくん「(狂喜した顔で)ポニーテール!!!!!!!!

わたし「(頭をはたいて)いやらしい! 自重しなさいよ」

 

アカちゃん「(すてきな微笑を浮かべて)愛ちゃん、ヘアゴムある?」

わたし「ないわけないでしょ」

アカちゃん「じゃあ貸して♫」

わたし「貸さないわけないでしょーw」

 

 

 

 

しばらくのち、ポニーテールに結わえたアカちゃんが戻ってきた。

 

うん、似合ってる似合ってる。

 

それに引き換え、この戸部アツマって男は。

いやらしそうな眼でアカちゃんのポニテ姿を見て・・・

ひどい。

しつけなきゃ

 

アツマくん「そういえばさあ」

わたし「なに(-_-)」

アツマくん「藤村の後輩のハルくんが、おとといここに来たとき、落としものしちまった~って、連絡来てたじゃん」

わたし「( ゚д゚)ァッ! そうだった」

 

 

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↑このとき

 

アツマくん「今日あたり来るらしいよ、学校で藤村がそう言ってたから」

わたし「そっか。

 アカちゃん、『ハルくん』っていうおもしろい男の子が、たぶんもうすぐここに来るよ、落としもの取りに」

アカちゃん「おもしろいって、どんなふうに……(; ^ω^)」

 

ピンポーン

 

アツマくん「お、言ってるそばから」

 

 

 

ハルくん「すみませんでした・・・orz」

アツマくん「気にすんな! もっと堂々としないと、試合で戦えないぞw」

ハルくん「ほんとそうですね」

アツマくん「これから『ハル』って呼び捨てにするから」

ハルくん「あ、もちろんオッケーですよ」

 

わたし「アカちゃん、彼が、サッカー部で藤村さんの後輩のハルくん。

 わたしたちと同学年よ」

 

アカちゃん「ハルさん、初めまして、愛ちゃんと仲良くさせてもらってるアカ子と申します。どうぞよろしく。」

 

なぜか硬直するハルくん。 

アカちゃんを見た瞬間だった。

 

ということは、まさか・・・( ̄▽ ̄)

 

ハルくん「えーっと、えーっと、ふたりは、同じ学校ですか?」

アカちゃん「ええ、そうですよ」

ハルくん「ものすごい名門ですよね……」

アカちゃん「通ってると、そういうこと、ぎゃくに意識しないんですよww」

ハルくん「そこらへんが名門です

 

わたし「ハルくんもアカちゃんも、同学年なんだからタメグチで行こうよ」

ハルくん「そうだそうだ……。

 アカ子さん、と呼べばいいかな?」

アカちゃん「なんでもいいわよ

 

アツマくん「おい、肝心の落としものの件」

わたし・アカちゃん・そしてハルくん「あっ!!

 

 

Orange 第1巻 (少年チャンピオン・コミックス)

Orange 第1巻 (少年チャンピオン・コミックス)

 

 

アツマくん「ハル、たぶんハルがサッカー始めたのって、この漫画の影響なんだろ」

ハルくん「そうなんですよ!!! 

 単行本1巻の初版が、ぼくの生まれた年と同じ年なんです」

 

わたし「ってことは・・・2002年?」

ハルくん「そうだよ、日韓ワールドカップの年」

 

アカちゃん「えっ、わたしたちが生まれた年に、日本でワールドカップがあったの?

 初めて知った

 

とうぜん、わたしとハルくんとアツマくんは、過去に前例のないぐらい驚愕してしまって、しばらくだれもなにも言えなかった。

 

ハルくん「め、名門校特有の、ジョークだよね、今のは?」

アカちゃん「ジョークじゃないわ

わたし「い、いや、さすがに、お笑い芸人みたいにボケをかましたかと思ったよ…(^^;)」

 

 

Orange 第1巻 (少年チャンピオン・コミックス)

Orange 第1巻 (少年チャンピオン・コミックス)

 

 

アツマくん「でもすごいチョイスだよな。『キャプテン翼』じゃないんだもん。しかも、『翼』以外にも、『ORANGE(オレンジ)』以上に知名度があるサッカー漫画、いっぱいあるし。

 

 おれも題名知ってるだけだわ。

 不遇だよなあ、作品も、作者も

 

わたし「てっきりサッカーゲームのデータが入ったメモリーカード落としたかと思ったよw」

アツマくん「おれもw」

ハルくん「大切な漫画本なので、忘れてきたってことに気づいたときは、泣きました・・・」

アツマくん「わかるわかる」

 

わたし「『漫画』ってすごいね。ひとの人生に影響を与えて、そういう大事な作品の単行本をなくしただけで、泣かせちゃうんだもん

アツマくん「おまえにしては名言じゃないか」

わたし「『おまえにしては』ですって!? わたしのことなんだと思ってんの、バカバカ」

アツマくん「おれの大切な人!

わたし「・・・・・・

 

こんどは・・・・・・わたしが硬直してしまった。

 

アツマくんの言葉は、全盛期の藤川球児の、火の玉ストレートみたい。

 

ほら、ハルくんとアカちゃんも赤面してるし。

 

ハルくん「じゃあきょうはもう帰ります」

アツマくん「あれ? きょうの夜、さいたまスタジアムウルグアイ戦だったよな? 日本代表の」

わたし「そうそう、テレ朝で中継するって、新聞にも書いてあったよ。

 一緒に観戦しよ?」

 

アカちゃん「遅くなるから帰ります」

わたし「えっ、もう少しいいじゃん」

アカちゃん「ハルくん、わたしはジョークを言ったつもりは全然ないから。

 それは覚えてて。

 

 それじゃごきげんよう

 

赤星憲広の全盛期のような走力で、アカちゃんは邸(やしき)から出て行ってしまった。 

 

ハルくん「しょ、初対面で、名門女子校のお嬢様を怒らせちゃった・・・(;゚Д゚)

わたし「大丈夫だよ、『消される』とか、そういうのはないから安心安心。

 たぶん

ハルくん「たぶん、ってなんだよ、怖い・・・(;゚Д゚)」

 

アツマくん「とりあえずおちけつ、ハル。

 ハル、おまえ、好きなサッカー選手とか、いないのか?」

ハルくん「ぼくは・・・試合観るより、試合で走り回ってるほうが、好きですから

わたし「へーっ、かっこいい! そう言い切れるの、かっこいいと思うよ!」

アツマくん「でも、珍しいよな。憧れの選手もいないし、テレビの試合中継もあまり観ないんだろ?」

 

ハルくん「そりゃ、チームメイトには、サッカーマニア、たくさんいますよ。毎日プレミアリーグの話ばかりロッカーでしてる先輩とか、FC東京の年度別得失点差をぜんぶ暗記してるJリーグマニアとか」

アツマくん「Jリーグマニアじゃなくて、FC東京マニアって言ったほうがいいと思うぞ、そいつは(; ^ω^)」

わたし「そっか、FC東京か。味の素スタジアム、近いものね」

ハルくん「味の素スタジアム、知ってるんだ」

わたし「あら、こう見えてもわたし、スポーツ観るのもやるのも大好きなのよ」

アツマくん「横浜は4位~

わたし「最下位になって暗黒再来で監督がソッコーで辞める阪神よりはマシよ!!

アツマくん「いや、球団名は出してやるなよ」

 

ハルくん「ほんとに詳しいんだね! サッカーでなく野球も」

わたし「いちばん得意なスポーツは水泳だけどね」

アツマくん「そういえば水泳っていったら、おれと池江璃花子(りかこ)って同学年だな」

わたし「どうしてここまで差がついたんだろうねw」

アツマくん「なんだとーっ

 

ハルくん「アハハハ、仲の良いカップって、いいですね」

 

恥ずかしさ(とうれしさ)で、わたしとアツマくんの頭は瞬時に沸点に達し、湯気が出るほどデレてしまったのでした。

 

【愛の◯◯】それでも、アカ子はイメチェンがしたい

放課後

戸部邸

愛がピアノを弾くのを聴いている、アツマとアカ子

 

これまで、ずっとロングヘアーで通してきた。

中等部時代はずっと、愛ちゃんより、髪が長かった。

でも、

高等部になって、愛ちゃんの髪が伸びて、わたしを長さで追い越した。

 

地毛なのよね、愛ちゃんの栗色の髪。

栗色の髪が、背中のほうまで伸びてきてる。

 

うらやましいことこの上ない・・・!

