愛「かおるちゃんの大学の友だちに、真由子って娘がいるの」
アツマ「ふぅん?」
愛「で、かおるちゃんと真由子ちゃんが、フランス語の試験で『パルムの僧院』を読む場面があるのよね」
アツマ「それがどうかしたの、そもそも『ぱるむのそういん』ってなんだよ」
愛「あんた、わたしが岩波文庫の『パルムの僧院』読んでたの、もう忘れたの!?」
アツマ「おまえの読書量が多すぎるから、いちいちおまえが読んでる本を把握してないんだよ。
で、『ぱるむのそういん』ってなに」
愛「スタンダールって作家がいました」
アツマ「はい」
愛「スタンダールは19世紀のフランス文学を代表する作家でした」
アツマ「まじで」
愛「スタンダールの小説で、『赤と黒』の次に有名なのが『パルムの僧院』です」
アツマ「ああ、フランス文学だから、それで、『シュガータイム』のかおるちゃんと真由子ちゃんは、フランス語で書かれた『パルムの僧院』を読んで試験勉強してるわけだね」
愛「飲み込みだけは早いのね」
アツマ「( `_ゝ´)ムッ」
愛「『パルムの僧院』の主人公は、ファブリスっていう若い青年」
アツマ「ああ、いつものパターンね」
愛「はい!? 【いつものパターン】って何よ」
アツマ「おまえの読書にある一定の傾向を見つけたのだ」
愛「え」
アツマ「ズバリ! おまえは19世紀ヨーロッパ小説の主人公の男に惚れているな!?」
愛「ええっ!?」
びっくりしてソファーから飛び上がる勢いの、愛。
アツマ「図星だろ。とくに岩波文庫・赤の小説に出てくるイケメンが好きだろ」
愛「(半ば放心で)た、たとえば……」
愛「Σ(゚Д゚;)ギクッ」
アツマ「ほら、やっぱ図星だ。
同年代の男子には興味ないんだな┐(´∀`)┌ヤレヤレ」
愛「そ、それは……うち、女子校だし(・_・;)」
アツマ「話のピントがずれてるぞ」
愛「うるさいわね!!」
~夜・愛の部屋~
本棚から、『パルムの僧院』の文庫本を取り出してみる。
上巻を開く愛。
しばらく読み続ける。
しばらくして、自分が『パルムの僧院』を読みながらニヤけていることに勘付き、あわてて本棚にしまう。
愛「……(〃´・ω・`)ハズカシイ
完全に見抜かれてた……、
そういうところの頭の回転だけは早いんだからっ」
本棚から『カラマーゾフの兄弟』の文庫本を取り出し、ベッドに潜り込む。
愛「アリョーシャ♥」
--こうして夜は更けていく。