嫉妬?

違う、違う。

純粋に、ステキだと思って、

でも、愛ちゃんの伸びた栗色の髪と、どんどん「美少女」から「美女」に成長していく愛ちゃんのルックスが、

眩しすぎてーー。

 

わたし、この髪、切ろうかな。 

 

愛ちゃん「アカちゃん、その髪、切っちゃうのーー!?

わたし「エッ」

愛ちゃん「さっき呟いてた、『わたしこの髪切ろうかな』って」

わたし「アッ」

 

ついに、「イメージチェンジしたい」 っていう意思が、言葉になって、知らず知らず、口に出てしまうところまで来た。

 

愛ちゃん「アカちゃん。よく考えよう?

 わたし、アカちゃんの黒髪ロングストレート、憧れだったのに!

わたし「えっ!?」

 

わたし「愛ちゃんのほうが憧れだよ……」

愛ちゃん「えっ、どゆこと?」

わたし「えっと、愛ちゃんの髪、キラキラしてて、ずっと憧れてて…、(モゾモゾ)

 それに、愛ちゃん、すごい美人だし

愛ちゃん「(絶句)

 

 

アツマさん「おまえが美人じゃなかったら、だれが美人なんだ

愛ちゃん「(目を輝かせて)ほんと!? アツマくん

 

……どっからどう見ても、夫婦(^^;)

 

愛ちゃん「でも、アカちゃん、あなたが美人じゃなかったら、だれが美人なの? これ、全然お世辞じゃないからね」

わたし「あ、ありがとうっ」

 

アツマさん「アカ子さん、どうしても切りたいなら、切っちゃえばいいじゃないか」

愛ちゃん「アツマくんあんたバカじゃないの!?

アツマさん「ばかって言ったやつがばかだって、それ一番言われてるから」

愛ちゃん「アツマくんも『ばか』ってもう2回言ってるじゃん」

 

愛ちゃん「それはともかく、女の子が髪を切っちゃうって、すごく重大なことなのよ。

 男の子が思ってるより、ずっと」

 

愛ちゃん「アツマくん、前に、アツマくんから、『ま1/2』っていう漫画借りて、読んだことあったじゃない?」

 

 

らんま1/2 (1) (少年サンデーコミックス)

らんま1/2 (1) (少年サンデーコミックス)

 

 

アツマさん「あったあった、最初のほうの巻だけ読ませたっけ」

愛ちゃん「高橋留美子さん、だっけ? ほんとうに女性の漫画家が描いてるのコレ? って思ったけど」

アツマさん「い、いや、それはわかれよ(;゚Д゚)」

愛ちゃん「天童あかねちゃんっていう、乱馬くんの許婚(いいなずけ)が、長い髪をバッサリ切られちゃったじゃない。

 たしか、良牙くんっていう、水かけられると『Pちゃん』っていうかわいいブタさんになっちゃう男の子と、乱馬くんが対決していて、その対決のあおりを受けて、あかねちゃんの髪がバッサリ切られちゃうーーそんな流れだった

アツマさん「おまえ、漫画ほとんど読まないのに、どういう理解力の高さだよ、それ!?

 

愛ちゃん「(つっこみをスルーして)言ってなかった? あかねちゃんのクラスメイトの女の子が。

 『女の子が髪を切るってことが、どういう意味かわからないの!?』みたいな趣旨のことを言ってたでしょ」

 

アツマさん「たしかにそうだったな。

 でも、そんなに漫画が読みこなせるなら、愛にはこんど、ぜひ『めぞん一刻』を読ませたいな」

愛ちゃん「なんか小さな声でぼそぼそ言ってない?」

アツマさん「ん、なんでもnothing」

 

愛ちゃん「で、アカちゃんがイメチェン計画を立ててるのはわかるけど、もう少し考えてみよう? わたしとさやかとあすかちゃんと藤村さんが相談に乗ってあげる」

わたし「藤村さんってだれなの」

愛ちゃん「すごく頼りがいのあるおねえさんよ」

わたし「え(;^ω^)」

 

 

愛ちゃん「えーっとじゃあ、さいきん聴いて好きになった曲を1曲弾きます。

 

 THE BACK HORNっていう邦楽ロックバンドの、

コバルトブルー』って曲。」

 

 

 

 

 

♫『コバルトブルー』♫

 

わたし「すごく情熱的で執念を感じる曲ね。パッションといえばいいのかしら、パトスといえばいいのかしら」

アツマさん「うん、すっげえアツい! そんな曲だな」

 

愛ちゃん「そうね。曲も熱いけど、歌詞も熱いよね。詩的な比喩も使われているし」

 

わたし「わたしの髪も、コバルトブルーに染めようかな

 

愛ちゃん「それはやめなさい。

 

【愛の◯◯】ふたたび、わたしは奏で始める

夕方四時ごろ

アツマはフジテレビを観ていた

 

・競馬中継が終わる

 

アツマ「ふーん、アーモンドアイっていう馬、すげー強いんだなー」

 

やってきた愛「……競馬観てたの? あんた高校生でしょ」

アツマ「お前も高校生だろ」

愛「そういうこと言ってるんじゃないの」

 

アツマ「G1とか大きなレースたまに観るくらいだぞ」

愛「ジーワン???」

アツマ「ダービーは知ってるだろ、いちばん有名なレースの名前だし、イギリス発祥らしいから、イギリス文学にも出てくるんじゃないのか」

愛「(不敵に)ギッシングの『ヘンリ・ライクロフトの私記』って知ってる?」

アツマ「は、はい? ナンデスカソレハ」

 

 

ヘンリ・ライクロフトの私記 (岩波文庫)

ヘンリ・ライクロフトの私記 (岩波文庫)

 

 

愛「イギリス文学。

 英国が競馬の本場なのは知ってるわ。でも、この『私記』の語り手は、そんな競馬の流行とは逆に、競馬っていう存在を完全否定するのよーん」

アツマ(なんか、ムカつく(-_-;))

 

愛「有名どころでは、トルストイの『アンナ・カレーニナ』やゾラの『ナナ』にも競馬のシーンは出てくるけどねえ。

 

 ところで、わたしそんな話がしたかったわけじゃないんだけど。

 ・・・・・・もうすぐ藤村さんが、ここに来るんだったでしょ」

 

アツマ「あ!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

やがて、藤村さんと、彼女の後輩が、 戸部邸にやってきた。

 

藤村さんは、サッカー部のマネージャーを務めていた。

アツマくんが言うところによれば、藤村さんの部活の後輩が、男女ひとりづつ訪ねてくるということだった。

 

2年生マネージャーの「マオ」さんと、1年生選手の「ハル」くん。

 

藤村さん「ヤッホー」

アツマくん「ずいぶん気安いもんだな、藤村(-_-;)」

 

わたし「藤村さん! お待ちしていました」

藤村さん「愛ちゃーん!!!!!!

 

いきなり、藤村さんがわたしを抱きしめてきた。

 

わたし「はぐぅ」

藤村さん「あ! いま『はぐぅ』って言ったな、『はぐぅ』って!!

 くぁわいーい!!!!!!!!

 

わたし「やっぱりーー」

藤村さん「??」

わたし「やっぱり、アツマくんと違って、やわらかいですね、藤村さんのハグは

藤村さん「ええっ…(;゚Д゚)

 『アツマくんと違って』って、愛ちゃんと戸部、もうそんなところまで進展して・・・・・・」

 

ほっぺたをポリポリと掻くアツマくん。

らしくないぞ。 

 

藤村さん「マオ、ハル、紹介するね、こちら、戸部の彼女の羽田愛ちゃん

 

マオさん「( ゚д゚)」

ハルくん「( ゚д゚)」

 

わたし「・・・・・・(^^;)」

 

 

マオさん「どうも、サッカー部のマネジのマオです」

ハルくん「さ、サッカー部の1年のハルです」

藤村さん「ハル!

ハルくん「ビクッ」

藤村さん「もっとシャンとしなさい!」

 

……サッカー部で恐怖政治でも強いてるのかな、藤村さん(^^;

怯えた顔のハルくん。

 

ハルくん、わたしを初めて見た瞬間、目を丸くしてて、アツマくんがリビングに出てきた瞬間、口を半開きにしてて。

それで、藤村さんがわたしを紹介したときから、ずっと泣きそうな表情をしている気がするんだけど、気のせいよね?

 

 

で、とっととわたしはグランドピアノの前に腰かけたわけなのです。 

 

アツマくん「おい藤村、静かに聴いてろよ」

藤村さん「当たり前でしょ、ロックフェスティバルじゃないのよ

 

わたし「ロックフェスティバル・・・・・・w

 あ、あは、あはは、アハハハハ!!

 

笑いが止まらなくなってしまった。 

 

わたし「ふ、藤村さん、ごごごめんなさいwwwwごwwめんwwなwwwさいww」

藤村さん「愛ちゃん、毛虫でも食べたの!? (;゚Д゚)」

アツマくん「お、おい、水でも持ってくるか!? 愛」

 

わたし「(持ち直して)大丈夫。」

 

マオさん「すごいですね、藤先輩のイタズラにも負けない・・・!」

わたし「フジせんぱい?(きょとん)」

マオさん「あ、藤村先輩だから、藤先輩(フジせんぱい)です」

わたし「タメ口でいいですよ。学年上なんですから」

マオさん「そう? じゃあ、愛ちゃんって呼んでいい? わたしも」

わたし「もちろんです、あとで連絡先交換しましょ~♪」

マオさん「もちろん!」

 

わたし「じゃあグダグダするのも何なので、さっそく弾きますね」

 

♫演奏♫

 

 

こうしてーー、

ふたたび、わたしは、音楽を奏で始める。

 

 

 

 

♫演奏おわり♫

 

アツマくん、大拍手。

藤村さん、大拍手。

マオさん、大拍手。

ハルくん、大拍手。

 

みんなみんな、大拍手。

 

アツマくん「愛・・・・・・。

 嬉し泣き、できたな

 

わたし「そんなに涙出てないよっ

 

藤村さん「泣いたことは認めるんだ、愛ちゃんw」

アツマくん「ムッ💢」

藤村さん「あ、ごめんごめん(^_^;)」

わたし「もう、ふたりともw」

 

わたし「ハルくん、よね?」

ハルくん「は、はいっ!!(ガチガチになって)」

マオさん「こらハル!! 挙動不審!」

ハルくん「(しょげて)すいません……えーと、えーと、」

わたし「わたし、羽田愛」

マオさん「さっき藤先輩が紹介してたでしょ、もう忘れたの!?

 レギュラー入りできないよ!」

わたし「いいんですw」

ハルくん「(わたしに向かい)す、すみませんでした」

わたし「わたしも高校1年生、だから敬語は不必要」

ハルくん「アッ」

わたし「約束してw」

ハルくん「はい。

マオさん「ば、ばかじゃないの、ハル!? 敬語じゃん、それ」

藤村さん「ハル、おもしろいwwwwww」

 

ハルくん「いや、なんかーー、

 

(謎の間があって)

 

 住む世界が違うというか、そんな感じがあったんだよ

 同じ高1なのに、雲の上みたいなーー、

 漫画のなかから出てきたみたいな、そんな驚きがあったんだ……ごめん、言い方が変だな。」

 

わたし「ハルくん。」

ハルくん「や、やっぱ、変だっただろ!?」

わたし「わたし、三次元だよ

ハルくん「???????」

 

わたし「テストで100点取れないし、アツマくんとスポーツやると、いつもアツマくんが勝つ。

 そういう意味で、三次元の存在。

 ちょっと環境は特別だけど、おおむね普通の、高校1年生の女の子」

 

藤村さん「フフフフ」

わたし「むー、なんかおかしいですかー」

藤村さん「変わったね、愛ちゃん」

わたし「えっ?」

藤村さん「ユーモアが出てきた」

わたし「ああ、そういうことですか。」

 

藤村さんにそう言われたからではないけれど、ピアノを久しぶりに引いた身体の緊張をほぐすために、わたしは「ん~っ」と、天井に向かって『伸び』をした。

 

わたし「さっき藤村さんにいきなりハグを仕掛けられましたが・・・」

藤村さん「?」

わたし「わたし以上、あすかちゃん未満でした。

藤村さん「え・・・・・・何が?」

 

藤村さん、そこらへん、やっぱ鈍感。

 

 

【愛の◯◯】兄・妹・愛

 

あすか「お兄ちゃん、お姉さんと、うまくいってるみたいだね!」

アツマ「まーね」

あすか「あとは、お姉さんに、愛の告白だね

アツマ「ば、ばか」

あすか「フフッヒww」

 

アツマ「あすかーーあいつに、愛に、おれの中学時代のこと、話したよ」

あすか「えっ!!」

アツマ「でも、話せてよかったよ(朗らかな笑顔)。

 愛の告白はまだできてないけど、おれの過去の告白も、愛の告白と同じぐらい、一大告白だろ?

あすか「お兄ちゃん、うまいこと言おうとして、うまいこと言えてないよ」

 

アツマ「ところでーー妹よ、高校受験の勉強のほうはどうだ、うまくいってるか」

あすか「・・・・・・」

 

舌をベロンと出して、なぜか照れくさげに笑顔を見せるあすか。

 

アツマ「(震え声になり)な、なんだおい、意味深だな、もしかしてうまくいってないのか? おれに相談してみろ、きょうだいなんだから」

あすか「(スルーして)お姉さんが完ペキ元気になったら、また勉強教えてもらうよ」

 

とつぜん、あすかの両肩をガッシリとつかむアツマ。

 

あすか「(本邦始まって以来の困惑ぶりで)お兄ちゃん!? どうしたの!? い、痛いよ、ぶっちゃけ」

アツマ「話を逸らすなよ!

 

驚愕するあすか。

だったが、

兄は、強くつかんだ両腕を離し、柔和な笑顔になり、妹のあたまにポン、と手を置いて、

 

アツマ「兄貴も頼れよ。

 

あすか「(顔を赤らめて)ーースキンシップ、へた。」

アツマ「じゃあおまえのどこに手を置けばいいんだ?

 オッパイに置くわけいかないだろ? なw」

 

あすか「(ぶっきらぼうに)・・・・・・デリカシーなさすぎ。

 ろくでなし兄貴。

 

 

 

 

 

 

 

 ありがとう・・・・・・

 

 

 

【愛の◯◯】アツマくんと、亡くなったお父さんのことーー

土曜の昼下がり

リビング

 

 明日美子さんが、ソファーでごろごろにゃ~んと寝ている。

 

愛「明日美子さん。」

明日美子さん「ムニャ」

愛「明日美子さーん」

明日美子さん「アッ( ゚д゚)!」

 

愛「(^_^;)

 明日美子さん、書庫に入ってもいいですか?」

明日美子さん「いいよ。

 ・・・・・・わたしに言わなくても、勝手に行けばいいじゃんww( ^_^)」

愛「いいえ。

 なんか、この邸(いえ)の書庫には、許可をもらってから、入らなきゃいけないような感じがするんです。

 だから、できれば明日美子さんに、明日美子さんがいなかったら、アツマくんかあすかちゃんにーーひとこと断ってから、書庫に入るのが、マナーだと思って」

明日美子さん「真面目だねw( ^_^)」

 

 

 しかし、すぐに、明日美子さんは神妙な面持ちになって、

 

明日美子さん「どうもありがとう、愛ちゃん。

愛「・・・・・・はい。」

 

 

 

戸部邸のおおきなおおきな書庫。

 

明日美子さんの旦那さん……

つまり、

アツマくんとあすかちゃんのお父さんが、

あとにのこる人たちに、

遺してくれた書庫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

明日美子さんがベランダに行き、リビングに今度はアツマが来た

 

センター試験まで、あと3ヶ月。

私大入試が始まるまで、4ヶ月を切っている。

 

次々に、入試採点の不正が明るみに出ようとしている。

私立の医学部志望じゃなくてよかった(^_^;)

 

おれはけっきょく私立文系専願にした。

首都圏の、それなりに名のある私立大学を狙う感じだ。

学部はーーどうしようか。

漠然としすぎている。

 

愛がやってきた。

本を抱えているところを見ると、おそらく書庫から戻ってきたんだろう。

父さんの書庫かーー。 

 

おれ「そんなにたくさん本を抱え込むなら、『手伝ってくれ』って、言えばよかったのに」

愛「( ゚д゚)ハッ! そうだった」

おれ「おい、ボケてんなぁw(^_^;)」

 

愛「アツマくん、すごい本読んでるね

おれ「は!? (゜o゜;) 

 これは、各大学のデータとか、どんな学部があるかとか、入試日程はどうなってるかとかが、ぜんぶ書いてある本だよ。おまえも高校生になったから知ってるだろ」

愛「高等部!」

おれ「あ、はい、すみません(-_-;)」

 

愛「(口調が優しくなり)知ってるよ、もちろん」

おれ「じゃあなんで『すごい本読んでる』とか言うんだ、なんかきょうのおまえ、『ヌケてる』なぁ」

 

愛「(つっこみをスルーして)大学調べてるの?」

おれ「まーなー、どんな大学にどんな学部・学科があるかとか」

愛「真剣じゃん、関心関心」

おれ「馬鹿にしやがって(-_-;)」

愛「ばかにしてないよ! まじめだよ、アツマくんは」

 

つぶらな瞳で、困ったようにおれを見る愛。

こっちのほうが困るんですけど・・・(^_^;)

 

微妙な空気になり、おたがいめいめいの読むべき本をめくり始めた。

 

おれ「・・・・・・うっ」

愛「ど、どうしたの?」

おれ「い、いや・・・・・・その、」

愛「?????」

おれ「父さんの大学が載ってた

 

 

愛「あっ・・・・・・(゜o゜;)」

 

 

そう、

父さんが卒業して、

父さんが教えていた大学。 

 

 

おれ「いや、別にいいんだけどさ。」

 

おれ「自分語りは嫌われる、って良く言うけど。

 ちょっと昔ばなしが、したくなってきたよ」

 

愛「・・・・・・(・_・;)」

 

おれ「父さんが9歳のときに死んだのは、知ってるよな」

愛「うん……(・_・;;)」

おれ「大学では日本史を教えていたってのも、」

愛「知ってる(・_・;)」

おれ「専攻は近世史だったかな。要するに江戸時代だ。経済史だったか社会史だったか忘れたけど、地味な研究をしてたらしい。

 親不孝にも、おれの受験科目は世界史になるけど」

 

おれ「父さんはたぶん、地味な研究者だった」

愛「そんなことないよ!

 アツマくんのお父さんの本、書店でよく見るし、

 それに、

 わたしがアツマくんのお父さんの本、たくさん読んでるもん!!

 

おれ「・・・・・・そっか。

 おれさあ、

 中学のとき――、

おやじが大学教授だったのに、なんでおまえは成績悪いんだよ~w!』って、イジメの標的になったりしてたんだ。」

 

愛「ひ・・・・・・ひどい、ひどすぎるよ!」

おれ「そうだな、卑劣だった。

 だから、殴り合いのケンカばっかりしてた。

 

 それでさーー最初はボコられる側だったけど、次第におれもおれを『鍛える』ようになって。

 ボクシングジムとかにも、ほんとうはいけないんだろうけど、少しだけ通って、トレーニング体験をさせてもらったりとか。

 はじめは、カラダが耐えられなかったけど、どんどん耐えられるカラダになっていってさ。そこからは面白かったよ。

 

 ボコボコにされる側だったけど、最後は挑発してくる野郎をボコボコにする側になってた。

 あんまり強くなったもんだから、殴り倒して、イジメてくるやつを文字通り再起不能にさせたこともあってw

 

 担任がいい先生で。

 おれが強烈なイジメを受けていることを分かってくれたから、内申はお咎め無しだった」

 

・・・・・・予想通り、

愛が、震えて泣きそうになってるじゃねーか。

 

さて。

こっからがおれの仕事だ。 

 

愛「アツマくん、

 そんなこと、なんで話すの、

 話せるの……?

おれ「泣くな、愛

愛「そんなこと言ったって!!!!!! どうしようもないよっ!!!!!!!

 

おれは、黙って愛を抱きしめた。 

 

愛「(呆然として)・・・・・・

おれ「泣くな、っていうのはな。

 ほんとうは。

 かなしさや、くやしさで、もうおまえを泣かせたくないんだよ……

 

そうやって、ぎゅっと抱きしめてなぐさめるしか、能がなかったから。

 

おれは――父さんが、あすかやおれに注ぎたかった愛情のぶんも引き継いで、

愛を、ぎゅっと、抱きしめた。 

 

 

 

 

 

 

 

【愛の◯◯】葉山先輩へのリベンジを、文化祭で?

あれ……?

わたし、フランスに来てるみたい。

ヨーロッパ行きのチケットは、葉山先輩の手にわたったはずなのに。

 

ここ、フランスの、ワイナリーみたい。

 

!!

おとうさんがいる!!!

テーブルで、わたしの眼の前で、ワイン・グラスを片手に。

おとうさん…❤❤

 

「愛。」

「おとうさん」

「この赤ワイン、どうだ、一口ぐらいなら、お咎め無しじゃあないかな?」

それはだめ

「そうか……父さんらしくないこと、言っちゃったかな?」

そんなことないよ!

 

 ただ……成人して、一人前になって、ちゃんとしたオトナになって、その時おとうさんと、ワインを一緒に飲めればいいな❤」

「そうだね。」

 

父さん、この前、ル・クレジオと会ったよ。

「(興奮して)ホントに!? (≧▽≦)」

 

 

夢だった

 

愛「こんな時間に、夢、見て、起きた……、

 中途覚醒だな(-_-;) ほんとに、もう」

 

 

地上の見知らぬ少年

地上の見知らぬ少年

 

 

ル・クレジオ

これは、ル・クレジオが書いた、わたしが好きな本、中等部時代から、ずっと好きな本。 

 

AM3:00

 

愛「(ル・クレジオを閉じて)( ´Д`)=3」

 

愛「寝不足の影響かな、あんまり読書に集中できない」

 

 

階下

リビング

 

あっ・・・!

グランドピアノが、視界に入ってしまう。

 

弾きたい。

もう一度、グランドピアノで弾きたい。 

 

だけど、いま弾くのは、周りで寝てる人に迷惑。

 

愛はDVDで映画を観ることにした

 

 

スティング [DVD]

スティング [DVD]

 

 

愛がソファーでだら~っと『スティング』を観ているところに、流さんがやってきた

 

愛「流さん……どうしたんですか、こんな時間に」

流さん「お手洗いに行って戻ってきただけだよww」

愛「(カーっと赤面する)」

 

愛「す、すみません、デリカシーないですね、わたし」

流さん「そうかなあ?

『スティング』かぁ。

 むかし観たなぁー。

 でも、愛ちゃんが、ハリウッドの娯楽映画を観るなんて、意外だね。しかもこんな時間に」

愛「眠れないから再生してるだけです。ヨーロッパのひねった映画は、あまり好きじゃないし、よくわからないから、あまり観ません。

『スティング』にしたって名作だ名作だって騒いでる割には……ハリウッドの限界なんですかね。でもこういう頭空っぽにして観られるエンタメ系の作品のほうがいいし、こういう作品しか観ません。21世紀になってからのコンピュータグラフィックスでゴテゴテにした大作映画! とかは『論外』ですけど」

流さん「か、語るね、けっこう」

愛「わたし映画ファンじゃないです

流さん「でも、なんか、饒舌だよね?(^_^;)」

 

 

そして朝になった

食卓

 

アツマ「ごっそさん。きょうも美味しかったぞ、愛!」

 

そう言って、なぜか、愛の右肩をかるくポン、と叩く。

 

愛「?」

 

 

愛「はい、アツマくん、きょうもお弁当つくってあげたよ…」

アツマ「愛さぁん」

愛「なによ」

アツマ「こっち向いて、弁当渡してくれよ。

 アサッテの方向を向いて、弁当持ってたぞw」

愛(頬を赤らめて)「………はいっ、弁当!

アツマ「よーしよし、こんどは、人の目を見て弁当を渡せるようにしような」

愛(頬を赤らめて)「・・・・・・

 

アツマ「(あらたまって)・・・・・・あのさ。

 うちのクラスの藤村がさ。

『こんど愛ちゃんのピアノを、聴かせてほしい』ってさ。

 

 もし……藤村が、おまえがピアノにいるときに、無茶なこと言い出したりとか、へんなチョッカイ出したりしはじめたら、その、藤村を叩いてやるから、そう、いつかおまえがおれにやったみたいに『ハリセン』でパーンとーー」

 

愛「アツマくんっ、

アツマ「ん…」

愛「大好き。藤村さんも大好き

アツマ「ん(;´Д`)」

 

 

 

愛の女子校

昇降口付近

 

朝のアツマのことばで、晴れ晴れとした気分で、軽やかな足取りで階段に向かう愛。

 

と、掲示板に、とあるポスターが貼ってあって、愛はそのポスターに釘付けになってしまった。

 

 

拡散希望】【緊急】挑戦者求む!

 

文化祭。

葉山先輩に、我こそは勝たんと欲す乙女たちを!!

 

3本勝負!!!

 

  • クイズ対決
  • 料理対決
  • ピアノ対決

 

 

 

【七人衆】イチローと桑島千秋

都心

某公園

 

イチローは、桑島千秋と逢って、桑島から借りたものの、壊してしまったCDを、ようやく自腹で返すことができた。

 

 

Every Best Single+3

Every Best Single+3

 

 

桑島千秋(イチローたちの高校の同級生)「返すのおっそーい💢」

イチロー「いろいろあったんだよ、たてこんでたし、冬眠もしてたし」

桑島「エッ冬眠??」

イチロー「それに、新卒の部下のオンナがうざいし(💢ŏ﹏ŏ)」

桑島「なにそれwwwwwwwwwww」

 

腹蔵なく、桑島に、小鳥遊七鳥子(たかなしなとこ)の横暴ぶりを話した。

 

桑島「うん、長崎(←イチローの苗字)、たしかに、その娘に手を焼いてるの、わかる。

 顔が死んでるもん

イチロー「(ぶっきらぼうに)・・・うるさいなあ」

桑島「wwwwww」

 

ぼく、

テル、

圭二、

そして、桑島……、

そして、そして、

まぁ、『アイツ』の話は、いまはいいだろう。

 

高校時代の風景が、じぶんのなかに蘇ってくるーー。

 

 

 

回想

桑島「長崎さあ、宮田(←輝三つまりテルの苗字)や高橋(←圭二の苗字) と一緒で音楽祭の実行委員やるなんて、務まんの?」

 

イチロー「・・・・・・わかんないな。」

 

桑島「あんた、好きなアーティストとかいんの?」

 

イチロー「中学のときに、Every Little Thingの、べ、ベストアルバムを・・・・・・」

 

桑島「へぇ。

 でも、ベストアルバム聴いただけじゃ、『ELTが好きだ』とは、言えないよねえ?

 

イチロー( ゚∀゚)・∵. グハッ!!

 

 

https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41ZTP7YK9RL._SL160_.jpg

 

(↑のベストアルバムです)

 

桑島「そのCD、わたしも借りたこと、あったかもしんない」

イチロー「まじかよ」

桑島「だってめちゃくちゃ売れたんでしょ? ミリオンセラーどころじゃないよ。

サザンの『海のyeah!!』が一家に一枚あるように、ELTのアレも、日本人全部が一度は聴いたことのあるレベルだよ

イチロー「む・・・そうカモ(^_^;)」

 

桑島「長崎の好きだった曲は?」

イチローDear My Friend』『出逢った頃のように』『Shapes Of Love』、バラードだったら『Time goes by』よりも『Over and Over』のほうが好きだ」

桑島「へえー結構真剣に聴いてたんじゃん、関心関心」

イチローDear My Friend』の歌詞ーー

 

桑島「へ?」

 

イチロー男女の友情って、あるのかな

 

桑島「ながさき・・・・・・!? (゜o゜;)」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

あれから10数年。

 

桑島、

男女の友情って、あるのかな。

 

 

 

 

結婚はしてないみたいだけど、

彼氏がいるとか、

『結婚を前提に真剣に交際してる・・・』とか(ベタ臭いけど)、

そういうことは、

桑島も言わなかったし、

ぼくも訊いたりはしなかった。 

 

 

さーて、

祝日が終わり、

職場に、編集部に戻ったら、

厄介な小娘が、

小鳥遊が待ってるーー!! (-_-;) 

 

【愛の◯◯】ハムエッグ、ハムレット、そしてーー

水曜日の朝

食卓

朝食当番の愛は、ハムエッグを作ったのだが……?

 

愛「!!

 

愛「そ、そういえば、昨日の夜、アツマくん……、

 どーゆーこと??? (・_・;)」

 

 

 

 

えーっと、おれゆで卵食べられない(*_*;

 

 

愛「(フライ返しを差し向けて)なんでゆで卵食べらんないのに、目玉焼きハムエッグは食べられるのよ?

アツマ「(意に介さず)それを話すと学校に遅刻してしまう」

 

見ると、目にも留まらぬ速さで、アツマの皿から、ハムエッグがほとんど消失している。

 

愛「せっかく作ったのに、早食いすぎ。(ボソリと)」

アツマ「ごちそうさま

愛「(フライ返しをぶんぶん回して)もうちょっとよく噛んで食べなさい!?」

アツマ「女子高生が母さんみたいなことゆーな」

愛「なんだとぉヽ(`Д´)ノプンプン

アツマ「(わざとらしく)しっかし、愛の料理は、毎朝おいしいなあ~!!

愛「えっ(きょとん)」

 

アツマ「(微笑んで)ありがとよ、毎朝。」

愛(嬉しすぎてどうリアクションしていいかまったくわからない

 

 

アツマ(そういえば、いつから愛は戸部家の朝食当番になったんだっけーー?

 こいつがすこぶる早起きだからか?

 いや、こいつの家事スキルが高すぎて、必然的かつ結果的に毎朝……)

 

アツマ「まあいいや。

 愛に感謝しないといけないことはいろいろあるからな」

愛(嬉しすぎて立ったまま微動だにできない

 

流さんの援護射撃「ほんとうにそうだね。

 いつもありがとう、愛ちゃん^^」

 

愛の体温が朝から急上昇していってしまう

 

 

 

 

アツマ「(制服の襟を軽く正して)あ!

愛「Σ(;*_*)ナニ!? びっくりするじゃない、とつぜん」

アツマ「ハムエッグといえば」

愛「はぁ!?」

アツマ「おまえのハムレット、かってに借りてるんだった、ワリぃ」

愛「(*_*;ガクッ!!!!!!」

 

 

 

シェイクスピア全集 (1) ハムレット (ちくま文庫)

シェイクスピア全集 (1) ハムレット (ちくま文庫)

 

 

愛「ああ、松岡和子さん訳のちくま文庫ハムレット』のことね・・・(^_^;)

 テーブルについ置いてけぼりだったのが、なくなってたと思ったら(^_^;)」

 

 

愛「読める? シェイクスピア

 

アツマ「細かいことはわからんが、そういうことはすっ飛ばして読んでも、これが面白くてさあ、続きが気になって手と眼が離せないんだよw

愛「ほんとう!?」

アツマ「ほんとうだよ」

愛「(コホン、と咳払いし)ま、まぁ、シェイクスピアが読者をグイグイ引っ張っていくパワーは、やっぱり英国の文豪だけあって、ずば抜けているからね。

 

 あんがい、アツマくん、英文科とかに向いているのかも。

アツマ「(真顔で)なるほど」

愛「・・・・・・」

 

アツマ「で、この『ハムレット』、まだ借りててもいいんだな」

愛「ぜんぜんOK。でも読み切ってね」

アツマ「読み切ることができねーってことはないよww」

 

 

愛(そうか……)

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日・木曜日

アツマの高校

の教室

の昼休憩

 

藤村「(横から)今日、戸部弁当なの?」

 

ウッ・・・・・・(;´Д`)

藤村。

いやなやつに引っかかった。

 

藤村「めずらしーい!

 彼女に作ってもらったんでしょ? (・∀・)ニヤニヤ」

アツマ「ばばばばばか藤村ぁ(;´Д`)」

 

同級生A太『まじで!? アツマに彼女?』

同級生B助『衝撃・・・!』

同級生C男『おーい、戸部に彼女できたらしいぜ!!!!!!!』

 

同級生D美(♀)『(興味津々に)ほんとー、戸部くんに?』

同級生E奈(♀)『どんな娘どんな娘? ねーねーおしえてww』

 

藤村「(両手を広げて)あのね、戸部とひとつ屋根の下に住んでる娘なの」

アツマ「ああああああああああああ(;´Д`)」

 

終わった・・・・・・( ;∀;)

 

『まじかよ!?』

『詳しい説明しろよ戸部!』

『年下なの!?』

『マジで!? あんな名門のお嬢様と、戸部が・・・』

『おい! この卵焼き、死ぬほどうめえぞ!!!!!』

『ほんとだ!!!!! こんな美味い卵焼き今まで食ったことがねえ!』

『ねぇ、戸部くん!! 絶対離しちゃダメだよ、こんなに料理も上手で名門校で成績優秀の完璧美少女!!!!!!』

 

 

教室じゅうが、いや、教室の外までもが大騒ぎになってしまった。

 

『おい写真見せろアツマ!!!!!!!』

『しかもピアノ弾けるんでしょ!? そんなパーフェクト美少女ほんとに実在ーー』

 

 

急に険しい表情になり、机の両サイドを握りしめるアツマ。

 

藤村「ど、どうしたの、戸部!? (゜o゜;)

 ほんとにすごいよ愛ちゃん。こんなお弁当一朝一夕には作れないってーー」

 

アツマ「(重苦しい口調で)ピアノのことは・・・・・・

 いま、ピアノのことは言わないでやってくれ、頼む!!

 

 

 

静寂。

 

 

机に額をくっつけるアツマだったが、

 

藤村「(しょうがないなあ、といった表情で)また愛ちゃんに何かあったのね。

 なんでもっと早く言ってくれないかなあ。」

アツマ「く・・・・・・」

 

藤村「(しょうがない感じで、しかし確かな微笑で)相談にのるよ、戸部。

 わたしでよければ」

 

 

 

【愛の◯◯】読書量がピンチ!?

・きょうも羽田愛ちゃんはリビングで本を読んでいます

 

アツマ「愛。」

 

・愛、「( ゚д゚)ハッ!」と気がつく

 

アツマ「もとに戻ったな」

愛「なにが?」

アツマ「集中力。」

愛「読書の?」

アツマ「そう」

 

アツマ「おまえ、やっと『読書スランプ』から抜け出せたみたいだな」

愛(照れて赤くなる)

 

愛「そ、そんなことないよっ」

アツマ「なんで」

愛「(少し暗い表情で)さやかに読書量で負けてる

アツマ「青島さんに?」

愛「さやか、『半年で100冊本が読めた!』って言ってた。

 わたしは、高等部になってから、つまりこの半年で100冊到達してない……。

 (´・ω・`)」

 

アツマ「愛、ひとつアツマ大先生からアドバイス

愛「はい!?」

アツマ「(真面目な口調になって)あんまり他人と比べるもんじゃない。

他人と比べていじけるのは、よくないぞ!

 

愛「・・・・・・」

 

愛「・・・・・・なんかかっこいい

アツマ「ん? w」

愛「なんでもない!!!!! なんでもない

 

 

 

 

・・・・・・

愛「ひさびさに読んだ本を紹介するわ」

アツマ「どこに向かって」

愛「不特定多数よ

アツマ「・・・・・・(^_^;)」

 

愛「社会思想社から1986年に出版された、『ミステリーの仕掛け』っていう本。」

 

 

ミステリーの仕掛け

ミステリーの仕掛け

 

 

愛「いわゆるアンソロジー形式・・・・・・いろいろな著者の、ミステリーについてのエッセイが主に収められてる。編者は大岡昇平

 エッセイの他に座談会もあったけどね、安部公房花田清輝なんかが出席してる」

アツマ「あべこーぼーはかろうじてわかるぞ」

愛「安部公房が株式会社みたいな呼び方で呼ばれてるの聴くとかわいそう

アツマ「(゚Д゚)ハァ? 意味わかんねぇ」

 

愛「とにかく、いろんな作家や評論家や翻訳家や詩人や学者がミステリー語っててバラエティに富んでるのよ。

 偏見だと思うけど、わたし、どーーーーーーーーーーっしても『ミステリーしか読みません』って言う人を、『読書好き』と呼びたくないのよね」

アツマ「うん、偏見だな

愛「(クッションを投げつけてちょっと黙ってて!! ( >_<)

 

 

愛「ーーでも、ダシール・ハメットへの興味がよりいっそう湧いたし、大藪春彦なんか、この本読んでなかったら、たぶんこの先いっさい縁がない作家だったと思う。

 まぁ今どきの女子高生に大藪春彦はあまりにもミスマッチだと思うけど(^_^;)

クッションを投げつけられたアツマ「????????

 

愛「(不敵な笑みを浮かべて)アツマくん、ゆで卵はどれくらいのかたさがいい?*1

アツマ「?????????

 えーっと、おれゆで卵食べられない(*_*;

愛「ば、バカ!(゜o゜;」

アツマ「???????????(*_*;

 

 

*1:ダシール・ハメットらに代表される『ハードボイルド小説』の『ハードボイルド』の由来は、「ゆで卵のゆで方」とされている。

【愛の◯◯】キャッチボール

夕方

近くの公園

キャッチボール

 

ベイスターズの野球帽を被った愛「どりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

 

バシーン

 

かろうじて愛の剛速球をグローブに受け止めたアツマ、驚天動地。

 

アツマ「(  ゚д゚)」

 

野球帽の愛「・・・・・・捕った!?てへっ)」

 

 

アツマ「いや『てへっ』じゃねーだろ!?

 ソフトボールで日本代表になれるんじゃねーのか、おまえ!?(゜o゜;」

 

野球帽の愛「いや~今朝テレビ局がしつこくてイラついてんのよね」

アツマ「台風一過のあれか(-_-;)」

野球帽の愛「ただでさえ駅がおしくらまんじゅう状態だっていうのにN◯Kのアンポンタン!!

 

もう一丁、アツマのグラブに剛速球。

 

野球帽の愛「あんた、よく捕れるわね・・・(^_^;)」

アツマ「おまえに勝ってるのは運動神経だけだよ

 

 

 

 

ペナントレースも・・・

 

アツマ「カープ優勝しちゃったな…」

ベイス帽の愛「(野村)謙二郎の時代みたいにベイスターズとBクラスであえいでるのがお似合いだったのよ」

アツマ「ち、ちょっ!! おまえそれカープに対して酷すぎるぞ!? それにおまえほんとうにベイスターズ応援してるんか!?」

 

♫『熱き星たちよ』を鼻歌で歌う愛♫

 

アツマ「愛、おまえなー、カープはなあ、球団草創期にいったん潰れかけてるんだぞ」

ベイス愛「(きょとん)」

アツマ「あーwww おまえ! おまえ、ひょっとして『樽募金』のエピソード知らなかったなー? wwwwww」

ベイス愛「うるさいWikipediaイレコミ情報!!

 

『ズバーン』

 

アツマ「(グラブを見せて)はいこの通り(^_^  )」

ベイス愛「・・・ナイスキャッチ。(;・∀・)」

 

 

アツマ「(ボールを投げながら)パは西武が優勝したなあ~」

ベイス愛「(キャッチしつつも)・・・・・・」

 

ベイス愛「・・・・・・ホークスはきらい

アツマ「どして」

ベイス愛「ホークスというか、ホークスと内川が嫌い

アツマ「は!?(;´Д`) 私怨じゃねーか!!!!!!!」

 

 

ベイス愛「ねえアツマくんw(不敵な笑み)」

アツマ「どうした?」

ベイス愛「変化球投げてあげようか」

アツマ「マンガじゃねーんだぞ、むりだむり」

 

『ひゅっ』

 

『パシッ』

 

アツマ「・・・・・・(゜o゜;)

  手元で曲がって、落ちた・・・?

     スローカーブ!?

 

アツマ「お、おもしろくなってきたじゃねえか、女子が変化球投げるたぁ」

ベイス愛「ちょっと、『女子』とか関係ないでしょ💢」

アツマ「たしかにな、すまん。

(小声で)水原勇気、か

 

ベイス愛「え、え、なに、みずはら、って言った?(^_^;)」

アツマ「愛!!!!!!

 受けてみろ!!!!!!

握りを隠してボールを投げる)」

 

これは・・・

ふつうの、ストレート・・・

!?

 

ベイス愛「ひゃあ!

 落ちた!! 

 フォークボールみたいだった

 

 

 

※このブログはフィクションです

 

 

 

【愛の◯◯】スキンシップも程々に

愛の学校

放課後

体育館裏……

 

愛「……葉山先輩?」

葉山先輩「( 。^_^。)」

愛「いったいなんなんですか、いったい」

葉山先輩「ヨーロッパ旅行……

    辞退しようかなって」

愛「!!!

 

愛「それで、わたしの事情を知って、わたしにヨーロッパ旅行を譲ろうって魂胆……(ワナワナ)

 

ふざけないでください!!

葉山先輩「どうして?」

愛「わたし準優勝とかそういうのじゃないんですよ!?    失敗したんですよ!?   とちゅうで演奏ほっぽりだして──

葉山先輩「あなた、わたしのからだが弱いの知ってるよね?」

愛「し、知ってますよ。だからヨーロッパ旅行できないってはなしですか?

    でもわたしにそのはなしは振らないでください。わたしはわたしに負けたんですからっ」

 

スタスタと立ち去る愛。

 

葉山先輩「どうしよっかな……。

    金券ショップ……(腹黒な笑い)

 

 

 

 

戸部邸

 

♪トントントン♪

 

アツマ「愛か」

愛「(うつろな表情で)人生相談…

 

アツマのベッドに並んで腰掛ける。

 

愛「……そういうことなんだけど……」

アツマ「で、おまえはどうしたいんだ?」

 

とつぜん、アツマを背中から抱きしめる愛。

 

アツマ「ひひひひひいいいいいΣ(゜ロ゜;)」

愛「~~」

アツマ(なんだこいつ、欲求不満か?)

 

アツマ「あのなー愛ちゃん、そういう体勢で身体揺らされたりすると、こちらとしても苦しいんだ(;^ω^)」

愛「~~………………」

 

愛「アドバイス。」

アツマ「アドバイス言ったら、降りてくれるか?   身体から」

愛(コクンとうなずく)

アツマ「勝てばいいんだよ。

愛「(抱きついたまま)それだけ?」

アツマ「勝っちまえよ、葉山先輩に

愛「む~」

アツマ「だ、だから、はやく離れような!? 重苦しい

怒った愛「がるるる〜

アツマ「ば、バカ、引っかくな、引っかくなって(;´Д`)」

 

 

 

【愛の◯◯】感傷旅行と想い出旅行

ふたたび湘南地方某海岸

 

愛が、浜辺の岩に腰を下ろし、遠くをボケーッと眺めている。

と、思いきや、カバンにつけているDB.スターマンのキャラグッズを、ふにふにいじっているご様子。

おれは、すこし愛と距離をとって、それを後方から眺めているだけ。

 

https://ec.baystars.co.jp/upload/save_image/n_4573357000260_1.jpg

これと似たようなポーチが、愛の部屋にあったような気も・・・

 

 

あのー、すみません。写真撮ってもらえませんか?

 

おれに声をかけたのは、20代中盤と思しきカップル。 

 

アツマ「あ、OKですよ。」

カップルの男性「すみません、こいつがここで写真撮りたいって言い出したきり、譲らなくってw」

カップルの女性「あんたがなかなか写真撮る場所決められなかったからじゃん」

カップルの男性「おまえ、場所が悪いと文句言うだろ」

カップルの女性「馬で踏むよ!?

 

アツマ(う……馬? (^_^;))

 

アツマ「仲がいいんですね。うらやましいです」

カップルの男性「そ、そう見えますか……ありがたいです」

カップルの女性「(みるみるうちに顔が赤くなり)ありがとうございます……、

(男性と腕を組み)ほら、さっさと撮ってもらおー?」

カップルの男性「もじもじすんな

カップルの女性「キモいねーって、もう一度言ってやろーか?」

カップルの男性「! お、おまえ、おれがバドミントン対決で負けたときのこと、まだそんなに記憶してるのか……(-_-;)」

カップルの女性「(男性に寄り添い)ごめんね」

カップルの男性「?」

カップルの女性「『バドミ』とか言ってて、バカにしてた」

カップルの男性「……」

 

アツマ「あ、あの、いいですか、撮っても(^_^;)」

カップル『ご、ごめんなさい!』

 

♪パシャッ♪

 

カップルの男性「ありがとうございます。」

カップルの女性「(再度、ほんのりと赤くなって)あの……ここらへんの高校で、わたしたち、出会ったんです。

 廃校になっちゃったけど

アツマ「へえ~」

 

ロマンだなあ。

アニメみたいだ。

 

カップルの男性「おまえ、それ言う必要あるか!?」

カップルの女性「(照れ気味に)いいじゃん!! ほんとうに馬で踏むよ!?」

 

おれは馬で踏まれるのはゴメンだが。(^_^;) 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

「よぉ」

「アツマくん、どこ行ったかと思ってた」

「ちょっと頼み事をされてね」

「頼み事……?

 不安だったんだよ、(しだいに声が震えて)どっかに消えちゃったんじゃないかと思ったじゃん、空は曇ってきたし、波は強くなるし!」

「(愛のとなりに黙って腰掛け)悪かった」

「バカ。」

 

「(愛があたまをじぶんの肩に寄せてきているのを感じながら)悪かった。」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・

 

そのうち愛はスースー寝はじめてしまった。

まあ、いろいろあったし。

ただ、現在、おれの肩に寄り添った状態で爆睡中。

人通りが少なくてよかった。

 

波はさっきより穏やかになり始めた。

 

「ソトが3ラン打ってDeNAが逆転したけど、バティスタがタイムリー打ってすぐさま1点差かー。

 こりゃ、広島のサヨナラ勝ちかなw(^_^;)」

それはやだ

「ビクッ!! や、野球の話つぶやいた途端に起き出すんだからおまえは……」

ボール持ってくればよかった

「どうして」

アツマくんとキャッチボールしたかった

「・・・・・・またいつでもできるだろ。

 いつでも。」

 

「(泣き顔で)・・・・・・ありがと。

 

 

 

【愛の◯◯】ワンピースと野球帽

湘南地方の某海岸

 

せっかく、愛のやつ、ワンピース着て来たんだから、砂浜に立った姿がさまになるはずなのに。

 

なんだって……野球帽なんだよ、ワンピースに!!

 

きょうの朝

戸部邸

 

あすか「お兄ちゃん……お姉さんを、よろしくね」

アツマ「ああ。」

 

愛が降りてきた。

 

アツマ「(´º△º` )ポカーン」

愛「なに?    わたしのファッションセンスに、なにか問題でも」

アツマ「いや……ふつうワンピースには、麦わら帽子とかが……似合うんじゃないかなーと。

  なんでベイスターズの帽子かぶってんだよ(;´Д`)」

愛「ワンピースには麦わら帽子……すごくステレオタイプな偏見ね」

アツマ「(-_- )ムッ」

 

 

あいつ野球のルール知ってたのか。

まだ、愛について、知らない部分も多かったんだな。

 

広島が首位を独走し、きょうにも優勝が決まるかどうかという一方で、横浜DeNAベイスターズは熾烈な3位争いを繰り広げているらしい。

そもそも、きょうのDeNAの対戦相手は、マジック1が点灯している広島カープなのだ。

つまり、DeNAが広島にきょう負けたら、広島が地元で優勝を決める。

 

行きの車内で、どういうわけか、愛はひたすらベイスターズに苦言を呈していた。

 

 

 「恥ずかしくないの!? マツダ(スタジアム)の赤一色のスタンドに囲まれて、緒方と新井の胴上げを目の前で見せつけられるなんて

「い、いや、まだきょう広島が優勝するって決まったわけじゃないだろ」

 

「いまのDeNA不満なのか? 去年とか、リーグ3位で下克上して日本シリーズ行ったんだよな、たしか? すげーじゃねーか。リーグのお荷物みたいな感じだっただろ、『ベイス☆ボール』とか動画サイトでからかわれるのが通常営業でーー」

あんた、ニコニコ動画観てるんだw

「そ、そんな観てねぇよ!!(;´Д`) むしろお前がニコニコの存在知ってるほうが驚きだよ!!!!!」

中畑が監督のほうがよかった!!

「おまえ、ラミレス嫌いなのか!?」

「もっと言えば、『横浜ベイスターズ』時代のダメダメぶりが好きだったのに……(悔しそうな表情)」

「そ、それこそ『ベイス☆ボール』じゃねえか…(;´Д`)」

 

そう。

愛がかぶっている野球帽は、

DeNAではなく『横浜ベイスターズ 』 時代の帽子だったのだ。

 

なのに、カバンにつけているのは、DeNAのマスコットキャラである、

DB.スターマン』のグッズ。

 

いや、そりゃスターマンのほうがかわいいのは、わかるけどさー

 

 

 

DB.スターマン オフィシャルフォトブック『よこはまの星になる!』

DB.スターマン オフィシャルフォトブック『よこはまの星になる!』

 

 

(つづく)

 

【愛の◯◯】失敗……

開演前

ホワイエ

 

 さやかは、観客席から、コンテストに出る愛を見守ることになった。

 

愛もアカ子もいないし、ほかに親しい友だちもいるわけでもなく、兄も来れなかったと言うかそもそも誘わなかったし、一言で言えば、すごく手持ち無沙汰……。 

 

さやか「……(-_-;)」

 

『あれ?』

 

『きみ、もしかして愛の友だちの……青島さやかさん?』

 

さやか「(; ゚д゚)ハッ!」

 

さやか「は、はい、そうです、青島です、いつもお世話になっております。

 えーっと、戸部アツマさんと、妹のあすかちゃんとーー」

 

明日美子さん「アツマとあすかの母です♫」

流さん「えーっと、ただの居候の書生ですw」

 

さやか「どうも(^_^;)」

 

なんかすごくたくましそう。

 

ーー愛が告白しちゃったっていう、戸部アツマさん。

 

アツマ「きょう、自由席だよね、ここ?」

さやか「ええ、さすがに全席指定とかじゃないです、学校の設備なんで」

あすか「じゃあ、さやかさん、一緒にお姉さんの演奏観ませんか?」

さやか「うっ……(;´Д`)」

 

さやか「ご、ごめんなさい、いっしょに観る友達がいるので……」←ウソつけ

 

あすか「じゃあしかたないですね」

アツマ「それに、あまり大勢で応援団みたいになると、余計な緊張を愛に与えちゃうからな」

 

アツマさんの言う通りだと思う。

 

わたしは端っこのほうで観てる。 

 

 

ーーーーーーー

開演

舞台裏

 

つぎがいよいよ葉山先輩の出番だ。

 

優勝すれば、おとうさんや利比古やおかあさんに会える。

でも、葉山先輩に勝たれたら、仕方ない、と割り切る。

でも、葉山先輩の演奏のあとで無様な演奏は……、

したくないな。

 

アカちゃん「愛ちゃん、汗出てるわよ、緊張しすぎ」

愛「ご、ごめん、拭いてもらって」

アカちゃん「ミスしても命取られるわけじゃないから」

愛「物騒な……(-_-;)」

アカちゃん「失敗したって赤点も停学もないんだし、気負わずに行こうね?」

愛「うん、ありがとう」

 

 

そして葉山先輩がステージに立った。

ビリジアングリーンのドレス。

体型は、ほとんどわたしとおんなじ。

 

だけど、身にまとうオーラがすごくて、やる前からわたし負けそう。

 

♫演奏♫

 

(舞台袖で)

『すごい…』

『ゾクゾク来るね』

 

次第に舞台袖にいる人間が無口になっていく……。 

 

『……』

 

アカちゃん「……」

愛「……ゴクリ」

 

 

♫万雷の拍手♫

 

愛「・・・・・・(;´Д`)」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

観客席

アツマたちの席

 

すごい演奏だったな、素人でもわかった。これは次に出てくる愛はやりにくいぞ。

……しょうじき、愛より上手いのかもわからん。

愛の演奏を日常的に聴いてるから、逆に、この子の演奏が愛と比べて上手く聞こえなくもーー 

 

あすか「お姉さん出てきた!」

アツマ「(; ゚д゚)オット!」

 

あれが……愛なのか?

紫に近い色合いのドレス。

 

しょうじき、家にいるときは、妹みたいな感覚ーーつまり、あすかと同じような感覚で、「これまでは」愛に接してきたんだと思う。

あすかより少し胸が小さいぶん、あすかより少し背が高くて、それでもおれと比べたら10センチ以上、低い背丈。

 

いまステージにいる愛の背丈、もちろん、15、6歳の日本人女子の平均身長をわずかに上回るくらい、という事実は変わらないのに、

ものすげぇ大人びて観えるーー。

髪が長くなったのもあるけど。

この席から顔はよく見えないけど、

輝いて観える。

 

でも……。

 

♫演奏♫

 

(さきほどの演奏に勝るとも劣らない愛の演奏技術に息を呑んだみたいな観客席)

 

『・・・・・・ゴクリ』

 

あすか「……すごい。」

アツマ「変だ

あすか「(小声で)な、なにいってんの、お兄ちゃん」

アツマ「愛が愛じゃない気がする。

 いつもの愛を出し切れていない

 

 

・愛の演奏のテンポが加速していく。

 加速していき、そしてーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

ホワイエ

 

神妙な面持ちの、

あすか、

明日美子さん、

流さん。

 

あすか「大丈夫かな、お兄ちゃん、お姉さんにちゃんと向き合ってあげてるかどうか・・・・・・(;´Д`)」

流「大丈夫だよ。

 いまのアツマなら、きっと」

 

 

 

 

さやか。

ホワイエをさまよっている。

愛を探しているのだ。

でも見つけてどう対応していいやら、わからない。

 

ふと、ホワイエの隅っこで、戸部アツマの声らしい話し声がかすかに聞こえる。

 

アツマが、愛を、なぐさめているのだ。

 

とりあえず、ホッと胸をなでおろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドレスのまま終始うつむきっぱなしの愛ーー。

 

アツマ「愛、こんどさ。

 ふたりで海でも見に行こうや。

 そりゃ……おまえが見たかったのは、地中海の景色とかだっただろうけど。

 湘南の海だって捨てたもんじゃないし」

 

愛「・・・・・・」

 

アツマ「そろそろ、顔、上げないか(^_^;)」

 

愛「・・・・・・」

 

アツマ「・・・・・・」(どうしていいかわからなくなった)

 

 

とつぜん、愛が、アツマの胸に抱きついてきた。

 

アツマは自分のシャツがぐしょぐしょの涙で濡れるのがわかった。

 

愛はすすり泣きに泣いた。

 

アツマは、愛の泣きわめく声が、外に漏れないか心配だったが、たとえ外に漏れたって、どうってことないと、開き直るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【愛の◯◯】アカ子の◯◯

嫉妬というのは怖いものだ。

 

わたしは、中等部のとき、愛ちゃんのなににいちばん嫉妬していたのか。

 

ひょっとしたら、愛ちゃんの話しぶりが、わたしと似ているようで、わたしよりずっと洗練されていた──そんなことが、最大の嫉妬の対象だったかもしれない。

 

愛ちゃんもわたしも、「〜だわ」「~わよ!」「~よ。」みたいに、現代の女子中高生が使わないような──それこそ、古めかしい翻訳小説のような語尾を使う。

 

でも、それでいて、愛ちゃんのほうが、話し方として、ずっと自然だし、いまは嫉妬こそしてないけど、自分の日常での話し方が、ときおりイヤになったりしてしまう。

わざとらしいから。

 

……なので、電話で、あえてふだんのわたしの話し方を、封印してみることにした。

 

語尾。

 

♪TEL♪

 

愛「もしもし」

アカ子「夜遅くごめん」

愛「どうしたのよw」

アカ子「あさってコンテストだね!」

愛「そ、そうね(((^^;)」

アカ子「ファイトだよ!」

愛「すごいテンションね。コーヒーでも飲んだ?」

アカ子「飲んでない。」

愛「あ、そう……(((^^;)」

 

アカ子「えーっとここから本当の要件。当日コンテストの前に衣装着るんだよね?   かなり手の込んだドレスだって聞いたから、わたし手伝っていいよね?」

愛「も、もちろんよ(^_^;)」

アカ子「衣装合わせ、もうしたらしいじゃん

愛「え、ええ、葉山先輩とサイズがほとんど同じで助かったって衣装担当の人が。

    そそそそれはいいとして──」

アカ子「何かな?」

 

愛「……イメチェン?」

アカ子「ち、違う!」